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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第二十伍章 火種

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食卓……

食卓には、鉄の皿に乗ってジュウジュウというおいしそうな音を立てているハンバーグをメインにサラダや汁物など料理や漬物がいくつか並ぶ。

もちろん、主食は白いお米のご飯だ。

実に美味そうである。

そして、それらを前にして三人は手を合わせた。

「「「いただきます」」」

そう言うと、それぞれ思い思いに料理を食べていく。

星野家では、出来る限りみんなで食事をとることが当たり前となっており、もちろん出来ない日もあるが、それでも家族そろってが基本だ。

だから今日もいつも通り三人で食べている。

BGM代わりにラジオが流れているのもいつも通りだ。

別にいつも曲が流れているわけじゃないし、パーソナリティの楽しい会話というわけではない。

それどころか、今の時間帯は、ニュースの事の方が多い。

実際、今も米中関係が悪化の一途をたどっており、特に南シナ海でのアメリカと中国の対立は深刻で、中国海軍の北海艦隊の一部が南海艦隊に増援として移動を開始したと報じている。

また、その動きに対して、アメリカ海軍も第七艦隊だけでなく、東太平洋および北太平洋担当の第三艦隊や アラビア海などを担当する第五艦隊も集結するかのような動きをしているという事だった。

もちろん、そんな二か国の動きは他の周辺国も影響を与えていて、ロシア海軍も動きを活発化させている。

つまり、いつ戦争が始まってもおかしくないほど緊迫した事態になっているのだ。

そんな国際情勢のニュースを聞いて、星野美紀はため息を漏らした。

「もう、もっと互いに歩み寄れないのかなぁ……」

その義妹の言葉に、星野光二は苦笑を浮かべた。

「まぁ、互いにいろいろあるからなぁ……」

そう言った後、光二はもう一人の方の女性に声をかける。

「こんな国際状況だけど、輸入模型の方はどう?」

大きな眼鏡をかけた女性、星野模型店の店主である星野つぐみは、少し考えこんだ表情で口に入れたハンバーグを食べ終わると口を開く。

「卸の佐藤さん曰く、今のところは大丈夫みたいです。もっとも、これ以上緊張状態が続くようなら、難しくなるかもって話をしていましたねぇ。しかし、最近は、中国系の模型メーカーも多いですから、戦争とか始まっちゃったら入ってこなくなっちゃいますから、困りますよね」

