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異世界艦隊日誌  作者: アシッド・レイン(酸性雨)
序章

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始まり…

「よしっ!!」

僕は拳を強く握り締めると小さくガッツポーズをして、満足感と充実感に満たされた歓声を上げていた。

まぁ、それは仕方ない事なのかもしれない。

コツコツと作ってきたものが一旦とはいえ完成したのだ。

物を作るという行為を行っている者ならばわかる感覚である。

実際、目の前に広がる光景は最高の一言だった。

挿絵(By みてみん)

畳二十五畳以上の広さを持つ部屋いっぱいに広がる海と1つの大きな島と小島によって構成されたジオラマが広がっているのだから。

そして、その大きな島は台地のようになっており、コの字のようになった奥の部分には大きな港とドック、その傍には工場やコンビナートが並び、島の北側には空港、その下には街が広がっており、また、島の周りは切り立った崖の様になっているものの、いくつかの小さな港があり、島の淵には砲台や見張り用の監視所が並び、この島が一大軍事拠点である事を表している。

しかし、それ以上に圧倒的なのは島の周りに配置された軍艦たち、ウォーターラインシリーズをはじめとする1/700の洋上の姿のみで構成される規格の模型たちだ。

艦船の模型としては世界で一番ラインナップが豊富で、コレクションするのに最適なサイズとあいまって未だにどんどん新商品が出ている模型規格である。

もちろん、艦艇だけでなく、ジオラマ用の小型艦やタグボート、それにコンビーナートやクレーン、ドックなどの港各種アクセサリーなども豊富で、想像力が働く限りの情景を大抵再現出来るのではないだろうか。

現に、島の工場やドック、クレーンは、それらのキットやエッチングのものを使用しているし、小型のタグボートなんかをあわせると実に大小二百近い艦船が飾ってある。

ある船は、ドックに……。

ある船は港に……。

ある船は警戒に……。

そして、飛行機や戦車などもまるで役割をこなしている俳優のように配置されている。

まさに壮観な光景だといっていい。

このジオラマに五年の歳月と趣味に使う金のほとんどを注ぎ込んだ。

しかし、一応完成という形にはなったがまだ完全ではない。

二百近い艦船のうち、主力艦となる戦艦、空母、巡洋艦、駆逐艦、潜水艦といった艦船はまだそれほどなく、空母に至っては一隻もない状態だ。

現在完成しているのは以下の二十二隻。


戦艦……大和改(F社製)

高速戦艦……榛名(H社製)、霧島(H社製)

空母……なし

重巡洋艦……摩耶(F社製)、鈴谷(T社製)

軽巡洋艦……龍田(H社製)、最上(T社製)

駆逐艦……宵月(A社製)、秋月(A社製)、冬月(A社製)、初月(A社製)、照月(A社製)、島風(T社製)、早波(H社製)、天津風(A社製)、吹雪(T社製)、白露(T社製)、時雨(F社製)、五月雨(F社製)

潜水艦……伊-16(T社製)、伊-58(T社製)、伊-401(A社製)


つまり、今ここにある艦船のほとんどが支援艦艇であるという事だ。

一等輸送艦、二等輸送艦、掃海艇、駆潜艇、施設艦、高速油槽艦、飛行機救難船、魚雷運搬船、水運搬船、三種類のタグボート、重油運搬船などなど…。

あと、支援艦で大きいのは、以下の五隻。


工作艦……明石(A社製)

特殊給油艦……東邦丸(F社製)、日本丸(F社製)

潜水母艦……大鯨(A社製)

水上機母艦……秋津洲(A社製)


実に多彩で、この模型規格の奥深さを感じさせる。

しかし、なぜ補助艦やジオラマの方ばかりに力を入れていたかというと、まず飾る土台を準備してじっくり艦船を作っていこうという理由からだ。

もっとも、我慢できなくてちょこちょこ合間に作ったのが戦闘艦二十二隻と大型支援艦の五隻だったりする。

そして、今から作る艦船のために1/700の艦船のキットだけで百個前後、飛行機や追加パーツ、ジオラマ用の支援艦船や輸送船なんかのアクセサリーキットを含めれば二百個以上を買い込んで別室に積んで準備している。

また、同形艦で模型になっていないやつも作りたいので艦船の資料も大量に買い漁ってあるし、もちろん、塗料や追加のジオラマを作るための材料も十分に準備してある。

また、ここ以外にも空き部屋はいくつでもあるからそう言った作業をしたり、別展開のジオラマを作ったりするのに問題ない。

最初、父親の遺産としてこの家を受け取ったときは、異様に広いこの部屋や余りにも多い部屋の数にどうしょうかと思ったが、今となってはかえってありがたいほどだ。

「さてっ。明日から時間を気にせずじっくりと作っていくか…」

仕事を辞め、昨日付けできちんと退社となった。

引継ぎも終わったし、もう何も無い。

連絡が来たって無視する。

なぜなら、あの会社にもう未練はまったくない。

給料は安いくせに、社員はこき使うわ、社員はろくなやつがいないわで、まさにブラックと言っていい会社だった。

そんな環境だったから、友人だって出来なかったし、彼女だって出来るはずもなかった。

だから、縁が切れて清々している。

もう時間や周りに拘束される事もない。

収入は父親が残してくれたマンションやアパートの管理で生活していく分は何とかなる。

まさに趣味の為に生きていく準備完了といったところだろう。

これからは、のんびりとやっていくか……。

今までがろくな事に巻き込まれなかった分、エンジョイした生活を楽しもうと思う。


そう、その時まではそう思っていた。

自室に戻り、ふとんで眠りに入るまでは……。


そして、始まる。

その時には予想もしなかった異世界での生活が……。

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