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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第二章 海軍強化とシマト諸島奪回戦

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日誌 第五日目 その3

「ちょっといいでしょうか?」

昼食を終わって、事務処理をおこなっていたら、デスクのインターホンから東郷大尉の声が流れた。

どうやらさっき部屋の前で話し声が聞こえていたから、その件のことだろう。

「ああ、構わないよ。どうしたの?」

発信スイッチを押して、そう答える。

「はい。諜報部の川見少佐が至急お知らせしたいことがあるとの事です」

「わかった。会おう。通してくれ」

そして書類を机の脇に寄せていると東郷大尉がドアを開けて、川見少佐を長官室に通す。

「失礼します」

入室するとキビキビとした動きで川見少佐がディスクの前に来て敬礼する。

それにあわせて僕も敬礼を返す。

すると強面といった感じの川見少佐の顔が困ったような表情になった。

「あの、長官、言いにくいのですが…」

「なんだい?」

「いちいち敬礼を返さなくてもいいと思うのですが…」

「そういうもんかな…」

「ええ。そういうものだと思います。なんか…すごくやりづらいというか…」

歯切れが悪いが、要はもっとどっしりとしていろと言いたいらしい。

ああ、すんません。

ほんの少し前は、軍隊なんか関係ない一般人だったからなぁ。

軍隊の事なんて、書物と映画でしか知らない似非軍人ですから…。

そんな事を思いつつも、苦笑して答える。

「まぁ、その辺はおいおい直していくよ」

「それでお願いします」

「で、今日は何の用件で来たのかな?今のような事を言いに来たのではないんだろう?」

少しニタリと笑ってそう聞き返す。

すると川見少佐は苦笑して、小脇に抱えていた書類の束を差し出した。

「捕虜の簡単な尋問が終わりましたので、その資料を届けに参りました」

書類を受け取りつつ、僕は聞き返す。

「それだけじゃないんだろう?君がわざわざ来たって事は…」

僕の言葉に、川見少佐はニタリと笑う。

強面の彼がニタリと笑うとまるでヤクザ映画の大胆不敵な主人公のようだ。

「はい。トモマク地区と斎賀露伴についての報告書を…」

丁寧に折りたたまれた紙の束をポケットから取り出す。

ざっと五枚程度だろうか。

「まずは第一回報告と言うことで…。見た後は処分を…」

「わかった」

そう短く返事をするとまずはトモマク地区と斎賀露伴の報告書に目を通す。

すべてを見終わった後、僕はため息を吐き出した。

「これは事実かな?」

「はい。かなり信憑性は高いかと…」

その言葉にため息が出る。

つまり、今回の出来事の裏ではやつが動いていたという事か。

厄介だな…。

「証拠は何とかなりそうか?」

「今のところはなんとも…。ただ、なんとしても手に入れるつもりではあります」

「そうか。気取られないように気をつけて内偵を続けておいてくれ」

僕はそう言うと引き出しから皿を取り出し、その上で書類にライターで火をつけた。

めらめらと紙が燃え、紙は灰となった。

それをディスクの隅に移し、今度は結構な厚さのある捕虜の資料に目を通す。

まぁ、八十九名分の尋問だから、結構な量になるのは当たり前といえば当たり前だ。

それに王国の事だけでなく、他の外の国の事や国と国の間の関係など細かく聞いているようだ。

「よく、こんな短時間でここまで聞き出せたもんだ」

ページをめくりながら聞くと当たり前のような口調で答えが返ってきた。

「はっ、情報は早く的確に入手しなければなりません。その為の諜報部です」

そして、その後、こっちを見てニタリと笑う。

「もっとも、それをうまく扱えるかは上層部次第ですが…」

なかなか手ごわいな川見少佐は…。

かなりのやり手だと感じ、それにふさわしくならなければと再度思う。

僕の世界でも実例は山ほどあるが、はっきり言える事は、無能な上官に率いられた軍隊ほど最悪なものはないということだ。

そうならないようにしっかりしなくていけないな。

それを肝に銘じつつ、ふと頭に浮かんだ事を聞く。

「そういえば、あまり手荒な事はしてないだろうな?相手と捕虜条約はないにしてもあまりに酷い場合は後の王国との交渉でマイナスになる場合もあるからな」

「はい。その点はご心配なく。ただ、一部の反抗的な連中に対しては、誠意ある話し合いで大人しくなっていただきました」

誠意ある話し合いがどんな事かは聞きたくなかったのでスルーした。

まぁ、拳で語り合うみたいな話し合いだろうなと想像はつくが…。

そのまま書類に目を通していた時、ある一点で目が留まった。

そして、書類をデスクにおいて聞く。

「王族がいるだと?」

「はい。旗艦の副長もいたので確認しましたし、本人にも尋問で確認しましたが間違いないかと…」

無意識のうちに右手の上に顎を乗せて考え込む。

そして、開いたページをそのままに資料をデスクの上に置いて息を吐き出した。

ふう…。

そして、息を吐き出したあと川見少佐を見返す。

そこにはまるで銅像のように直立不動で僕の言葉を待っている川見少佐がいた。

「確かに、これは急ぎの用件だな」

僕はそう言って椅子に背もたれた。

ぎしっ。

椅子が鳴り、僕の身体を支えた。

そして天井を見た後、ゆっくりと視線を川見少佐に戻して口を開いた。

「よし。会ってみよう…」

僕の言葉に「はっ。すぐに準備いたします」と敬礼しつつ返事を返す川見少佐。

そして、僕は視線を資料に戻す。

開かれた書類のページには、一枚の写真と細かな尋問の内容が書いてあり、その文章の一番上に写真の人物の名前と身分が記入されている。

そこには『アーリッシュ・サウス・ゴバーク  ウェセックス王国の第六王子 王国海軍第二十三艦隊司令長官』と書かれていた。

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