「そうだねぇ。最近は向こうの模型も出来がいいのが多いんだって?」

「はい。結構、マイナーなものを作ったりするメーカーもあるし、特にスケールモデルは勢いがすごいですよ」

「そっか……。日本のメーカーも頑張ってほしいよねぇ……。キャラクターモデルばかりじゃなくて……」

光二がそう言うと、つぐみも頷く。

「そうですよねぇ。もっと頑張って欲しいです。そうしないとたまご飛行機の新作が出ないですし……」

「つぐねぇ、たまご飛行機シリーズはある意味、キャラクターモデルじゃないの?」

美紀が笑いつつ突っ込む。

「えっ……、そうですか?私の中では、あれもスケールモデルという認識です」

「えーっ。違うよぉ。あれはキャラクターモデルだって……」

「でも、デフォルメしているとはいえ架空のものをモデルにしてません」

互いに自分の意見を譲らない姉妹。

そして、その火種は、つぐみの夫である光二へと広がっていく。

「義兄さんはどう思います?あれってキャラクターモデルですよね?」

「いいえ。あれはスケールモデルですよね?」

二人に迫られ、光二は苦笑を浮かべた。

彼としては、あれはキャラクターモデルだと思っている。

だが、それを指摘すると、つぐみが激しく落ち込むだろうから言えないでいた。

やはり、愛は盲目というのだろうか。

だから、話題をずらすことにした。

「そうだねぇ、どっちだろうなぁ……」

そう言った後、思い出したかのように話題を変える。

「そう言えば、美紀ちゃん、貞道の所に書類持って行ったかい?」

その質問に、美紀は逃げたなと言いたげな表情をしたものの、追及するのはやめたらしい。

だから、彼のずらした話題に付き合うことを選択する。

美紀としても些細な事とはいえ大好きな姉と喧嘩はしたくないのだ。

「うん。持って行ったよ。貞道さんは不在だったから、見方さんに渡したけど……」

「見方さんって、貞道が自分がいないときは、渡しておいてくれって言ってた人か?」

「うん。きちんと顔合わせもしたし、間違いないよ」

「そうか……。ならいいんだけど……」

歯切れ悪い返事を返した後、光二は少し考えこむ。

彼はその見方という人物と会ったことはない。

鍋島貞道が秘密に何かやっているのは知っているし、本人との話し合いで、違法なことはしていないと確認もしている。

その言葉を信じてはいるものの、従弟が何をやっているのかは気になって仕方ない。

だから、ついつい聞いてしまう。

「僕はあったことないんだよな。もしかして、チンピラみたいな感じか?」

光二の言葉に、美紀は一瞬「え?!」みたいな顔をした後、笑って首を横に振った。

「違う違うって。反対の印象だよ。どちらかというと固い感じの人」

「固い感じの人?」

思わず聞き返すと、「えーっと…なんて言ったらいいかな」なんて言いながら美紀が考え込む。

「固い職業ってことかしら……」

つぐみがそう言うと、「違って……、こうなんか上下関係がきっちりしているような……」と美紀が言い返す。

「上下関係……。それこそヤクザか?」

「違うって……。こう……なんというか……ピンと背筋を伸ばして……」

そこまで言った後、思い出したのだろう。

美紀は自分の太ももを叩いた。

「そうそう、軍人さんや警察官みたいな感じだったよ」

「軍人や警察官みたいな感じか……」

美紀の言葉に、光二は考えつつ口にする。

「そう言えば、思い出したわ」

今度はつぐみだ。

「確か、見方さんって、夏美ちゃんの親戚だって言ってたわ」

「ああ、彼女のか……」

東郷夏美という女性は、光二もあって話したことがある。

ハキハキ対応して実に気持ちいい感じの女性だった。

彼女なら信じられると思った。

そんな彼女の親戚なら、大丈夫だろうか。

光二にとって鍋島貞道という人物は、自分の従弟というだけではない。

どちらかというと本当の弟という感覚に近い。

だからこそ、心配なのだ。

「心配しなくても、大丈夫よ。夏美ちゃんはいい子だもの」

そう言って笑ったのはつぐみだ。

彼女は、月に数回になるが貞道が星野模型店に行くときはいつも付いて来るし、電話でもちょくちょくいろいろな話をする。

その話の内容は、些細な流行の事から、料理や生活についての事が多いが、だんだんと仲が良くなっていて、ここ最近は、彼女の恋の悩みの相談も受けるようになっていた。

だから、遂に貞道から告白されたと彼女から電話で報告があったときは、自分の事のように喜んでしまった。

だから、そういった事を含めれば、彼女は親友と呼んでもいい仲だと自分は思っている。

そして、そんな彼女が、貞道を騙していたりする事はありえないと確信していた。

だから、自然とそう言い切ったのだ。

「そっか。つぐみさんがそう言うのなら、大丈夫か……」

「うん」

その返事を聞きつつ、光二はハンバーグを口に入れた。

相変わらずのうまさで、かみしめると旨味たっぷりの肉汁と特製の濃厚なソースが口いっぱいに広がっていく。

こんなハンバーグばかり食べていたら、外の店で食べるハンバーグでは物足りなくなっちまうな。

そんな事を思いつつ食べていると、そんな光二をニコニコと見ながらつぐみは口を開いた。

「話を戻すんだけど、光二さんはたまご飛行機はスケールモデルだと思っているよね?」

その言葉に、光二は飲み込みかけたハンバーグを喉に詰まらせかける。

慌てて水を飲み、何とか飲み下した後にふうと息をついたら、自分に降り注ぐ二つの視線に気がついた。

期待するかのような視線はつぐみで、そんな姉に振り回される義兄を哀れに思う可哀そうな視線を向けるのは美紀だ。

どうやら、彼の奥さんは今日は誤魔化されなかったようだ。

この後の光二の奮戦を期待したい……。

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[気になる点] 貞通が従妹? と一応。
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