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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第十三章 アルンカス王国

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会議  その2

「大体の方針は決まりましたが、やはり生の情報やアルンカス王国の行政機関との事前とのつなぎは欲しいところですな」

新見中将が腕を組んだまま独り言のようにそう発言する。

本当なら挙手が必要だが、あくまでも独り言といった感じだったので誰も何も言わなかった。

「確かに中将の言うとおりだ。今まで得ていた情報は、あくまでも六強、つまり上から見下した目線でみたものだ。しかし、我々は対等な関係を築きたいと思っている。だから、同じ高さの目線で見た情報が必要だな。しかし、どうしたらいいと思う?」

鍋島長官がそう口を開くと、待ってましたとばかりに川見大佐が挙手し、指名されると立ち上がってニヤリと笑って発言した。

「恐らくそう言われると思って、すでに連絡員を数名アルンカス王国に送っております。特に首都コクバンに送った木下大尉は現地よりかなり有効な情報をこちらにもたらしており、また責任感の強い男ですから、アルンカス王国行政機関との事前のつなぎとしては最適だと考えられます」

川見大佐の言葉に、鍋島長官は気になったのか聞き返す。

「現地でのフソウ連合に対する風当たりはどうかな?」

「そうですな。共和国があまりにも強硬すぎるためでしょうね。かなり反感を買うような事をしでかしたようです。その為、その共和国を破った我々に対して、現地は好意的であるといったところでしょうか」

川見大佐のその言葉に、場は盛り上がったものの、鍋島長官だけは浮かない顔のままだった。

それが気になったのだろう。

彼の秘書官である東郷大尉が長官に聞いてくる。

「どうしたんでしょうか。何か問題でも…」

その問いに、鍋島長官は苦笑し答える。

「いやなに、期待されている分、下手なことをしでかしたら、一気に評価は逆転するかなと思ってね…」

その長官の言葉に、盛り上がっていた場がしーんとなった。

誰もが確かに言われたとおりだと気が付いたようだった。

「あ、ごめんよ。場をしらけさせるつもりはないんだ。ただ、上手くいっている時こそ、気をつけなきゃいけないと思ってね。それに、期待が高いほど、裏切られた時の失望感や絶望感は大きいから、それだけは避けないといけないと思っただけだよ」

「確かに…。おっしゃるとおりですな。気をつけるに越した事はない。それに下手な横槍が入らないとも限りませんしな」

新見中将がそう言うと、川見大佐も頷き口を開く。

「現地の連絡員たちには、十分注意するように伝えておきます。それと、つなぎの件はどうしましょうか?」

「ああ、つなぎの件は進めていいと思うよ。それとなくだけど、向こうの動きとか探りを入れておいてくれたら助かるよ」

「はっ。より詳しい情報が入り次第、至急報告します」

「わかった。よろしく頼む」

一区切りついたところで、進行役の東郷大尉が次の議題を口にする。

「それでは、アルカンス王国の件についての方針は次回のミーティングまで以上とします。続きまして、復興を開始したイタオウ地区の状況報告をお願いします」

まず全体的な報告をイタオウ地区統括である的場大佐が行った後、経済については後方支援本部の鏡中佐がより細かく報告していく。

「工場地区ですが、かなり順調に進んでいます。区画整理は今月中に終わり、来月からは順に着工できると考えています。それにあわせて工場勤務の者を現地から雇い始め、工場が完成して工作機械が搬入され次第、業務にすぐに移れるように職務訓練を始めたいと思っています。また、造船所の方ですが、ブロックごとの移送方式で形になりつつあります。もっとも、港としての機能が整い始めたという感じで、まだまだドックといえるものではありませんが…。それでもそろそろ港の作業員を育成しておく必要があると思っています」

その報告に、鍋島長官は頷く。

「無理はしなくていいけど、なるべく形を整えるのは早めに頼む。イタオウ地区の人々にきちんと仕事が出来て、生活できるという環境を用意しておきたい。ある程度、生活が潤えば、それを壊してまで色々やってやろうとはなかなか思わないからね。それとイタオウ地区の農業の方はどうどうなんだい?」

