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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第十章 戦いの後に… フソウ連合編 

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十二月二十九日  東郷夏美の場合…その1

「大丈夫ですか?」

思わずそう声をかけてしまう。

「ああ、大丈夫だよ。少し眠いだけだから…」

そう言いつつ笑うが長官の顔色はあまり優れないし、目の下のクマがすごい事になっている。

実際、その後、本会議の為の打ち合わせに来た三島さんが驚いて私と同じように声をかけていた。

昨日の夜もかなり遅くまで作業をされていたようで、朝食の用意の為に朝起きた時にはもう顔を洗っていた。

警護の人(見方大尉の部下で常時二人いる)に聞いても、朝方近くまで作業室の明かりはついていたとのことだった。

確かによく夜遅くまで作業をされている事はあるけど、今回は根をつめすぎな気がする。

やはりあんな事があったためだろうか。

その気持ちはわかるけど、無理をするのは駄目だと思う。

「本当に大丈夫なんですか?」

本会議に出るために、早めに食べていたお昼ご飯の時にも心配で声をかけてしまう。

だって、カレー食べながらうとうとしてるんだもの…。

「大丈夫だって。東郷大尉は心配性だなぁ…」

そう言って笑うけど、それでもかなり疲労している感じがする。

そんな考えが顔に出てしまっていたのだろう。

「本会議に行く途中で仮眠取るから、問題ないよ」

そう言われてしまえば、「はい。わかりました」と言うしかない。

彼は頑張り屋というのはわかっているが、へんな所で意固地になるところがある。

多分、色々言っても駄目だろう。

だからこそ、余計に心配なのだ。

そして早めの昼食を終わらせた後は、二式大艇に乗り込んで本会議に向かう。

同行者は、三島地区責任者代理と私、それに護衛の見方大尉と彼の部下四名である。

そして、モノの見事に搭乗中は爆睡してましたよ…彼…。

もうね、揺すっても声かけてもまったく反応なし。

息はしてるから死んではいないとわかるんだけど、どんだけ疲労しんるんだかと言うくらいだ。

最終打ち合わせしたかったみたいな感じの三島さんだったけど、何をやっても駄目な状況に呆れかえっていた。

さすがにそのままだと不味いと思ったので、フォローを入れておきましたけど、なぜか三島さんに可哀想な目で見られて、ポンポンと肩を叩かれる。

「あんたも苦労するねぇ…」

いや、苦労とは思ってないんですけど…。

ただ、ただ心配なだけです。

そんな感じで、実に二時間のフライト時間の間、長官はお休みでした。

本当に生命維持以外はやってないんじゃないかってくらい、お休みでした。

しかし、どういう原理なんでしょうか。

着水した途端、目を覚ますんですよ。

「うーーんっ…なんか久々によく寝た気がする…」とか言いつつ…。

どうやって起そうか?って三島さんと話してて、悩んだのが馬鹿みたいでした。

三島さんも同じ思いなのでしょう。

ため息を吐き出した後、苦笑してました。

「長官、どうですか?」

「うーん…よく寝た気がするけどすっきりした感じはまだまだって感じだ。すまないけど、会議場についたら濃いめのコーヒーをお願いするよ」

「はい。わかりました」

そう返事をしつつ、少し顔色がよくなった気がするのでほっとした。

そして、事前に連絡して用意されていた車でシュウホン島の首都にある『フソウ連合政務会館』に向う。

そこで地区責任者が集まっての本会議が始まる。

だが、暴動があったイタオウ地区の責任者は不参加だが…。

しかも今回は基本的な話し合い以外に、今回の帝国と共和国との戦いの件やイタオウ地区での事変、さらに結界の件と話し合う事が山済みとなっている。

時間がかかりそうなだけでなく、なにやら波乱的な会議になりそうな気がする。

