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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第二十章 空母 対 空母

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第16・17任務混成隊 その1

「あとどれくらいで味方と合流できそうだ?」

「そうですね……。五月十五日前後になりそうです」

副官ロバート・オリバー中尉の報告に、第16任務部隊司令官レイモンド・スプルーアンス少将は思わず口を開く。

「もう少しなんとかならんのか?」

その物言いに、手元のボードを見ながらオリバー中尉が呆れた顔で言い返す。

「行くまでに疲れ切ってしまってどうするんですか?」

「確かにその通りだが、次の戦いはアメリカ海軍の今後がかかっている。出来る限りの事はやっておきたい」

その言葉に、オリバー中尉は視線をボードからスプルーアンス少将に向けた。

「気持ちはわかります。私だって今が瀬戸際と言うのはわかっていますよ。ですが、無理をして勝利しても、その後が続かなければ意味がありません」

「だが、それでもだ。今度の戦いの勝利がなければ、その後がないかもしれんのだ。我々はまさに崖っぷちに追い詰められているという事だよ」

困ったような顔をした後、オリバー中尉は口を開いた。

「ふーっ……。民主主義というのは厄介な政治システムですな。国民が興味がないと蔑ろにされてしまうってのは……」

「その分、政治がうまくやってくれればいいんだが、そうなっていないのが問題だよ。日独伊三国同盟を阻止した手腕は認めるが、その後が不味かった。あまりにも日本を締め過ぎたんだからな……」

そう言ってスプルーアンス少将はため息を吐いた。

「ええ。あの米日交渉の下手さ加減は新聞でも大きく取り沙汰されていましたからね。その上に石油輸出の全面禁止とあのハル・ノートですからねぇ。あれはさすがに……。我々が同じ立場なら、今の日本と同じ選択をしたでしょう」

部下の言葉に、スプルーアンス少将は苦笑する。

ハル・ノート。

本来なら秘密にされるはずの内容が新聞のスクープによって公表され、最初こそあまり話題にならずにそのまま埋もれてしまうかのように思えたが、その内容を解説し、その時の日本の立場を加えた専門家の記事が追加で出された事で一気に広まった。

それによって、追い詰められた日本、執拗に追い込んだアメリカという図式が国民の間に一気に出来上がってしまい、日本が宣戦布告したのもやむなしと言う考えさえ国民の間には広まり浸透してしまったのである。

「あまり大きな声で言うなよ。政府の犬が混じっている可能性があるからな」

その言葉に、オリバー中尉は声を押さえて聞き返す。

「それって本当なんですか?」

「らしいぞ。失策続きの政府が諜報部を動かしていると……」

「怖いですね」

「そういうことだ。だから、黙っているに限るし、我々は始まった戦いに勝つことだけを考えればいいのだよ」

「確かに……。その通りですな」

部下の返事を聞きつつも、スプルーアンス少将も心の中では今の政府の対応に不満が溜まっている。

12月8日に正式に宣戦布告され、日本陸海軍によって行われたマレー作戦と真珠湾攻撃、そして日本海軍の機動部隊とアメリカ太平洋艦隊が戦ったハワイ沖海戦。

これによりマレー半島は日本陸軍の上陸を阻止するのに失敗し、真珠湾攻撃によって多くの軍用機と軍事施設を失い、ハワイ沖海戦にてアメリカ海軍太平洋艦隊の主力である戦艦八隻を含め多くの艦艇が海の藻屑と消えてしまった。

公開されたハル・ノートの内容と石油の全面禁止処置といった政策によって日本を追い詰めすぎたと知ってしまった多くのアメリカ国民は、この敗北にこの戦争に対してかなり否定的な意見を持つ方へと傾き始めていると言っていいだろう。

政府は強いアメリカを意識しすぎてやりすぎてしまった。

その反動だろう。

反戦運動が起こっている地区もあるのだ。

それでも、ドーリットル攻撃にて少しはその動きも収まったものの、実際、政府の支持率は日本との戦いが始まってから急落し、今では二十パーセント前後を行き来するまでなっている。

