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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第八章 帝国の逆襲

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帝国領 アットルカ海沖にて…

日が傾いてうっすらと闇の衣が降り立つ頃、訓練が終わって港に戻る戦艦を監視する目があった。

海面に出ている面積は小さく、また薄暗闇の中の為にこっちが見つかる事はほとんどないだろう。

そしてその小さな艦橋には二人の男がそれぞれ双眼鏡で遠くに移動する艦隊を監視している。

「しかし、情報どおりでしたな…」

双眼鏡を下ろして無精髭をはやした男が呟くように言う。

それに、もう一人の髭をはやしていない男が答える。

「まだ昼間の高高度からの写真を見てませんが、確かに戦艦クラスですね、あの大きさは…」

「しかし、甲の確認は出来たが、乙の確認が出来なかった…」

「つまり、乙はまだドックにいるということですかね…」

「やはり、晴嵐を飛ばして高高度から港の写真を撮る必要性があるか…」

その言葉に、髭を生やしていないほうの男が怪訝そうな表情をする。

「いいんでしょうか?」

「何がだ?」

「長官のご命令は、敵が戦艦の電探を使いこなせているかという事と敵の戦力の確認です。港は範囲外では?」

「確かに、港までは言われなかったが、敵艦の所在位置をしっかり把握しておかなければならないからな。そのための戦力確認だ」

そう言われてしまえば返す言葉もない。

この艦の最高司令官は彼なのだから、命令に従うだけだ。

「了解しました」

そう返答した時だった。

甲板に出て周りを警戒していた兵が叫ぶ。

「後方より艦が接近しています」

二人は慌てて後方を見た。

一隻の小型艦がかなり近くまで接近している。

どうやら夕日の光に隠れて発見が遅くなったようだ。

そのシルエットからして軍艦のようだ。

段々とこっちに近づいてくる。

「急速潜行っ、急げっ」

無精髭の男が叫び、命令が艦内に伝わり、甲板の兵達も素早い動きで艦内に入っていく。

もちろん、艦橋にいた二人も艦内に戻る。

その間にも、艦内では潜行しやすいように兵達が前方にあつまる。

艦はゆっくりと沈み始め、最後の一人がハッチを占めると一気に深くもぐった。

そう、この艦は潜水艦なのだ。

フソウ連合海軍の潜水艦部隊の一隻。

伊-400。

それがこの船に与えられた名前である。

「見つかったかな?」

無精髭をはやした男、岸辺少尉は一緒に艦橋にいた男に声をかけた。

「わかりません。しかし、見られた可能性は高いですね」

もう一人の男、伊-400の付喪神がそう答える。

「やはりそう思うか…」

「ええ」

「なら、やるしかないか…」

秘密裏に動いている以上、ここに我々がいる事を敵に知られるわけにはいかない。

多分、大丈夫だろうという希望的観測はありえない。

常に悪い方を想定し動く。

そうしなければ最悪の場合、任務を全うするどころか、撃沈される恐れさえある。

確かに、まだ潜水艦という存在がない以上、潜水艦を沈めるための武器は限定されているし、方法だってそう多くはない。

しかし、無敵でもなんでもない。

どうにか沈めようと思えば、なんとか沈められる存在程度の違いでしかない。

だから、油断大敵なのだ。

「潜望鏡、用意」

「潜望鏡深度まで戻せ」

艦がゆっくりと動き、一旦深く沈んでいた艦が潜望鏡が出せる深度まで上っていく。

そして、潜望鏡を出せる深度まで浮上し、岸辺少尉は潜望鏡でゆっくりと周りをぐるりと見回す。

すると敵艦が艦首の方向に見えた。

どうやら先ほどの艦は通り過ぎたあと、周りをうろうろしている様子だ。

やはり見られていたらしい。

そして急に姿が見えなくなり、慌てて周りを捜索しているようだ。

沈没したとでも思われたのかもしれないな。

もしかしたら脱出した者を救おうというつもりなのかもしれない。

それは船乗りとしては当たり前であり、常識的な事だ。

岸辺少尉はそう思ったが、だから見逃すという選択肢はない。

「一番、三番、魚雷戦用意っ」

命令が伝達され、水兵達があわただしく艦内を動く。

艦首にある魚雷発射管にはすぐに魚雷が装填され、バルブが閉じられる。

「一番、三番、魚雷戦用意よしっ」

「艦を停止させろ」

「艦停止っ」

「水平維持」

「水平維持っ」

「発射管開け」

「管開けぇっ」

緊張した空気が艦内を満たす。

訓練では散々やったことだ。

しかし、その時は標的艦には人はいなかったが、今から撃つ艦には人がいる。

その違いだけのはずだ。

いやその違いこそが大きいのかもしれない。

それゆえに全員がいつも以上の緊張を感じていた。

岸辺少尉も口の中にたまった唾を飲み込む。

最初はある。

そして、今、帝国と母国は戦争をしているのだ。

その決心が岸辺少尉の口を開く。

「敵艦コース十二の三」

「艦首左、位置二十…距離三千…深度二」

潜望鏡をのぞきながら指示を伝えていく。

その指示は、口伝えで伝えられて艦内に行き渡る。

「一番、三番発射準備」

「発射角度三」

魚雷室から「発射準備完了」という連絡が戻ってくる。

すーっと息を吸い込み、岸辺少尉は命令を下す。

「一番、三番、撃て」

命令が伝わり、間を少しずらして魚雷が二発発射される。

しゅるるるっ…。

魚雷のスクリュー音が響き、その音が段々と小さくなってしばしの間が開く。

沈黙が艦内を包み込み、そして遠くからズンという破壊音が響く。

「命中です…」

伊-400がぼそりという。

そして、鉄がきしむ音と独特の船が沈んでいく音が耳に入る。

「撃沈ですな…」

「ああ、敵艦撃沈だ…」


こうしてフソウ連合海軍潜水艦の初めての戦果が報告される。

しかし、報告にはただ簡単に帝国小型艦一隻撃沈とだけ記されていた。

そして、その日、輸送任務中だった帝国海軍の特務輸送艦リッターラーゼが行方不明となり、捜索し海面に漂う残骸から沈没したと報告されたが、救い出された兵はおらず、原因はわからずじまいだった。

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