☆25 バビる
結局、多重結界について、解決することなく午後を迎えた。
口出しするのも、あれかなぁーと思ったので、いくつか案が浮かんだが、言わなかった。
持ってきていた、お弁当をお昼に食べて、授業の行なわれる運動場へと向かった。
「みなさん、こんにちは。授業を始める前に、特別講師の方を紹介します。私の先生の、ユキト・モフモフ・コザクラ先生です」
なんか、フルネームで言われると恥ずかしいな。
特に『モフモフ』の部分笑
「よろしくおねがいします」
生徒たちに、頭を下げる。
見知った男の子(リッシュ君)がいたので、軽く手を振っておいた。
気づいたリッシュ君が俺に軽く頭を下げる。
「今日は、アップルンを結界で包む実技です」
みんなが地面に置いたアップルンを結界で包もうとする。
総勢3名の6年生の生徒を見る形になる。
結界科は1年生~6年生を含めて、10名ほどしかいない。
かなり少ない。
「リッシュ、未だできないのか?」
1人の生徒が、リッシュ君に声をかける。
次々に結界を完成させていく生徒たち。
リッシュ君だけは、なかなかできないようだ。
「いったん。休憩しようか」
俺は、リッシュ君に近づいた。
「いえ、大丈夫です。まだやれます」
やる気は十分のようだが、やり方が悪いと思う。
「ティアラさん。リッシュ君少し借りますね」
リッシュ君を連れて、他の生徒と少し距離を取った。
「リッシュ君は、ティアラさんに似ているね」
「僕が、ティアラ先生に似ている?似ていませんよ。ティアラ先生は才能がありますが、僕にはありません。結界もたまにしか張れない落ちこぼれです」
そう言って、少ししょげるリッシュ君
「結界包囲。この結界を触ってもらってもいいかな?」
「はい……。えっ!?柔らかく弾力がある。なんで?」
「結界には2種類あって硬いのと柔らかいのがある。ティアラさんとリッシュ君は柔らかいの向きだよ」
「なるほど」
「やわらかい結界を意識してもらってもいいかな。それと、呪文の言葉の硬いという部分を柔らかい、硬化の部分を柔化と言い換えてみて」
アップルンを地面に置く。
2分経過した後に、アップルンを球体の結界が包み込んだ。
「でっ、できたよ。先生」
抱き着いてくるリッシュ君。
「じゃぁ、次の段階に進もうか」
「次の段階ですか?」
「多重結界笑」
「でっ、できませんよ。ティアラ先生しかできないんですよ?ほかの先生たちもできないのに」
「大丈夫大丈夫。それじゃぁ、身体の力を抜いて、リラックスして」
「はい。分かりました」
「まだ、硬いよ」
身体に力が無意識に入っているようなので、コチョコチョしてみた。
「ちょっ、やめて、やめてくださいよ」
力が程よく抜けたところで、結界魔法を使う際の構えの右手を俺の右手で優しく包み込む。
そして真っ直ぐに伸ばしている手を曲げ、左手も同じようにして、右手と左手で円形になるようにする。
多分、魔法はイメージが大事であり、そして、それを行う所作が重要なのだと俺は解釈した。
結界は、どこから、攻撃を受けるかわからない。それを維持するためには、真上からの結界の見た目、下からの結界の見た目、右下右上斜めなどなどの複数の目線から見るべきだと思う。
「このまま、リッシュ君呪文を続けて」
「でっ、できた。」
無事に、多重結界を完成させたリッシュ君。
「じゃぁ、解除してみようか」
「はい」
「それじゃぁ、もう1回、同じ要領でやってみて。違う点は、最初から構えを両手で球体を作る感じにしてみることかな」
「分かりました」
最初の授業の始まった時よりも、ルンルン笑顔のリッシュ君。
そのあと、ティアラさんと他の生徒が俺たちのところに来るまで特訓を重ねたが、リッシュ君の多重結界は成功しなかった。
落ち込むかと思ったが『練習あるのみですね』と笑顔の様子のリッシュ君。
スターチありがとうございましたと昨日にも言われたが、授業の最後に再度お礼を言われた。
誕生日の妹にスターチをプレゼントしたようだが、喜んでくれたみたいだ。
~帰宅~
「お待たせしました」
ティアラさんが帰ってきた。
先に俺だけ、帰宅していた。
結界について書かれた家宝の本を持ち出してくるとか何とかで、ティアラさんは1度、実家の王城へと帰っていった。
「お帰りなさい」
「これですわ。ユキト先生」
「へぇー。どこでも結界か」
なんか、水色のたぬきがドアをくぐる絵が表紙に描かれており、『どこでも結界』と言葉が書かれていた。
わかりやすい
「読めるんですの?」
びっくりした様子のティアラさん。
うん。だって、これ、丸っ切り日本語だからね。
本を読み進める。
「この文字が、読めているってことは、あなたも日本人かな?この本読んで、勉強するといいよ。この『どこでも結界』、まじバビる(すごくびっくりする)からね」
バビルの意味が解らなかったため、アイサイトで確認した。
昔のギャル言葉のようだ。
他にも、日本人がこの異世界にいる?いた?ことにびっくりした。




