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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第十三章 アルンカス王国

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特別警戒艦隊  その2

三十分が過ぎた頃、会議室のドアがノックされた。

「各艦の責任者の方々が来られました」

ドアの外で案内していたであろう兵が声をかける。

「わかった。入りたまえ」

毛利大尉がそう言って立ち上がる。

もちろん、資料を準備していた副官の海辺中尉もである。

ドアが開けられ、四人の白い軍服を着た男性が入ってくると、まるであわせたかのように敬礼をした。

彼らは、特別警戒艦隊に配属されている第四護衛隊駆逐艦 松、桜、それに第五護衛隊駆逐艦 樅、榧の付喪神である。

皆、きちっとした軍服を着こなしている。

暑くないのか聞きたい心境に一瞬駈られたものの、それをぐっと我慢すると毛利大尉は微笑んで返礼をする。

「諸君、よく来てくれた。まずは座ってくれ」

「はっ」

各自が座った後、毛利大尉も座ってちらりと横の副官の方を見る。

それで通じたのだろう。

海辺中尉が報告を読み上げていく。

「皆さんも小耳に挟んだとは思いますが、本日、十四時五十五分、偵察ゴーマルナナのサンがアムリット諸島付近で海賊らしき艦艇から構成される艦隊を発見しています。そして、十五時五分、同じく偵察ゴーマルナナのサンから敵艦隊の戦力が報告されました。大小あわせて三十前後との事です。進行方向から、行き先はアルカンス王国の可能性がかなり高いと報告されています」

そこまでの報告で、第四護衛隊の松から挙手がある。

「本部には報告は?」

「終わっています」

「では、本部の指示は?」

ちらりと浜辺中尉が毛利大尉の方を見た。

こくんと頷く毛利大尉。

それを確認し、浜辺中尉は口を開いた。

「本部からは、すぐに返信がありました。『出来る限り急いで増援を送る。我々の希望は防衛だが、戦力差がある場合は撤退も許可する。見極めは現場の司令官の判断に一任する』以上です」

その言葉に四人の視線が毛利大尉の方に集中する。

要は、戦うも撤退するも毛利大尉の胸一つと言う事だ。

だからこそ、松のロからすぐに声が出た。

「司令、戦うのですか?」

撤退ではない。

戦うのかと聞いてくるあたり、彼らの戦闘意欲は高いと見て取れる。

しかし、それは仕方ないのかもしれない。

彼ら、松型駆逐艦は 艦隊戦よりも船団護衛などを中心に運用される事が考えられた戦時量産型駆逐艦であり、実際、主力である陽炎型、吹雪型に比べ、対空能力は高いものの、速力も火力、雷撃も劣っている為、フソウ連合でも、駆逐艦ながら部隊配備は艦隊決戦の駆逐隊ではなく、護衛任務中心の護衛隊配備となっている。

よって、他の駆逐艦達が、戦いで華々しい活躍をするのを横目に、地味な活動しかしてこなかった。

その反動なのだろう。

しかし、焦る事はないのだ。

それぞれ自分にあった責任を全うすればいいのにと思う。

だが、それは自分のようにのんびりと考えているものだけなのかもしれない。

それに、彼らは戦うために作られたのだ。

だからこそ、彼らは今回の戦いで自分の存在意義を見出したいのかもしれない。

毛利大尉はそんな事を思いつつ口を開いた。

「本来なら、我々の任務は警戒のみだ。その為の編成であり、戦う為に我々は派遣されていない」

四人の顔に悔しさがにじみ出る。

その様子に毛利大尉は少し考え込む。

だが、すでに答えは出ている。

だから、ふーと息を吐き出すと言葉を続けた。

「だが、我々は、誇り高きフソウ連合海軍である。その誇りがある限り、無様な格好は見せられん。それに、我々は友人を見捨てたりはしない。それは対象が国となっても同じだ。長官としては、アルンカス王国を友好国と考えられておられるようだ。だからこそ、我々はここで海賊に対して背中を見せるわけにいかないと思う。君らはどう思うかね?」