その質問に、的場大佐が報告書を読み上げる。

「そうですね。土地的なものや環境から、なかなか難しいと思います。一応、漁業の方はうまく回っており、また不審船を発見した場合の報告を義務化し、また報奨金をつけたおかげでかなり助かっています」

「そうか。それはよかった。イタオウ地区は、工業をメインにするが、漁業も大切な経済の柱だからな。工場や造船所のきちんとした安全基準とか頼むぞ」

「了解しました」

そして、次に広報部の杵島中佐が報告に立ち上がる。

「それでは新作映画の件で報告します」

その言葉に、さっきまで静かだった場がざわめく。

それはそうだろう。

秘密理に映画脚本のコンペなんかやっており、かなりの参加者があったのだ。

それだけ関心が高いという事に他ならない。

そして、その中から二本の脚本が選ばれ、すでに製作がかなり進んでいる。

「新作映画ですが、二本ともほぼ完成に近い状態ですが、もう少し時間が必要となっています。その為、先に編集を行っていたニュース映画を公開し、近々新作映画を公開するという広告を付けたいと思っています」

「「「おおおーっ」」」

歓声が上がる。

しかし、話はそれだけでは終わらなかった。

「また、今までのような公民館といった施設ではなく、全国各地に映画館を建てそこで定期的に映画を公開していくように動いています。そしてすでにガサ地区、カオクフ地区、シュウホン地区、トモマク地区の各行政の許可は取り付け、建設が始まっております」

その報告に、鍋島長官は驚いた表情で聞き返す。

「えらい手際がいいね」

「ええ、特にガサ地区、カオクフ地区の二つの地区は、面白そうだと二つ返事で許可していただき、土地や予算まで優遇してくださいました」

杵島大佐のその言葉に鍋島長官は苦笑する。

「あの二人なら…ありえるなぁ…」

「どうやらその情報が行ったみたいで、シュウホン地区、トモマク地区も乗り遅れるなと慌てて許可がきました」

「くっくっくっ…ああ、ますますありえる…」

笑いを抑えつつ、鍋島長官が呟く。

それに東郷大尉も「ええ。ありえますね」と言って笑いを一生懸命押さえようとしている。

「ですから、今月末には、ガサ地区、カオクフ地区の二地区の建物が完成しますので、そちらから公開を始めていきます。残りの二地区は、少し遅れて完成予定ですので、完成次第順次公開とします」

少し気になったのだろう。

鍋島長官が聞いてくる。

「映画は、映画館だけしか公開しないのかい?」

その問いに、杵島大佐はニコリと微笑むとはっきりと言い切る。

「はい。その予定です。公民館等の公共施設での無料のニュース映画とは差別化を図りたいと思っています。あの映画は、お金を出して映画館に行かないと見れないという環境を作りたいですね」

「うむ。いいと思うよ。それで、先行試写会は何時頃になりそうかな?」

その質問に、杵島大佐は少し考え込み、そして答える。

「そうですね。今月末までには二本とも先行試写会は行いたいと思います。それと、この二本以降の映画は、イタオウ地区の映画会社で順次製作する予定となっています。ご期待ください」

「そうか。そうか…。それで映画会社の方はうまくいきそう?」

「はい。まだ試行錯誤ですが、近々きちんとした会社として発足させ、本格的に映画製作に入りたいと思っています。また、製作は少し時期をずらしつつ二本ずつを続けていく予定です」

その答えに十分満足したのだろう。

鍋島長官は、頷くとニコリと笑った。

「それは楽しみだ。映画産業もイタオウ地区の産業の柱になるように頑張ってくれ」

「はい、ご期待に沿えるように頑張ります」

その顔はやる気に満ち満ちており、その顔を見た鍋島長官は、上手くいくだろうと確信するほどであった。

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