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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第十二章 講和

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日誌 第百九日目 

正月だという事で、少しのんびりとお昼近い遅い時間に起きた。

普段なら休みでもここまでのんびりはしない。

平日は海軍本部に行かなければならないし、休みもきちんと東郷さんが朝ごはんを用意してくれているからいつもの時間に起きる。

まぁ、お正月休みだけの特別だ。

まずは昨日完成した艦船の模型をチェックする。

塗装忘れや製作ミスがないかのチェックだ。

それときちんと部品が接着されているかも確認する。

そして、問題ないようならジオラマの部屋に持っていって模型をドックに置く。

今回作製したのは、改峰風型駆逐艦の野風と吹雪型駆逐艦叢雲の二隻だ。

野風は護衛隊に、叢雲は駆逐隊に配備になると思う。

基本、艦隊戦を中心に動くのが駆逐隊、船団や航路護衛を中心に動くのが護衛隊と分けている。

要は、駆逐隊がオフェンス、護衛隊がディフェンスといったところだろうか。

性能的なことも考え、特Ⅰ型駆逐艦である吹雪型以降を駆逐隊、それ以前を護衛隊としている。

後は、防空駆逐艦の秋月型は、今後編成される機動艦隊、航空戦隊の護衛として防空駆逐隊に回される予定となっている。

しかし、まだまだ足りないなぁ…。

大型艦船も不足気味だが、それ以上に深刻なのは小型艦不足だ。

駆逐艦だけでなく、海防艦なんかも追加で作っておく必要がある。

基地の増設なんかも決まったから、警戒に使う駆潜艇もかなり足りない。

T社の『アメリカ海軍潜水艦ガトー級/日本海軍13号駆潜艇』というキットを二個積んではいるものの、一つに二隻入っているとは言っても、それだけでは足りないだろう。

今度、不足分のリストを作ってそれを少し買い込んでおくか。

そんなことを思いつつ、ジオラマを確認してから、下に下りた。

向かう先は、台所である。

「あっ。おはようございます」

警備の兵が挨拶をしてくる。

「ああ、おはよう」

新年の挨拶は食事の時にでもするか。

そう思い、普通の挨拶をする。

そして、台所に入ると、手を洗って冷蔵庫を開けた。

作る料理は、お正月定番のお雑煮である。

もちろん、警備の人達の分もだ。

出汁とかは事前に準備しておいたから、作るのはあっという間だった。

警備の人達に声をかけて、遅い朝ごはん兼早い昼ごはんを食べる。

まずは、互いに新年の挨拶をして新年最初の食事を口にした。

もちろん、雑煮だけでなく、東郷さんの用意してくれていたおせち料理も並べる。

僕の作った雑煮は、昆布出汁のかつお菜、大根、にんじんと電子レンジでチンして柔らかくした餅の入った薄口醤油と塩で味付けしたシンプルなあっさりした味で、反対に東郷さんの作ったおせち料理はなかなかしっかりとした濃い目の味だった。