毛利大尉の言葉に、四人の顔がくしゃくしゃに歪み、握りこぶしを強く握り締めて手が震えている。

「司令のおっしゃるとおりです」

「正にその通りだと思います」

「もちろんです。連中に我々を舐めた代価を支払わせましょう」

「ご命令のままに。司令、我々をどうかお使いください」

それぞれがそれぞれの言葉で毛利大尉に答える。

そして、松が頭を下げた。

「ありがとうございます。司令」

その言葉には、感謝の気持ちが満ち満ちている。

我々の心情を図っていただき、ありがとうと言う事らしい。

だが、毛利大尉はすっとぼけて「いや、私は、お礼を言われるような事はいっていないぞ」と言葉を返した。

しかし、松はニコリと笑うと言葉を続けた。

「それでもお礼が言いたかったのですよ、司令」

そして、表情を引き締めると四人は立ち上がって敬礼する。

「我ら一丸となって戦う所存であります。ですから、よろしくお願いいたします」

その敬礼と言葉に、少し照れたような顔で毛利大尉は頷くと「わかった。よろしく頼む」と言って作戦を説明する為、座るように言葉を続けたのだった。



「それでは我々が主力として敵艦隊に攻撃を仕掛け、出来る限りこのラインに近づけさせなければいいのですね」

松がそう言って海図の赤鉛筆で引かれたラインを指差す。

「ああ。一応、このラインには、西部方面警戒に当たっている第六警戒隊の神川丸と北部方面警戒に当たっている第七警戒隊の聖川丸からそれぞれ駆逐艦が一隻ずつまわされるから、その二艦で第二ラインを形成する」

毛利大尉がそう説明するとすかさず桜が聞いてくる。

「増援は、誰と誰ですか?」

その問いに、副官の海辺中尉が紙を確認して答えた。

「西部警戒から駆逐艦 野風、北部警戒から駆逐艦 若竹となっています」

「そうかあいつらか…」

「あいつらも張り切っているだろうぜ、きっと…」

「ほんとほんと…」

互いにそう言い合う中、一人考え込んでいた松が毛利大尉をじっと見て質問する。

「もしもですが…。もし、このラインも突破されたらどうするつもりですか?我々だって必死で対応しますし、出来る限り突破は許さないようにするつもりです。しかし、それでも絶対ではない。その時、司令、あなたはどうされるのですか?」

盛り上がっていた場が一瞬で静かになった。

まるでその言葉で司令の決意を試しているかのような雰囲気になる。

だが、その視線を受け止めつつ、毛利大尉はニタリと笑った。

「なあに、いざとなったらこの艦で止めて見せるさ。それくらいの覚悟はあるよ」

その言葉に満足したのだろう。

松は頭を下げた。

そして笑って言う。

「では、我々は司令がそんな決断をしないですむように奮戦するか!」

「おうよ。任せておけ」

「当たり前だ」

「ふっ、聞かなくてもわかっているだろうが」

それぞれが声を上げる。

「それでは、増援の二艦が来てから、再度、作戦会議を開く。一時解散だ」

「「「「了解しました」」」」

四人が意気揚々と会議室を出て行く。

それを見送った後、毛利大尉は副官である海辺中尉に命令を下した。

「今すぐ、アルンカス王国に滞在している木村大尉に連絡を入れろ。海賊が接近していると。そして、王国に働きかけて、すべての船の運行停止と、海岸線の警備を依頼するようにと伝えておけ」

その言葉に、海辺中尉は聞き返す。

「防ぎ切れないと?」

「念のためだよ。念のため」

そう言いつつも、毛利大尉の顔は笑ってはいない。

それゆえに海辺中尉にはわかってしまう。

駆逐艦達が奮戦したとしても、多分、完全に防ぎ切れないと毛利大尉が思っている事を…。

「いざとなったら使うしかないか…」

そう呟いて深いため息を吐き出すと、ボソッと口から言葉がこぼれた。

「こういうのは向いていないんだけどなぁ…私は…」

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