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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第三章 二つの世界の間で

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話し合いの後に…   星野模型店の場合

時間は夕方の二十一時過ぎ…。

ここは星野模型店の奥にあるダイニング。

そこでは、一人の男性と二人の女性が夕飯を取っていた。

お店の方は、二十時閉店なのでもう閉めてある。

男性は、ここの店長の星野つぐみの旦那で光二。

女性は、店長のつぐみの妹の美紀。

三人とも会話をしながら食事を楽しんでいるといった様子だ。

今日のメニュは手作りハンバーグにサラダとオニオンスープ。

それに、作り置きしている煮物などの料理が小皿に入られて並んでいる。

そして、テーブルの中央には、沢庵の漬物。

黄色い色がついていない白い沢庵の漬物は、黄色い色が当たり前になりつつある最近はあまり見ないものだ。

そんな中、ほんの数時間前従兄弟と話して決めてきた事を話し終えると光二がつぐみに頭を下げる。

「すまないな。そんな訳で引き受けてきた。みんなには負担が増えるけど…」

「いいわよ。あなたが決めた事なんだから。それに…」

つぐみはそう言って前のテーブルに座っている妹に視線を向ける。

「な、何よ、つぐねぇ」

自分に視線が向けられて慌てて口の中の物を飲み込んで美紀が聞き返す。

「美紀ちゃん、仕事まだ決まってなかったわよね?」

そうなのだ。

短大を卒業したはいいものの、お店の手伝いをしたいからと言って就職せず、今の彼女は家事手伝いということになっている。

まぁ、彼氏である間島徹は隣の県ではあるが家から通える大学に進学してがんばっているらしい。

もちろん、以前に比べれば会える機会も時間も減ったが、その分、なんか熱々と言っていい関係が続いている。

「決まってないけど…つぐねぇは私をそんなに就職させたいの?」

拗ねたようにいう義妹に、光二は苦笑して言う。

「就職する事で得られる経験もあるから言ってるんだよ、美紀ちゃん」

それは光二の経験から来るものだろうか。

言葉に重みがあった。

「うん…でもさ…私は家を手伝いたいんだ」

「なら掛け持ちでいいから、少し手伝って欲しいんだ」

やさしく光二がそう言うと、つぐみは膨れてみせる。

「もうっ、あなたは本当に美紀ちゃんには甘いんだからっ」

「そうかなぁ…。僕は誰にでもこんな感じなんだけどなぁ…」

なんかそのまま惚気そうな雰囲気だったので美紀は慌てて話題を変えた。

「ところで、手伝ってっていうのは何を?」

「ああ、僕の従兄弟からマンションやアパートの管理を引き受けたんだ。でも、僕もつぐみさんも仕事があるから、よかったら手伝って欲しいかなと…」

そう言って、ニコリと笑って言葉を続ける。

「給料は出るよ」

その言葉に、美紀が飛びつくように返事をした。

「うんっ。やるやるっ」

まぁ、家事手伝いにとって何に苦労するかというとお小遣いだったりする。

店の手伝いをして少しはもらう事はあっても、あくまでも家の手伝いであって、バイトと言うわけではない。

だから、どうしても金額は少なくなるが、若い女性だと結構必要な物は多い。

身だしなみ程度の化粧品に、少しおしゃれな服なんかを購入すれば自由になるお金はほとんどない。

その上、彼氏である徹はまだ大学生で、真面目な性格らしくきちんと勉学にいそしんでいる。

さらに、下手にバイトを入れると美紀に合う時間が減ってしまう為、なかなか長期の実入りのいいバイトも出来ない状態だった。

それが不満ではないものの、お金に余裕がやっぱりあったほうがいい訳で…。

あまりの反応の早さにつぐみが驚いた顔をした後、苦笑した。

「お小遣い欲しいなら欲しいって言えばいいのに…」

だが、美紀としても姉や義兄のお世話になっているという事もあり、なかなか言いにくいのだ。

その点、今回の件は、信用できる相手からの仕事だし、いざとなったら義兄に相談もしやすい。

要はバイトとしても仕事としてもいい条件だったという事になる。

つぐみの言葉に光二は苦笑しつつも、なんとなくだが美紀の考えがわかるような気がした。


翌々日の夕方、光二はかなりの量の書類をもって家に帰ってきた。

「…結構な量ね」

つぐみが呆れ返った表情で言う。

「ああ、僕も驚いているよ。一瞬、断ろうかと思うくらいにはね…」

そう言って苦笑する光二。

あ、今のは本音だわ。

つぐみは察し、ねぎらいの言葉をかけた。

「お疲れ様。でも…こんなに必要なのかな…」

「いやね。あいつ、実に細かいところまで詳細に資料作ってるんだよ。もともと、結構細かいところを見てるなぁとは思ったけど、住んでいる人のことだけじゃなくて、わかる範囲内の友人関係とか、親戚関係とか…。もうね、あいつ探偵でもしたほうがいいよってぐらいにさ…」

「こだわりすぎるのは、貴方もなんだけどね…」

そう言ってつぐみは苦笑する。

「そうかなぁ。そんな事は…」

そう言いかけて…「あるかもしれんなぁ…」と自ら言って苦笑した。

「それはそうと、頼んでいた分、入荷したわよって伝えておいてくれた?」

「ああ。そのうち取りに行きますって言ってたよ」

そんな事を話していると、表の掃除が終わった美紀がお店に入ってくる。

「うわーーっ。何それ?」

苦笑しつつ光二は答える。

「ほれ、この前はなしたアパートとマンションの管理の件、その資料だよ」

「そ、そうなんだぁ…」

そう言いつつ、一番上の資料に手を伸ばしてパラパラとめくって目を軽く通す。

「何これ…。まるで探偵の素行調査みたいじゃない」

「まぁ、本人曰く、『僕がわかる範囲内のお客様データです』だそうだ」

「うわーー…。ここまでわかるって…もしかして探偵とかしてたんじゃ…」

その美紀の問いに、光二は苦笑して答える。

「僕もそうなんじゃないかと思ったよ。まぁ元々あいつは変なところをかなり細かく気にする質ではあったが、かなりブラックな企業で苦労してたからなぁ。そこで相手の事をより詳しくチェックする習慣がついたのかもなぁ…」

「その人も苦労したんだねぇ…」

美紀はそう言うと、ぱんと自分の頬を軽く叩いた。

「よしっ。美紀ちゃんに任せなさい。私は出来る女ですから」

「出来る女…ねぇ…」

つぐみの苦笑いした顔と皮肉のこもった言葉に、美紀は膨れる。

「つぐねぇ、信用してないな。絶対に、その言葉を撤回させてやるからねぇ」

どうやらつぐみの言葉と態度にやる気が燃え上がったようだ。

「まぁ、無理しない程度にね…」

ここでいろいろ言ってももうどうにもならない事を知っている光二は苦笑してそう言うしかなかったのだった。

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