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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第二章 海軍強化とシマト諸島奪回戦

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日誌 第四日目 その2

家具などの発注や、服や日常必需品や食料等の買出しを終えた後、僕は町外れの住宅地に向っていた。

しかし、思っていたより時間がかかったため、結局、本屋は周れなかった。

朝十時に出発したのに、今は午後三時過ぎだ。

意外な事に家具の方はそれほど時間はかからなかったが、問題は服とか日常必需品だった。

まぁ、男性組である僕や見方大尉はあっという間に終わったんだけど、東郷大尉の方が無茶苦茶時間がかかってしまった。

女子の買い物は時間がかかるとは聞いていたが、こんなにかかるとは思わなかったよ。

それでも、何着か購入だったからこれでも短く済んだんだと思う。

もし一着だけとかになったらどうなった事だろうか。

試着するだびに、「どうですか?似合ってます?」って聞かれて最初こそよく考えて返事をしていたけど、段々とおざなりな返事になったのは許して欲しいと思う。

その事を見方大尉に愚痴ったら、「大丈夫ですよ。多分、気にしてませんから」ってうんざりした顔で返事が返ってきた。

どうやら以前に何度も振り回されたようだ。

さすが経験者は違うな。

変なところで感心してしまった。

それで、結局、服を購入し終えたのは午後1時近くなっており、そのままショッピングモールの飲食コーナーで簡単に昼食を済ませて、その後の買い物を一気に済ませてやっと今に至るというわけだ。

ふう。疲れた…。

車を運転しているから、派手に首は回せないものの、肩を少しほぐす。

そんな僕には気がつかず助手席に座って周りを見回しながら東郷大尉が聞いてくる。

「えっと…次はどこに行くんですか?」

ちなみに、見方大尉はぐったりしているのでぼーっと外を眺めているだけだ。

口数も少ない。

いやぁ、すみません。

荷物持ちに荷物番、実に色々がんばってもらった。

後で、こっそりと買った日本酒でも分けてあげるか…。

そんな事を思いつつ、東郷大尉に返答する。

「ああ。海軍の強化に必要なところさ」

「それって…」

東郷大尉が言い終わらないうちに目的地に着いた。

「ここだよ」

僕はそう言って車を駐車場に止める。

「あ、ここは知り合いの店だし、危険なんてないから見方大尉は車で少し休んでいて」

「すみません…」

そういうと見方大尉は苦笑した。

まさかたかが買い物にこんなに疲れるとは思っていなかったんだろう。

そりゃ、何も知識がない世界である上にあの人の多さ、それに緊張と警護であんなに気を張ってりゃ疲れるだろう。

「何かあったら、呼ぶからね」

そう言って、買ったばかりの携帯電話を手渡す。

使い方は、もう教えてある。

ちなみに東郷大尉にも渡してあったりする。

いきりスマホは敷居が高いと思ったので、簡単な携帯電話、俗に言うガラケーにしたんだけどすぐに使い方はマスターしたようだった。

「あ、それと…」

今度は東郷大尉に顔を向ける。

「ここで、長官とかはダメだからね。僕も大尉とは付けないで、東郷さんって呼ぶから」

僕の言葉に、なんか思うところがあったんだろうか。

なんかうれしそうに「はいっ。なんてお呼びすればいいんでしょうか」って聞いてくる。

「そうだねぇ。無難に鍋島さんっていいからね」

「はいっ。了解しました」

「さて、それでは行こうか」

僕がそう言ってドアを開けると、東郷大尉もドアを開ける。

そして、二人で並んで建物の入口に歩いていく。

「えっと…これってお店の名前ですよね」

「そうだよ」

「へぇ…。星野模型店って言うんですね」



「いらっしゃいませ」

店内に入ると大きくもなく、それでいて小さくもない程よい感じの大きさの声で挨拶がある。

そして、その後に言葉が続く。

「あら、なんか久しぶりね。えっと…二週間ぶりかな?」

そう言って笑いながら聞いてくるのは、この星野模型店の女店主である、星野つぐみさんだ。

髪は顎のラインで切りそろえられたショートカット。

美人ではないけれど整った顔立ちで少し大きめの目。

それでいてその整った顔立ちのバランスをひっくり返すかのような大きくて野暮ったい黒縁の眼鏡。

年は確か二十後半になるだろうか。

「ええ。そんなものですね」

「えっと、今日は、彼に用事かな?」

そう言いつつ、星野店長が僕の後ろの方に視線を向けつつくすくすと笑う。

「いえ。今日は買い物ですよ」

「あら…。てっきり綺麗な女性同伴だから、彼女でも出来ましたって報告かと思ったのに…」

その言葉に、僕は慌てて否定する。

「ち、違うって…。友達だよっ、友達っ…」

僕がそう言って東郷大尉の方に視線を向けると、なぜか不機嫌そうな表情の東郷大尉の顔があった。

えっと…間違った事は言ってないんだけど…。

「ふーんっ。友達なんだ…」

星野店長が含み笑いをしながら言うと、それに触発されたのか、東郷大尉が前に出て挨拶をした。

「始めましてっ、私、東郷夏美といいます。鍋島さんとは『友達』としてよくしてもらっています」

なんか友達ってところで声が大きくなったけど、気のせいだよね。

「あらあら。こんにちは。私はここの店長をしています、星野つぐみといいます。彼との関係は、簡単に言うと彼の従兄弟に当たる人が私の旦那様なので、親戚ってところかな」

その言葉を聞いて少し東郷大尉の表情が和らいだようだ。

「えっと…それじゃ…」

「ふふふっ。私、人妻でーすっ」

うれしそうに左手の薬指に光る結婚指輪を見せる星野店長。

ちなみに僕にも散々見せびらかしていたっけ。

そんでもって「早く彼女、見つけなさいよっ」って楽しそうにいうんだよなぁ。

すごくうれしいのはわかるんだけどさ、惚気話は、もういいです。

精神的ダメージでかいので…。

そんな事を思って少しうんざりしていたら、何やら東郷大尉の方を見て微笑んだ。

「安心した?」

その言葉に真っ赤になる東郷大尉。

「えっと…あの…」

僕がどういうことか聞こうと声をかけようとしたが、「ふっふっふ。女の子同士のガールズトークをするので、君は買うものを物色してきたまえ」と星野店長にしっしっと売り場の方に追いやられる。

なんなんだ、これはっ…。

そう思ったものの、まぁ、いいかと考え直す。

男ばかりの環境だからな。

たまには東郷大尉も女性との会話を楽しんでもいいんじゃないかな。

そう考える事にした。

どうやら二人は、工作室の方に行くらしい。

じゃあ、こっちはこっちでいろいろ海軍増強のために必要な物を吟味していくか。

僕はため息を吐き出すと、1/700の洋上モデルが置いてあるコーナーに向うのだった。

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