色々調べたんだろうな。

内容は、黒豆、数の子、紅白かまぼこ、栗きんとん、昆布巻き、ブリの照り焼き、鶏肉の松風焼き、紅白なます、筑前煮となっていて、日本の定番のおせち料理だった。

多分、ご飯と一緒に食べてるように少し濃い目に味付けしたんだろう。

実に僕好みの味だ。

雑煮があっさりしていた分、よけいに濃いい味がうまく感じられる。

ありがとう、東郷さん。

警備の人達も美味い美味いと言って食べていた。

始めてこっちに来た兵にいたっては、なんか美味さに感動して涙ぐんだ目で食ってたな。

「ううっ。今回、こっちに警備に来て良かったです。仕事と言う事を忘れそうになりました」

思わず、仕事を忘れちゃ駄目だろう?って突っ込もうかと思ったけど、それはさすがに横においておく。

「そんなに良かったかい?」

「はいっ。料理もうまいし、映画も見れるしで、仕事と言うより、ご褒美みたいな感じでした。特に映画…。あれはよかった…」

フソウ連合では、映画と言う観念はほとんどない。

あるとしても海軍では訓練なんかに使う映像とかばかりだし、民間なんて映写機自体がないからな。

実際、海軍で作った戦意高揚の映像が、大ヒットしており、海軍で映画を作るプロジェクトが進められているくらいである。

そういや、あの映画の話、どうなったんだろう。

そんな事を思いつつ、僕は苦笑して聞く。

「映画は何見たんだい?」

その言葉に、食いつくように返事が返ってきた。

「リーサル●ェポンとダイ●ードです。特にダイハー●が面白かったです」

世界観や常識なんかは大きく違うけど、アクション映画はそんなものを気にしにしなくて楽しめれるからな。

それにしても名作を見てるねぇ。

そんな事を思いつつ、言葉を返す。

「いいね。両方とも一作目はすごく面白いからね。僕も大好きだよ」

「そうなんですか?自分も気に入りました。続きがあると言う事なので絶対にまた来ます」

「ああ、がんばって」

そんな映画の会話をしつつ、そんな感じで朝とお昼を纏めて済ませる。

その後は、少しゆっくりとした後、昼過ぎに近くの神社で初詣をしてから星野模型店の方に年始の挨拶に向った。

「あけましておめでとうございます」

「あけましておめでとう」

「おめでとうございます」

互いに新年の挨拶を済ませて手土産を渡す。

大掃除の前に、雑煮の材料と一緒に近くのショッピングモールで買ったラスクの詰め合わせで、日持ちはするし、コーヒーや紅茶なんかのお茶請けなんかにもいいからいいんじゃないかと思って用意した。

それと美紀ちゃんにはお年玉だ。

アパートやマンションの管理人としていろいろがんばってくれていると言う話だし、ボーナス代わりだ。

そう思って手渡すと、結構恥ずかしそうに受け取ってたな。

うーん…。

もう短大を卒業しちゃったから、ボーナスって行ったほうが良かったかな…。

まぁ、もう言ってしまった事はどうしようもないからまぁいいかと思うことにする。

「それで、うまくいってるのか?」

挨拶の後、少し聞きにくそうに光二さんが聞いてくる。

「そうですねぇ。一つの事が終わると、次の問題が出てきて、なかなか終わりが見えそうにありません」

僕は苦笑してそう答える。

彼らには、僕が異世界の海軍の指令長官をやっている事は話していない。

ただ、どうしてもやりたい事があると説明しているから、どうしてもこんにぼやけた答えとなってしまう。

しかし、こんな答えでも納得したのだろう。

光二さんは苦笑いしつつ言う。

「常にそんなものさ。生きること、何かをすること、全てにおいて終わりはない。小説や映画だって、終わっているように見えるだけで、映画の後も主人公や登場人物たちの生活は続いていくからな…」

その通りだと思い、「そうですね」と少し考え込むように返事をすると、ぽんぽんと肩を叩かれる。

「あまり深く考えるな。その時その時のベストを尽くせばいい。それが失敗しても、駄目でも、やらなかった後悔よりは、マシだからな」

そう言って光二さんはニヤリとする。

普段からかっこいいが、こういう事をさらっと言えるのは実にかっこいい。

僕もこういう事がいえるようになりたいと思う。

すると少し後ろに立っていたつぐみさんが聞きにくそうに聞いてきた。

「えっと…夏美ちゃんは?」

東郷さんとつぐみさんが会うのは僕が出かける時ぐらいしかないものの、電話なんかで結構頻繁に話をしていたのだろう。

すっかりお互いに名前で呼び合う仲になっているようだった。

「ああ、東郷さんは、お正月は実家に帰省中です」

そう返事をすると、つぐみさんは意味深な視線を向ける。

「えっと…なんでしょう?」

「ねぇ、貴方は彼女と一緒に行かなくてよかったの?」

そう聞かれ、港で送る時に抱きしめた事を思い出す。

腕の中にある柔らかい身体の感覚、髪の匂い…。

それらが頭の中に蘇ってくる。

カーッと血が上り、なんか頬辺りや耳が熱い。

「い、いや…あの…」

なんて答えたらいいんだろうか。

しどろもどろの僕を見て、つぐみさんはうれしそうに笑って言葉を続けた。

「がんばりなさいよ。応援しているからね」

なんか恥ずかしかったし、心の中を見透かされた感じがしたけど、それはそれで悪くないかなと思えた。

だから僕は返事を返した。

「はい。ありがとうございます。頑張ります」

僕の返事に、満足そうに頷くつぐみさんとそれを苦笑してみている光二さん。

互いがお互いを分かり合っているといった感じだ。

いい関係が出来ているのがわかる。

だから、僕も東郷さんとあんな風な関係になれたらといいかなと思わずにはいられなかった。

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