☆3 洋服屋の名前は、『ネックレシュ』 宿屋の名前は『スリーピー』
アグネーゼさんの馬車に乗って、ファーストの街へとたどり着いた。
なんか、違和感を感じて、財布の中を確認したところ、財布の中に入れていた日本円がこの異世界の貨幣に変わっていたことが判明した。
学生証は、消えてなくなっており、その代わり、『冒険者ギルドカードFランク』『商業ギルドカードFランク』などなど、各ギルドのカードが代わりに入っていた。
神様、ありがとうございます。
アグネーゼさんに質問して分かったことは、〇〇ギルドカードが身分証として使えるということ。
ファーストの街の門番に、入門料と冒険者ギルドカードを見せて、無事街の中に入ることができた。
入門料は500円ほど、高いな。安いのか?
アグネーゼさんは、馬車料もとられていた。
馬の街中での馬糞や、通路の舗装代にあてられるそうだ。
貨幣の価値が分からなかったが、アイサイトを発動し、大きめの銅貨を見ると100円と表示された。便利だ。
門を通り、街中を進んでいく。
大きめの商店街の終わり付近まで進み馬車は止まった。
「ここが、私の店さ」
『ネックレシュ、アグネーゼてん』を書かれたお店を指差すアグネーゼさん。
馬車を降りた。
アグネーゼさんに連れられて、店内に入ると2名の女性店員さんが出迎えてくれた。
「お帰りなさいです。店長」
Tシャツを畳んでいた手を止め、アグネーゼさんに声をかける店員さん。
「そちらの方は、お客さんですか?」
女性の店員さんが、俺の方をみてアグネーゼさんに聞く。
「街に帰ってくる途中で出会ってね。乗せてきたんだ。どうだい。精巧な作りのネックレスだろう?」
頷く店員たち。
ネックレスを譲ってくれと馬車の中で言われていたが、日本製のネックレスはこの異世界では精巧な作りのようだ。
「何か、買っていきます」
女性ものの服がメインのようだが、男性ものも少ないながら置いているようだ。
値段も、そこまで、高くなくお手軽価格。
良かったー。バイトの給料でてから、全部降ろしておいて。
高校生になり楽しみにしていたことは、自由に使えるようになるバイト代だ。
初めてひと月ということもあり、そこまで稼げなかったが5万円弱のお金が財布の中に入っている。
シャツ、下着ズボン、くつした、くつ、タオル、ハンカチ一式を3セットと春夏用のコート?ローブを購入した。
装飾品はとりあえず、もったいないかな?と思い今回はやめておくことにした。
ネックレスやペンダント、指輪に、ストールなどなどあった。
女性ものの装飾品、いわゆるアクセサリーが多かった。
「えっと、宿屋は……っと」
アイサイトを使い宿屋を探す。
視覚強化は、透視能力のようなものもあるようで、建物があっても関係ないみたいだ。
高性能。
「5店ほどあるな。えっと、1泊3000円から~10000円か」
宿屋の外に出ている看板に書かれている値段を確認する。
一泊10000円は高いな。
とりあえず、中間のところにするか一泊5000円ね。
「また顔を出しますね。ありがとうございました」
アグネーゼさんに別れの挨拶をして、店の外へと出た。
歩くこと10分。目的地である宿屋に着いた。
ネックレシュ店と近い距離にあった。
宿屋の名前は『スリーピー』
眠くなりそうな名前の宿屋だ。
木造の宿屋で、2階建て。
馬車を3台ほど止めて置ける広めの庭もある。
「お泊まりですか?」
馬をブラッシングし、きれいにしていた手を止め、クルミ色の女の子に声をかけられた。
アイサイトで確認。この宿屋の従業員みたいである。14歳
「はい」
「ドアを開けてもらって、まっすぐ進むと受付があります」
「分かりました」
女性の言われた通り、ドアを開け中に入る。
まっすぐ進むと、教えてもらった情報通りで、受付がある。
1階は、お食事処のようでテーブル席と、2階へと続く階段が見える。
2階の1人部屋は、シングルのベッドと、机とイス。クローゼット、ミニタンスがあるようだ。全て木製。
「いらっしゃいませ。お泊りですか?」
受け付けにいたさっきの女の子と同じ髪色の女性が声をかけてきた。
28歳のようだ。さっきの女の子のお母さんのようである。
28歳と14歳ということは14歳で出産か。早いな。
「1泊、銀貨5枚で大丈夫ですか?」
一応聞いておく。
「その通りです。1泊、朝食・夜食付きで銀貨5枚です」
「とりあえず、1泊お願いします」
銀貨5枚をアヴァさんに渡す。
アヴァさんは受付付近に置いてあった、宿屋に泊まっている者たちの名前の書かれた宿帳らしきものを俺の前に置いた。
羽ペンと黒色の墨汁のようなものを差し出してきた。
「ここに名前の記入をお願いしますね」
えっと、指先強化。書けるかな?
名前がスラスラと宿帳に書かれていく。
神様、ありがとうございます。
「コザクラ ユキトさんですね」
どうやら、間違ったことを記入していないようだ。
一安心。
「苗字があるって言うことは、貴族様ですか?」
「いえ、貴族ではないです。自分のいた国では、平民でも苗字があるんです」
騎士なんかは、苗字がある者がいたが、街中にいる者は苗字がいないものが多かった。
異世界だからだろうな。
「そうなんですね。では、これが部屋の鍵です。無くさないようにしてくださいね。部屋は2階の1番奥です。それと、トイレと食事は1階です。食事の時間は雰囲気で来てくださいね。良い香りがしているからと言って来ても仕込み中の時があるりますからね」
アヴァさんは、笑いながらそう言って部屋の鍵を俺に渡した。
階段をあがり、部屋に着いた。
鍵穴にカギを差し込み、部屋に入る。
アイサイトで確認していた通りの室内だった。
「ふぅうー」
机いわゆるテーブルの上に果実の入ったエコバックと購入した品々を置き、ベッドにダイブする。
結界を張っているため、俺の服や身体は目に見える汚れは付着していない。
真っ白なベッドシーツを汚すこともないため安心。
「ZZZ」