しかし、私は会議に出席できる権利はない。

ただ、じっと控え室で待つことしか出来ない。

だから、帰ってきた時に少しでもリラックスできるように、肩の荷が下りるように準備しなくては…。

私は、そんな事を思いつつ、何を準備しておくか頭の中で考え始めていた。



現在、二十時三十分を過ぎようとしていた。

十四時過ぎに会議は始まったわけだから、実に六時間は過ぎていることになる。

途中二度飲み物の給仕をしに入室したのだが、その時の感じではかなり難航している感じがした。

特に、結界とイタオウ地区に関してのようだった。

これはもう少し長引くかな…。

私はそう思い、軽い食事の準備を始めた。

前回の時は、大体終わる時間がわかっていたからよかったものの、今回のようないつ終わるかわからない時は、どうしても用意できるものは限られてしまう。

そして、色々考えてサンドイッチに決める。

後は温めやすいスープあたりを用意しておこう。

控え室のスペースには簡単な料理を作れる小部屋があるのでそこで準備をしていく。

「警備の人達の分も作るから、順に食べていってくださいね」

私が作りつつそう声をかけると、さっきまで無表情で待機していた警備の人が「ありがとうございます」ってうれしそうににこやかな笑顔を浮かべて返事を返してきた。

その部下の様子を苦笑しつつ見ていた見方大尉だったが、部下の一人に命令を下す。

「料理が出来たら、各自交代で食事を済ませておけ。二十分交代だ」

「はっ。了解しました」

待機していた警備の人は表情を引き締めなおして敬礼すると、多分他の人たちに連絡に行く為に早足で退出していった。

そして、控え室には、私と見方大尉の二人だけになる。

料理をする音だけが部屋に響き、二人共黙っていたが、意を決したのだろう。

見方大尉が最初に口を開いた。

「ところでさ…上手くいってるの?」

思わずフライパンを落としそうになった。

いやはや、包丁使っているときじゃなくてよかったわ。

しかし、唐突過ぎる話題である。

ひょいと顔を見方大尉のほうに向けて聞く。

「え、えっと…何かな?」

「だから、長官とだよ」

「長官とって?」

「夏美があの人のこと好きなのは見てりゃ丸わかりなんだよ」

そう言われて、そんなに露骨だったかと少し考えてしまう。

なんか恥ずかしい。

「そんなにわかりやすかった?」

「なんとなくだけどな。それで少しは進展あるのか?」

そう聞かれて考える。

進展といえるものがあっただろうか…。

うーん…。

何もなかった…。

いや、あったじゃないか。

「うんとね、今度二人で飲もうって言われた」

私の言葉に、見方大尉がうれしそうに言う。

「そうか。そうかっ。よかった…」

えらい安心している様子に、私は何か引っかかるものがあったので聞くことにした。

もちろん、やさしくですよ…。

もっとも右手に偶々だけど包丁持って…。

「何がよかったのかな?」

「いやなに…ひいっ…。な、何で包丁なんて持ってんだよ」

「あ、偶々よ。偶々っ。それで何でそんなによかったのかしら?なんか気になるのよねぇ…」

そう言いつつ、ずいっと一歩踏み出す。

さーっと見方大尉の顔色が変わった。

「いや…それはだな…」

「いや、それは?」

「だから…」

「だから?」

そして、折れた。

「すまんっ。お前の両親から、進行状況を報告してくれって手紙が…」

まるで阿修羅に助けを請うかのように手を合わせて見方大尉は私を拝み倒している。

失礼しちゃうな。

でも、まさか…お母さん達がねぇ…。

ちょっと要注意だ。

私はそう判断し、見方大尉に適当にそれらしく書いて送るように命じた。

もちろん、彼は素直に従ってくれた。

素直な人って素敵だわ。

そんな事を思いつつ、料理を再開する。

早く会議終わらないかな…。

私はそう思いつつ、時計を見上げた。

時間はいつのまにか二十一時を過ぎてしまっていた。

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