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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第十二章 講和

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日誌 第百十日目  その1

「ふぁーっ」

大きなあくびをして起きる。

昨日と同じのんびり起床である。

もっとも、明日からは海軍本部に行くいつもの日常が始まるからこんなのんびりした朝は今日までだ。

さてと…昨日作っておいた模型のチェックをしに作業室に入る。

昨日の夜は、T社の『アメリカ海軍潜水艦ガトー級/日本海軍13号駆潜艇』のキットを二つ同時作製した。

一つの箱に、ガトー級潜水艦と13号駆潜艇、それにB-25がそれぞれ2個ずつ入っているが、今回はガトー級潜水艦と13号駆潜艇の計八隻を製作。

部品点数は少ないし、小さなキットだから八隻といってもそれほど時間はかからない。

実際、同時に作っていくと普段よりも早い時間帯に完成してしまった。

ちなみにB-25の方は、どうせあと何個かはこのキットを買うだろうから、ある程度数が貯まったら一気につくろうかな…。

そんな風に考えてきちんと箱に入れて保管している。

どうやら塗装や制作のミスはなく、問題はないみたいだ。

そのまま板の上に八隻を載せてジオラマのある部屋に行くと、昨日ドックに置いておいた二隻の駆逐艦が、湾内の港に停泊していた。

完成し、チェックも終わったのだろう。

あとは配備と乗組員を待つばかりといった状態になっているようだ。

明日には、駆逐艦の付喪神と顔合わせをしておかないとな。

そう思いつつ、ドックを見ると新造艦用の専用ドック以外の小型、中型ドックは昨日と同じに全て埋まっていた。

先の戦いで破損した修理中の艦である。

損傷軽微の艦に関しては、工作艦がフル回転で修理しており、ドックに入っているのは、損害の酷いものばかりだ。

最上のように僕が修理する事も考えたが、ちょっとリスクが高い。

最上はうまくいったが、一旦、模型としてこっちで対応した場合、低い割合とはいえ付喪神が変化してしまう場合がある。

そうなると、せっかくフソウ連合の艦艇として蓄積された経験や乗組員達との繋がりもリセットされてしまう恐れがあるのだ。

だから、よほどの緊急や理由がない限り、あのような事はしないようにした。

まぁ、ドック区画の責任者、藤堂四郎少佐ならうまくやるだろう。

そう思いつつ小型ドックに13号駆潜艇、中型ドックにガトー級潜水艦を置く。

ガトー級潜水艦は、フソウ連合海軍始まって以来の、初の付喪神憑きの海外艦である。

(王国に引き渡した戦艦ネルソン、ロドニーは付喪神は憑いていない)

