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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第三章 二つの世界の間で

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日誌 第十一日目 その2

食堂に案内されると、すでにテーブルに座って待っている人達がいた。

十三人いて、皆黒い日本海軍軍服を身につけている。

みんな知らない顔だ。

彼らは僕が入ってくると立ち上がって敬礼した。

返礼を返しつつ、案内された席に着く。

そして僕が座ると、全員が座った。

僕の横に座った東郷大尉が口を開く。

「それでは、今度海軍に新規に参加された皆さんとの顔合わせを兼ねた昼食会を始めましょうか」

その言葉に、やっと今回の昼食会の目的がわかった。

彼らは僕がこっちにこれない間に竣工した艦船達の付喪神達だ。

まぁ、夜中にコツコツ作ってドックに設置してを繰り返していたから、この四日の間になんとか十三隻と飛行機を製作できた。

しかし、僕がなかなかこっちの世界に来れないから会えずじまいの状況のままだった。

それを大尉は気にしてこういう機会を用意してくれたのだろう。

なかなか優秀な秘書官ぶりだと思う。

「それでは、それぞれを紹介して行きますね。あ、名前を呼ばれても立たなくてもいいですよ。長官は気さくな方ですから」

笑い混じりにそういう東郷大尉。

その言葉に、彼らも笑っている。

ジョークとでも思ったのだろうか。

いいや、ジョークじゃないから。

まぁ、気さくと言っていいのかなぁ…と思ってみたが、なんか違う気がする。

で、結局考えついた事は、緊張しすぎるのが好きではなく、何事もある程度リラックスしているのがいい結果を生むんじゃないかと思っているだけってことだ。

もっとも、軍隊であまりにそれを求めすぎると規律が守られなくなってしまうし、組織崩壊の恐れがあるから、まぁ、気さくという程度にしておいたほうがいいのだろう。

「それでは始めてもよろしいでしょうか?」

東郷大尉がそう聞いてくるので、頷く。

相変わらず場を仕切るのはうまいな。

そういえば、前回のときも彼女が仕切ってたよなぁ。

仕切りスキルがとても高いに違いない。

仕切りスキルがない身としては、羨ましい限りだ。

「では、右から順に紹介して行きます」

東郷大尉の言葉に、その場にいた十三人全員がピンと背筋を伸ばす。

なかなか緊張しているようだ。

まぁ、僕が製作したからどんな艦船が増えたのかはわかっているが、艦名はわかっていてもその付喪神はどんな感じかわからないからありがたい。

東郷大尉は、手前に用意したリスト表らしいものを見ながらゆっくりと読み上げていく。

「軽巡洋艦大井、北上。駆逐艦村雨、夕立、春雨、不知火、雪風。水上機母艦千歳、千代田。工作艦三原。給油艦速吸。給糧艦間宮。病院船氷川丸。以上十三名です」

名前を呼ばれるたびに、名前を呼ばれた付喪神が頭を下げて礼をする。

それを見て、僕は頷いていく。

それにしても東郷大尉が最後に十三隻と言わないで十三人と言ったところは実に好感が持てる。

彼らは、艦ではあるが、人格を持った人のような魂の存在なのだ。

だからこそ、人と同じに扱わないといけないと僕は思っている。

だから、こういうのは素直にうれしい。

しかし、今回の事で予想外の事が一つだけあった。

最後の方に読み上げられた給糧艦間宮と病院船氷川丸が女性だった事だ。

確かに、給糧艦や病院船といった感じの艦は女性のイメージがあったけど、まさか本当に女性になっていたとは思わなかった。

今まではずっと男性の姿ばかりだったからそれが当たり前だと思っていんだが、まさか…である。

二人とも髪を短くショートカットに切っており、知的なイメージだ。

間宮の方が少しふっくらとした感じで、氷川丸の方はスラリとしたスレンダーな感じだ。

うーん。タイプは違うけどすごい美人さんじゃないか。

そんな事を思って、つい見とれてしまう。

「こほんっ。長官、よろしいでしょうか?」

いきなりの隣の東郷大尉の少し大きめの声に、僕は驚いて我に返った。

いかんいかん、ちょっと考えこんでしまっていたようだ。

「あ、ああ。問題ない」

そう慌てて答えるとくすくすと言う笑い声がその場にいくつも起こる。

いかん。いかん。

威厳を保たねば…。

そう思って軽く咳払いをした。

それだけで一気に静かになる。

そして、皆を見渡して口を開く。

「一身上の都合で会う機会が遅くなって申し訳ない。まさかこういうサプライズとは思ってなかったから、原稿なんてないから、ただただ今思っている事、僕の考えだけを述べていきたいと思う。今からフソウ連合は大きく変わっていく事になるだろう。それは国だけでなくもちろん海軍もだ。そして、任務は多種多様化してくると思う。もちろん、各艦の出来る事出来ない事はそれぞれある。それをこちらでも考え、それでも色々な事をやってもらう事になるだろう。その中には危険な事ももちろんある。だが、あえて言っておく。生き残れ。どんなに惨めでもいい、足掻いて足掻いて生き残ってくれ。誇りを持つのと自分を満足させるのは違う。よく誇りのために死ぬなんて言うやつがいるが、それは誇りを持っているわけでも、誇りの為に死にたいわけでもない。ただ、自分自身が満足したいだけだと僕は思っている。だから、それを履き違えずに、国の為、国民の為、そして、自分自身の為に働いて欲しい。以上だ」

そう言って、ふうと息を吐き出す。

するとそれに合わせるかのように、拍手が沸きあがった。

その拍手に軽く答える。

ある程度拍手が収まると、それぞれの席に透明な液体が入ったガラスのコップが配られた。

僕がなんだと思って東郷大尉の方を向くと、「乾杯をお願いします」と言って笑う。

「これ…お酒じゃないよね?」

「もちろんです。お水にレモン汁を入れたやつですよ。夕食会ならともかく、午後からも長官には決裁してもらわなきゃいけない書類が山済みなんですから」

「午前中あれだけやったけど、まだあるの?」

げんなりして聞くと、東郷大尉がくすくす笑いながら答える。

「一気に山積みにしたら、やる気が激減しそうだなと思いまして分けておきました」

「なに、それはっ…ずるいぞ、大尉」

「ずるくはありません。きちんと管理しているといっていただきたい」

「くそっ…。いつかやり返してやる…」

「ふっふっふ…どうぞ、どうぞ…」

そんなやり取りを東郷大尉とやっていてふと気がついた。

付喪神達がニヤニヤしてこっちを見ていることに…。

「あ、違うぞ。これは決して大尉に尻に敷かれているって事ではないからな」

慌ててそう言ったが、それが決定的となったのだろう。

大爆笑が起こり、結局その後乾杯はしたものの、実に笑いがたえない昼食会になってしまったのだった。

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