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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第二章 海軍強化とシマト諸島奪回戦
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日誌 第四日目 その1

本島に戻ってきた翌日、自宅での睡眠を堪能した後、いつもの時間に起こしに来た東郷大尉と護衛の見方大尉の三人で朝食を取った。

本日は、東郷大尉が朝食を作りたいということで、横で電化製品の使い方を教えつつ彼女が準備した。

ごはんに、豆腐と大根の味噌汁、ベーコンと目玉焼き、それにサラダ。あとは、白菜の漬物と味のり。

まぁ、よくある朝食だが、なんか安心できる献立でもある。

味噌は親戚の自家製味噌を使っており、うちらしい味に仕上がっている。

そして、会話をはさみつつ朝食を食べる。

大学から一人暮らしを続け、社会人になってもどちらかというと一人で朝食が多かった僕としてはなんかこういうのはうれしいなと思う。

食べ終わり、みんなで食後のお茶をすすりながら僕は二人を見て口を開いた。

「今日は必要な物を買いに行こうと思う」

「えっと…買い物ですね。何を買うんですか?」

東郷大尉が怪訝そうな表情で聞き返す。

「ああ。こっちの世界で君達の部屋や当直室に必要な物を買いに行く。ベッドとか棚とか、色々必要だろう?それに、軍服のままでこっちにいるわけにはいかないんだからこっちで着る服なんかも必要だ…。それにちょうどタイミングよく今日は休みだったよね?」

「はい。本日はお休みとなっております。しかし…」

今日の予定を口にするものの、多分その必要はないといいたいのだが言い切れずに歯切れの悪い東郷大尉に、見方大尉が助け舟を出す。

「長官。その必要はありません。自分らは寝袋で十分ですし、服も問題ありません」

その見方大尉の言葉に、東郷大尉の顔が嫌そうな表情になる。

多分、僕に負担をかけまいという思いはあるのだが、このままずーっと寝袋は嫌だという思いもあるのだろう。

それに母の服を見てうきうきしていた様子から、こっちの服装とかファッションに興味があるのだろう。

実にわかりやすい。

その様子を楽しんでもよかったが、まぁ、ほどほどにして口を開く。

「最初に言ったはずだよ。こっちでは僕の指示に従ってほしい。あまり来訪者はいないとは思うけど、人が用事で来て家に上げるような時にきちんとしておきたいんだ。そういう理由じゃダメかな?」

僕がそう言うと、見方大尉は黙り込む。

多分、自分達の世界とこっちの世界が繋がっているという事は知られるわけにはいかないのだから、危険はなるべく避けるべきだと思いついたのだろう。

「了解しました。それなら、我々もこっちの世界の常識などを知っておかなければなりませんね。私達の世界とこっちの世界の違いとかをいろいろ勉強させていただきます」

見方大尉がため息を吐きつつそう言うと、東郷大尉も仕方ないといった表情を作って口を開く。

「そ、そうですよね。仕方ありませんね。うんうん…」

そうは言いつつも、仕方ないといった表情の仮面は、あっという間にうれしそうな顔になっている。

うーーーん。実にわかりやすい。

多分、ポーカーとか弱いタイプだな。

そんな事を思いつつ、朝食を終えると僕たち三人は出かける準備をすることになった。


「おかしくないでしょうか?」

私服に着替えてきた東郷大尉がくるりと僕の前で身体を一回転させる。

きっちりと固めた髪形もよかったが、開放された今の髪型もなかなかいい感じた。

身体の動きに合わせて艶のある髪が動きの後を追うように流れている。

「ああ。綺麗な髪だね」

僕の言葉に、「えっ」と言う表情をした後、東郷大尉が真っ赤になって口を開く。

「髪を褒めてくれたのはうれしいんですけど、今はですね…その…服装の方を…」

そう言われて、はっと気づく。

そうだった。そうだった。

女性用の服が母親のしかなかったから、母親の少しゆったりとした感じの服を貸したんだけど、渡す前は少し古臭いと思ったデザインも彼女が着て目の前に立っていると違和感がないし、なかなか似合っている。