どんな感じなのかすごく気になるなぁ。

やっぱり付喪神も外人みたいになるんだろうか。

ある意味、明日の楽しみが一つ増えたといった感じである。

さてと…それじゃ朝ごはん兼昼ごはんの準備をするか。


本日の朝兼昼ご飯は、東郷さんの作ってくれたお節の残りとご飯味に噌汁、あとはベーコンエッグと漬物となっている。

昨日とは違う警備の面子だから、新年の挨拶をしておく。

どうやら、十時前に交代したらしい。

普段は昼食後に交代だが、お正月休みの為の特別シフトのようだ。

まぁ、向こうの方ものんびりしたもんだろうなと思って向こうの様子を聞いてみたら、新年早々混乱があったらしい。

気になってよく聞くと、当直者がドックを見回っていると、いつのまにか完成した新造艦が小型ドックに二隻あって現場はかなり混乱したらしい。

そこまで言われて思い出す。

すまん。

ドックの方も二日まで休みだった事を忘れていて、いつもの感覚でやってしまった。

あとでお詫びに酒でも差し入れよう。

そんな事を話しながら食後のお茶をすすっていると、警備の班長から今日の予定を聞かれた。

少し頭の中で予定を確認し返事をする。

「そうだなぁ。晩御飯用の買出しと、後は本屋と模型店に行くくらいか…」

「了解しました。荷物持ち兼護衛で一人つけます」

いやいや、それ普通は逆だろう。

護衛兼荷物持ちならわかるんだけど、荷物持ちが先にくるというのは違う気がするんだがなぁ…。

まぁ、今日はおでんの予定で、五人分の食材を大量に買い込むから人手があるほうが助かるから突っ込むのは止めておこう。

それに彼らも慣れたもので、ショッピングモールなんかの時はついてくるが、模型店に行く時は車内で待っていてくれる。

おかげで、光二さんやつぐみさんに変な風に疑われる事もない。

「ああ、わかった。よろしく頼むよ」

僕がそう言うと、班長はニコリと笑って隣のやつにちらりと視線を送る。

どうやら隣にいる人がその役割らしい。

始めてみる顔で、いつも来ている人ではないようだ。

そう言えば、食事も他の人に比べて味わって確かめるように食べていた。

かなりごつい感じの人だが、身体に似合わず優しそうな顔である。

「わたくしは、阿部上等兵曹であります。よろしくお願いいたします、長官」

ぱっと立ち上がり敬礼する姿はなかなかかっこいい。

だが、こっちではあまりにも浮いて見えるため、一応注意しておく事にした。

「いい敬礼だが、こっちではいろいろ違うからね。こっち勤務の時は敬礼はしないように注意しておいてくれよ」

「はっ、了解しました」

今度は敬礼ではなく、頭を下げた。

「ああ、無理をいってすまないね」

僕がそう言うと、今度はじっと見つめられる。

いや…なんですか、その熱い視線は…。

男色の気はまったくないんですが…。

そんな感じて困惑していると、班長が笑いながら口を開く。

「長官、実はこいつは料理人志望のやつで、こっちの料理に興味深々なのですよ。ですから、良かったらですが、今日の料理の手伝いもさせてやってください」

「へぇ…。料理人志望なんだ…」

僕がそう聞くと、阿部上等兵曹は大きく頷く。

「はっ。実家が小料理屋をやってまして、いつかは親の後を継ぐつもりであります。ですから、少しでも構わないのでこっちの料理を勉強させてください」

そして、深々と頭を下げられる。

「うーん…。参考になるかどうかはわからないけど、じゃあ、夕飯の時に手伝ってもらおうか」

僕のその言葉に、よほどうれしかったのだろう。

阿部上等兵曹は半ば強引に僕の手を取り、強く握り締めた。

いや、気持ちはわかるけど…い、痛いって…。


そんな感じで、料理を手伝ってもらう事になったため、早めに出発する。

さすがに軽に男二人(特に阿部上等兵曹はかなりごつい)は狭いかなと思ったので、ワンボックスワゴンの方にした。

まさか、東郷さんみたいに、軽じゃなきゃ嫌だとはいわないだろうしね。

まずはショッピングモールでおでんの材料の買出しだ。

こっちの世界のショッピングモールは始めてらしく、駐車場の時点から阿部上等兵曹は興味深いのかきょろきょろと周りを見回している。

「阿部さん、こっちだ」

僕がそう声をかけると、一瞬きょとんとした後、慌てて僕の方についてきた。

多分、周りの雰囲気に飲まれ、その上、階級のない呼び方に違和感を感じたんだろう。

まぁ、慣れてもらうしかないね。

そして籠を持ってもらい、食材を選んでいく。

ぽんぽんと食材を籠に入れていくのだが、やはりかなりの量になりそうだ。

阿部上等兵曹は、籠に入れられていく食材を目でチェックしていく。

そして時々質問をするのだが、その質問がなかなか料理人らしい質問で、後から思い出してもきちんと答えられたかなと少し不安になってしまう。

だが、阿部上等兵曹の様子を見る限り、どうやら合格点は得たようだった。

いやぁ…すごく緊張した。これで一安心である。

そして買い物袋大型三つになった買出しを終わらせると、次の目的地に向かう。

本屋だ。

いつも寄っている本屋で少し店内を探索して欲しい本を数冊発見。

そして、それらの本を買った後、今度は星野模型店に向かった。

確か、本日から開店のはずだ。

今日は、昨日模型製作の後に作った必要艦船リストの中で、店にある分を少し確保しておくか。

そんな事を思いつつ、店に向かって車を走らせたのだった。

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