その反面、不支持率は常に五十を維持しているのだからまさに末期症状であった。

だからこそ、政府はこの状況を一気に打破する為に勝利を軍に求めた。

政治屋も国民の顔色を伺いつつやらなきゃならんから大変だなとは思うものの、その政治屋にこき使われている我々はどうなるんだと思ってしまう。

だが、アメリカは、民主主義の国だ。

国民に選ばれた政府の暴力装置である軍に選択する余地はない。

そして、惨敗続きの軍としても自分達の誇りと権利を守る為に、それに答えねばならない状態だ。

勝利、勝利、勝利。

言うのは実に簡単だ。

しかし、その道のりの実に遠い事よ……。

そのためだろうか。

思わずスプルーアンス少将の口から言葉が漏れる。

「しかし……、勝つ事の難しさをここまで実感させられてしまうとはな……」

ため息を吐き、そう呟く様に言うスプルーアンス少将に、オリバー中尉は苦笑した。

「確かにハワイ沖海戦では、航空機の有利性を散々見せ付けられましたが、今回は我々も十分な航空戦力があるのです。互角以上の戦いができますよ」

「互角以上では駄目なんだがな。我々が求めているのは勝利のみだ……。残念な事に……」

そう言ってフランク・フレッチャー少将は艦橋の外に視線を送るとそこには波を切り進む僚艦の姿がある。

フランク・フレッチャー少将が指揮する第17任務部隊ヨークタウン級航空母艦三番艦ホーネットだ。

その姿は実に荒々しく、そして威風堂々としている。

多分、向こうから見たら本艦、エンタープライズも同じように見えているに違いない。

そんな事を思いつつ、この任務隊の前任者の事を思い出す。

「しかし、ハルゼー中将も無念だろうよ」

「何がです?」

「これからジャップに対して反撃するっていう矢先に病気で入院だからな」

「ああ。あの方なら言いそうですね。中将は大の日本嫌いですから…」

その言葉に、スプルーアンス少将は苦笑した。

代理とは言え、第16任務部隊司令官に抜擢してくれた事に関しては彼には感謝している。

しかし、猪突猛進の彼についてはあまり良い印象は持っていない。

そんな事を思いつつ、スプルーアンス少将は視線を外から海図に戻す。

レキシントン、ヨークタウンを中核とする味方艦隊と合流する場所、彼の視線の先には、大きくその海域の名前が書いてあった。

『珊瑚海』と……。

そして、彼らは三十分後……光に包まれる。

光が消え去った後、そこにあるはずの艦艇の姿はなかった。


・第16・17任務混成隊 艦隊編成

航空母艦 二隻

 第16任務部隊所属ヨークタウン級航空母艦二番艦CV-6エンタープライズ(旗艦)

 第17任務部隊所属ヨークタウン級航空母艦三番艦CV-8ホーネット

重巡洋艦 一隻

 ニューオリンズ級重巡洋艦CA-37タスカルーサ

駆逐艦 五隻 

 シムス級駆逐艦DD-410ヒューズ

        DD-411アンダーソン

        DD-419ウェインライト

 ベンソン級駆逐艦DD-460ウッドワース

         DD-491ファーレンホルト


搭載機 総数148機

   艦上戦闘機 F4F ワイルドキャット 36機

   艦上攻撃機 TBD デバステーター   36機

   艦上爆撃機 SBD ドーントレス    54機

         SB2U ビンディケーター 18機

   偵察観測機 SOC シーガル 4機(タスカルーサ搭載)

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― 新着の感想 ―
[一言] スプルーアンス少将の台詞「あの日米交渉の下手さ加減は…」と言っていますが、アメリカ人がしゃべっているので、日本語に翻訳しても「米日交渉」と執筆した方が良かったのでは?
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