「ああ、服装も問題ないよ」

僕がそう言うと東郷大尉はニコリと笑い、自分自身を見下ろして服のいろんなところをいじっている。

かなりうれしそうだ。

「こっちはどうでしょうか?」

どうやら見方大尉も着替えが終わったらしく、東郷大尉の後ろに立っている。

見方大尉には僕が特売の時に買い置きしていた使っていなかったシャツとジーンズを渡している。

「オッケー。問題ない」

やっぱりイケメンは何着てもかっこいいよなぁ…。

僕の正直な感想である。

嫉妬さえわかないんだから、元の差が大きすぎるのだろう。

愛嬌のある顔をしてるとはよく言われたが、かっこいいとは言われた事のない自分としてはなんか情けない気がするが、気にしたら負けだと思う。

でも……ううっ。イケメンに生まれたかった…。

まぁ、そんな事をいつまでも考えても仕方ないので、僕は車庫の方に二人を案内する。

車庫には二台の車があり、一台は父が愛用していた白い古い形のワンボックスワゴン。もう一台は自分が買った銀色の軽自動車だ。

「えっと、こっちが僕ので、こっちは父が使っていたやつだ。今回は、こっちを使う」

そう言いつつ、ワンボックスのほうを指差す。

「えっ…」

東郷大尉が声を上げる。

「えっと…東郷大尉。何か不都合でも?」

僕が聞き返すと、慌てて口をもごもごしている。

なんかかわいいなとは思うが、それではよくわからないので、耳を近づけて聞き返す。

「えっと…不都合でもある?」

すると観念したのだろう。

ぼそぼそと返事を返す。

「こっちのかわいいので行くのかと…」

どうやら、軽の方をいたく気に入った様子だ。

まぁ、確かに、あの世界では、車といえば基本軍用のごついやつばかりで、こういう感じのこじんまりとしてかわいい感じの車はほとんどないから、彼女のかわいいモノセンサーにどストライクなのだろう。

こっちでは、それほど人気があるモデルでもないんだけどなぁ。

そんな事を思いつつも、「今回は色々荷物があるし、三人と荷物じゃ狭くてどうにもならないからね」と言ってなだめてみる。

しかし、踏ん切りがつかないのか、なんかちらちらと軽自動車の方を見ている。

うーん。助けを求めようとして見方大尉の方を見ると、視線をずらして目をあわそうとしない。

つまりは、これはどうしょうもないと言うことなのだろう。

僕はそう判断すると、「わかった。今回はダメだけど、今度時間があるときにドライブに連れて行くよ」という妥協案を出してみる。

するとずいっと顔を近づけて僕の肩を握って揺さぶりながら言ってくる。

「絶対ですよ。絶対ですからね」

「あ、ああ。うん。もちろんだよ…」

その勢いに圧倒されつつ、頷くしかなかった。

なんか、前回の夜のときもそうだったけど、普通の軍人の時とそれ以外の時の差がかなりかけ離れているように感じるのは気のせいだろうか。

そんな事を思いつつも、僕はワンボックスワゴンに乗るように二人に言う。

そして、今日の予定、どの店に行き、どう周っていくかを考える。

まずは、家具だ。

ベッドに机、椅子、箪笥。あとは東郷大尉のために鏡付きの化粧台か、大き目の鏡も必要かな…。

それに布団やカーペットや敷物なんかも見とかないと…。

そうなると手っ取り早いのは、家具なんかを中心に扱う総合ショッピングセンターあたりか…。

荷物は、持っていけない分は配達日を決めて運んでもらうとするか…。

そして、その後はショッピングモール辺りに行って、服とか日常必要品なんかを買って、お昼はそこで食べるかな。

ついでに食材も少し買い込んでおこう。

時間があったら、本屋も周りたいな。

そこまで考えて、重要な用事があった事を思い出す。

そうだ。

あの店にも寄らないと…。

僕は今日の予定をまとめつつ、二人が乗り込み、シートベルトをしているのを確認して出発したのだった。

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