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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第二章 海軍強化とシマト諸島奪回戦

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日誌 第五日目 その2

準備が終わり、説明が始まって三十分が経とうとしていた。

しかし、広報部の杵島大尉の説明はまだ続いている。

海軍の広報についての説明と今後の展開についての説明なんだが、実にとらえどころがないというかわかりにくい。

なんか全ての内容を話さないといけないみたいな思いでもあるのだろうか。

だらだらな上に、その上、話が色々飛びまくっている。

なんか眠くなる学校の授業のようだといえばわかりやすいだろうか。

さすがに一対一だから眠くなるという事はないが、かなり苦痛である。

これがもし営業のプレゼンなら、始まって五分もしないうちに相手からお帰りくださいといわれる典型的なパターンといえる。

さすがにたまりかねて話を止める。

「わかった。で…もう少し簡単に言ってくれ」

「ですから…」

また話がだらだら続いていく。

うーーん。

典型的な説明下手というよりも、何もかも言いたくて、本当に言いたい事が言えてないという感じかな…。

そう考えた僕は、再度口を挟む。

「では、この事で一番君が利点と思うのはなんなんだい?今の君の話し方だと、何がメリットでデメリットかわからない。なら、はっきりさせようじゃないか。この説明の一番の利点と一番の欠点を…」

「えっと…だから…」

「君が一番だと思うものを一つずつだけ上げてほしい」

しばらく考えた後、杵島大尉は口を開いた。

「以前長官が言われたように、国民に対して海軍の事をよく理解してもらうということが出来るというのが利点です」

「では、欠点としては?」

「はい。その方法が、今の現状では限られてしまっているという事ですね。だから、時間がかかってしまう」

「出来るじゃないか。それでいいんだよ」

「えっ?」

「いいかい。相手に理解させようとするなら、その内容はシンプルにしたほうがいい。誰もが複雑な事を理解できるわけではないし、より多くの人に理解してもらうには、そういう事は絶対に必要だ。そして、話が飛びまくるのも考えものだな。それがより話を複雑にしてしまっているし、途中で話が訳わからなくなる。後は、重要な事は何度も繰り返す事も大切だよ。そうすれば、もっとわかりやすくなるはずだ」

ゆっくりと話していく。

その話を杵島大尉は頷きながら聞いていた。

「なるほど…。今度から気をつけます」

「ああ。そうして欲しい。しかし、今、こっちが打てる手としたらこんな感じしかないのかい?」

資料を見ながら聞く。

「はい。マシナガ地区では海軍の事はよく知られていますし、認知度も高いです。しかし、他の地区は多分、ほとんどの方が知らないのではないかと思います。ですから、現在、説明会の実施にビラの配布、各地区の役所にパンフレット配置などやってはいるのですが…。」

杵島大尉の言葉は途中で小さくなる。

やっぱり興味を持ってもらわなければ、なかなか難しいという事なのだろう。

では、どうやって興味を持ってもらうか…。

そう思ったとき、ふと思いついたことがある。

「えっと、ガサ沖の海戦は映像撮っておくように言ってたけど、きちんと撮れてる?」

「はい。後で戦いの為の教材にするという話だったので、艦隊からだけでなく、上空の偵察機なども動員して多方向からしっかりと撮影しております」

「なら、今からそれを見よう。準備できるかな?」

僕がそう聞くと、いきなりそうなるとは思っていなかったのだろう。

少し慌てたように考え、「さ、三十分ぐらい待っていただければ…」と言う返事が返ってくる。

「なら、それを見たい。準備してくれ。見てから判断するけど、うまくいけば、海軍の存在を国民にアピールできる方法の一つになるかもしれない」

「それは…どういう事でしょうか?」

怪訝そうな表情で聞き返す杵島大尉に、僕はにこりと微笑んで言う。

「それは見てからね?」

「は、はいっ。り、了解しました。すぐ準備します」

なぜか顔を真っ赤にして慌てて資料を抱えると、杵島大尉は準備のために部屋を飛び出していった。

その慌てた様子に、僕は首をひねる。

えっと…僕、変な事したかな?


三十分後、僕と東郷大尉、杵島大尉、それに映像関係の技術士官だろうか、三十代の男性の四人は会議室にいた。

部屋は暗くされ、準備された映写機からはガサ沖海戦で撮影された様子が映し出されている。

現代のに比べれば解像度も荒いし、白黒でカラーではない。

しかし、すごい迫力だった。

「今、流れている映像は軽巡洋艦龍田から撮影されたものです」

映写機の横に立っている技術仕官が説明する。

それを聞いて、僕は聞き返した。

「龍田から撮影されたもの以外は、あと何がある?」

「後は上空から偵察機彩雲からと着水して監視していた二式大艇からも撮影しております」

「沈没するまできちんとフィルムがあるのか?」

「はい。もちろんです。それに救助作業もフィルムに収めています」

映写機の横に立っている技術仕官は淡々と、しかし命令された任務は完全に全うしたといった感じの答えに、僕は彼に職人気質を感じた。

多分、自分の仕事に自信があるのだろう。

「じゃあ、それらのフィルムを加工はできるかな?」

「例えば?」

「フィルムを編集し、ナレーションを入れて一つの出来事をしらせるみたいな感じで一本にまとめる事は出来ないかな?」

しばらく考え込んだ後、技術仕官は頷きながらはっきりと返事を返す。

「ええ。出来ます」

その言葉には自信が込められている。

僕らの会話に疑問が生じたのだろう。

「それはどういう事でしょうか?」

杵島大尉が聞いてくる。

その問いに、僕は笑って答えた。

「記録映画として、これを国民に見せたらどうだろうか」

「記録映画?」

「そうだ。映写機での上映は、このマシナガ地区ではそれほど珍しいものではないだろうが、他の地区はどうだろう?映写機自身がないんじゃないのかい?」

僕の問いに杵島大尉が頷く。

「え、ええ。確かに。存在は知っているかもしれませんが、導入しているところはほとんどないかと…。一部政府関係にここから購入されているぐらいじゃないでしょうか?」

その言葉に同意なのか、隣に座っていた東郷大尉も頷いている。

「なら、ますますいいね。せっかくだから、このフィルムをうまく使って海軍の存在を国民にアピールする方法の一つにしたらどうだろうか?」

考え込む杵島大尉だが、すぐに顔をこっちに向けると頷いた。

「確かに長官の言われるとおりです。これは海軍を知ってもらうにはとてもいい方法ではないかと思います。ぜひやらせてください」

「よし。それでやってみてくれ。そして、完成したら身内での上映会をおこなおう。それで、最終的にどうするかを決めるという事でいいかな?」

「はいっ。了解しました」

杵島大尉が立ち上がってピーンと背筋を伸ばして敬礼する。

そして、その横に技術仕官も同じように立って敬礼している。

「期待しているからね」

そう言いつつ、僕も敬礼した。

そして、敬礼を終えてニタリと笑いながら言葉を続けた。

「それと…もうすぐ昼だから、昼メシでも一緒に食べつつもっといろいろと内容を煮詰めないか?」

僕の言葉に、杵島大尉と技術仕官は、互いの顔を見合わせた後、頷いて笑顔で再度敬礼した。

「了解しました。ご一緒いたします」

そして、僕らはその後食堂に場所を移し、昼食をとりつつ意見を交換したのであった。

なお、追記しておくが、その日の昼食は牛モツの煮込みがおかずだった。

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