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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
第六章 夜霧の渡り鳥作戦

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戦いのあと…  変わる世界

帝国東方艦隊封鎖戦。

フソウ連合作戦名『夜霧の渡り鳥』は、世界に衝撃を与えた。

無名の小国が、疲弊していたとは言え、王国主力艦隊を破って事実上の世界最強の軍事力を持つ国家と噂され始めた大国を破ったのである。

それも圧倒的な戦力と隙のない作戦によって…。

そして、その戦いは、帝国東方艦隊の壊滅と東部重要拠点であったジュンリョー港とその施設の事実上の機能停止という結果をもたらした。

この戦いの情報はあっという間に世界に広まる。

もちろん、帝国は必死になって隠そうとしたものの、それは無理な話であった。

特に東方はフソウ連合という国が知られて以来、各国の商人たちにとって注目されている地域であり、彼らにしてみれば、情報は金儲けの手段でしかない。

だからその情報を手に入れた商人は、それを売り物として欲しい者に提供した。

それは誰も止められない。

例え、どんな権力や力があろうとも…。

そして、事実を知った六強といわれる列国は、それを危機ととるか、好機ととるかの違いはあるものの、見過ごすはずもなかったのである。

まず、当事国であり、敗戦した帝国の動きは早かった。

戦いの最高責任者であり、東方艦隊の司令長官であったアレクセイ・イワン・ロドルリス大将は本国に召還され、軍事裁判を待つ身となった。

本当なら、軍事裁判などなく、そのまま死刑になってもおかしくないほどであったが、人材不足の帝国ではそれを行う余裕がないのである。

そして、その後任にはロジオン・ヤーシャ・ミドルラス少将が決められたが、帝国ではろくな人材は残っておらず、事実上壊滅してわずか装甲巡洋艦数隻のみしかない東方艦隊の司令官という役職などどう考えても左遷でしかなかった。

だから、派遣されたミドルラス少将がやる気を見せるはずもなく、艦隊の再編で走り回るどころかただ事後処理のみを行うことだけに逸する始末だった。

また、本国艦隊の増強とテルピッツとビスマルクの修理に追われ、予算的にも時間的にも東方艦隊の再編成や補充は後回しにされてしまい、帝国の東部側は事実上の破棄地域となったのである。

もちろん、フソウ連合との戦争は継続中ではあるが、王国との戦いも続いており、打てる手があまりにもなくて、終いには一部からは王国がフソウ連合に取ったように休戦や講和をすべきだという話も上がる始末であった。

つまり、今、帝国は大きく動けなくなってしまったのである。

次にフソウ連合の同盟国である王国だが、この情報に、国はお祭り騒ぎとなっていた。

ネルソン級大型戦艦の譲渡を受け一週間もしないうちにこの情報が広まったのだ。

民の熱気が冷めないうちに、燃料を追加された様なものである。

それを考えれば、そうならないほうがおかしいのかもしれない。

そして、それは休戦、或いは講和という決断が実に正しいものであったという事を示す結果となった。

つまりアッシュ派にとっては朗報であり、確実に王国内での勢力を拡大させる要因の一つとなったのである。

特に、民や軍部からの支持が高く、それを反アッシュ派の中心である貴族達は軽視できなくなりつつあった。

その為、議会での彼らの発言力は弱くなっていく。

そして、それにあわせて持ち上がったのは、フソウ連合への新造戦艦の発注の話だ。

これは同盟と同時に上がった話ではあったが、一部の貴族達によるフソウ連合製の戦艦の性能を疑う声があったため、議会で止まっていた話だった。

だが、戦力回復を急ぐ軍部と今回の結果より、急遽推し進められる事となる。

発注数は、フソウ連合が提案したドレッドノート級戦艦六隻と修理補修を行う専門の補修艦一隻、それにネルソン級やドレッドノート級戦艦用の専門輸送艦三隻の合計十隻となった。

王国としてはネルソン級の増加を望んだが、価格的に折り合いがつかないのと使いにくさが指摘され、最終的には最初に提案されたドレッドノート級に落ち着いた。

特に大きかったのは、整備や補修もドレッドノート級の方がしやすく、王国内でも十分に対応できる事だ。

(最初希望したネルソン級はフソウ連合でしか修理補修は出来ず、弾薬にしても専用の物を使用するため兵站的にも費用的にもあまりよくなかった)

また、急に進められたのは、帝国の勢力の低下の間に海軍の再編と失った戦力の回復に専念するためでもあった。

それと同時に二国間の軍同士のつながりの強化だけでなく、文化交流といった民間での繋がりも一気に話が進んだ。

中には同盟調印した十月二十九日をフソウの日とする提案まであったが、もっともこっちは皆に苦笑されスルーされてしまったようだが…。

また、王国内だけでなく、王国の植民地でも今回の戦いの余波があった。

戦争相手の負けに、これをビジネスのチャンスと感じた植民地で利益を得ている多くの商人が動き出したのだ。

そういう事を考えれば、今回の戦いで、国際的に一番動きを見せたのは王国だといっていいだろう。

それほど、王国内だけでなく、フソウ連合との二国間、さらに王国の植民地での動きは活発となっていった。

そして、六強の他の四国も少なからず動きを見せた。

ただ、その動きは、大きく分けて三つに分けられる。

一つは、フソウ連合という国に危機感を持ち、敵対的な行動をとる国だ。

反王国で帝国との友好的な関係を持つフラレシア共和国がそれに当てはまる。

情報を請けて、共和国はより正確な情報収集に努めると共に、帝国の支援と最寄のフソウ連合に近い植民地に、艦隊の派遣を決定する。

また、フソウ連合だけでなく、王国にも揺さぶりをかけるために、軍の動きを活発化させた。

次に、上げられるのは中立を保ち、情報収集に徹する国だ。

ポルメシアン商業連盟やドクトルト教国がこれに当たる。

この二カ国は、情報を集めつつ、判断保留といった感じで静観している。

そして最後の一つが、これをチャンスとし、フソウ連合と友好的な関係を持とうとしている国だ。

その国は、元々は王国植民地の一つであったが、五十年前に独立して一大勢力なったアカンスト合衆国である。

特にフソウ連合の近辺に植民地を持たない為、敵対する必要がないのが大きかった。

この戦いの結果を受け、議会はフソウ連合に使者を送る事をすぐに決定し、同時に条約の締結を視野に入れた話し合いの場を持つ事を決めた。

その動きはとても早く、議会決定後の二日後には、三隻の装甲巡洋艦を護衛として使者を乗せた客船を派遣した。


こうして、一つの大きな戦いにより、世界はより大きく動き出そうとしていた。

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