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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第三章 二つの世界の間で

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日誌 第十九日目 その2

「さてと…」

僕はそう呟くと星野模型店で買ってきた模型をいつもの作業室の模型置き場に持っていく。

本日の追加分は、練習巡洋艦香取、鹿島。客船ぶらじる丸、あるぜんちな丸。

それに二式大艇と九七式飛行艇がそれぞれ二機入っているキットを四つの計八箱だ。

しかし、積んである箱を見て思う。

あれから結構作ったが、まだかなりの数がある。

それでも数は以前に比べるとかなり減っているんだけどね。

その理由は簡単だ。

駆逐艦や軽巡洋艦、輸送艦や給油艦といった製作に時間があまりかからないキットを作っているからだ。

まぁ、それは頭数をそろえる必要があるという切実な状況もあるので仕方ないといったところだろうか。

ともかく、戦艦と航空母艦…。

この二つはまだほとんど手付かずの状態になってしまっている。

一応、戦艦は、大和、金剛、比叡の三隻。

航空母艦は、翔鶴、瑞鶴、飛龍、蒼龍、 大鳳、飛鷹、大鷹、雲鷹の八隻。

計十一隻を準備している。

もちろん、航空母艦用の艦載機の追加分もきちんと用意しているから、それだけで一山出来てしまう。

さらに、その傍には他の艦艇もずらりと並んでいる。

もちろん、施設関係や航空母艦用以外の飛行機、などを含めたらいつ終わるの?というか先がまったく見えない。

まだ作り終わるのはだいぶというかかなり先かなぁ…。

そんな事を思いつつ、買ってきた練習巡洋艦と客船のキットを並び替える。

そういえば、軽巡洋艦、重巡洋艦は在庫がそれぞれ一隻ずつになってたな。

購入していない艦をチェックしておくか…。

しかし、ここ最近で作った大型艦は、重巡洋艦妙高ぐらいか…。

そろそろ大型艦も造らなきゃなぁ…。

そう思いつつも昨夜作製したものも補助艦だ。

敷設艦沖島。

機雷を敵艦隊の行動下でも強行敷設できる艦だ。

今、フソウ海軍には、平島型敷設艦の平島、澎湖の二隻があるものの、それは小型艦であり、敷設艦ながら哨戒や警戒向きで強行敷設には向いていない。

帝国やもしかしたら王国との戦いになる恐れは高いのだから、いろんな状況に対応できるように打てる手は打っておく必要がある。

そう考えてあらゆる艦種の製作に入っている。

ここ最近、作ったものだけでも、工作艦、水上機母艦、給油艦、海防艦、などなど…。

おかげで、ガザ沖海戦の時よりも艦艇数はかなり増えた。

そして、その追加分は、ほとんどが予備戦力配備となっている。

また、北と南の基地の方も順調に進んでおり、そろそろ各地方艦隊の準備もしなければならない。

近々再編成をしなきゃいけないかな…。

そんな事を思いつつ、積み上げられたキットから今夜製作予定のものを選んでおく事にした。

そうだなぁ…。

どれにしょうか…。

かなり迷ったが、海防艦丁型と丙型それぞれ二隻ずつ、それに水雷艇鴻、鵯を選んでおく。

まぁ、一気に六隻もは無理だろうが、まぁどうせ作るなら一気にやっておこうと言う腹積もりだ。

そして、今夜の準備が終わると、完成した敷設艦沖島と星野模型店で受け取った箱を持ってジオラマのある場所に行く。

まずは昨日製作した沖島を中型ドックにいれ、次に箱から出したものもその隣の中型ドックに置く。

箱から出したもの、それは星野模型店に馴染みのある模型製作倶楽部に製作委託をしたキットで、H社の戦艦『三笠』だ。

日露戦争の日本海海戦で連合艦隊旗艦を務めた戦艦である。

さてと、これで準備はオッケーだ。

後は向こうに行ってある程度時間が経った後に結果を見るだけか…。

僕は自室に戻ると軍服に着替えて、海軍本部へ向かう事にした。


「お疲れ様です」

僕が長官室に入ると待っていたのだろう。東郷大尉がびしっと敬礼して出迎えてくれた。

返礼をしながら、「いやいや。疲れるのはこれからだと思うけどな」と軽口を叩くと東郷大尉は苦笑し、「そうですね…。これからですからね…」といってデスクの方に視線を向ける。

釣られるように僕もデスクの上を見て絶句した…。

昨日、あれだけ減らしておいた書類の山が復活している。

いや…あれ、昨日より高くないか?

「大尉…あれは高すぎじゃないか?」

「いえ。長官ならあれくらいはできるかと…」

じーっと見つめながらそう言われる。

その瞳には迷いがなく、あたりまえですといった感じの表情に僕は返す言葉がない。

「くっ…。やってやるよ」

なんか半分ヤケクソナ気持ちでデスクに座る。

「では、御用がありましたらお呼びください」

そう言って東郷大尉が部屋から出ようとして思い出す。

「あ、そうだ。三時ぐらいに三島さんも来ると思うからドックに視察に行こうか…」

「ドックですか?」

「ああ。昨日言ってたろう?実験だって…」

「ドックで実験?」

「まぁ、楽しみにしてよ」

僕はそう言うと書類に集中する事にした。

「了解しました」

少し怪訝そうな表情をした東郷大尉だったが、仕事の邪魔をしてはいけないと思ったのだろう。

そう言うと長官室を退出したのだった。

そして三十分もしないうちに東郷大尉が言っていた意味がわかる。

確かに量は多いものの、報告書などが多いため、目を通して判を押せば問題ないといった感じの書類ばかりだ。

よく吟味の必要な書類は思ったよりも少なかった。

だから、三時が過ぎるころには書類の八割近くが処理済になっていた。

参ったなぁ…。

東郷大尉の事務処理能力の高さに再度驚かせられる。

さすがだなぁ…。

そんなふうに感心しているとインターフォンから東郷大尉の声がする。

「長官、三島さんが来られました」

「ああ、わかった。すぐ行くよ」

そうボタンを押して返事をすると、入口に向かう。

「あら、早かったわね」

そう言いつつ、楽しそうに微笑む三島さん。

そして、なぜか真っ赤になっている東郷大尉。

えっと…何があったんだ?

不思議に思って聞こうと口を開きかけるも、「ではさっさと行きましょうか」と慌てたように東郷大尉に言われてうやむやにされてしまう。

なんか僕が聞いたらまずい事でも話していたのかな…。

そう思ったが、女性同士の会話に男が聞いていいものか迷い、そしてまぁいいかとスルーする事にしたのだった

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