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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
幕政改革<前篇>

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大坂城代からの密書

明和7年11月9日 江戸 新橋 有坂民部邸


 老中を通した朝廷工作は結論から言えば上手くいかなかった。朝廷(お歯黒)曰く、「商人のすることなど一々知らぬ、商人を統制することも出来ぬお武家の方々に政治をお任せするのは不安でおじゃるなぁ」と嫌味を言われたそうだ。


 まぁ、端から期待などしていなかったし、お歯黒共が一筋縄ではいかないのは常識と言っても良いだろう。連中からすれば商人たちの動きなど気にも留めないし、幕府にとって不都合なら高みの見物を決め込むのも例の如しだろう。


 とは言え、期待はしていなかったが、幕府の目が届かないところで好き勝手されるのはやはり気に入らない。なんとか手を打ちたいものだと思っていた初冬である。


 そんな折に大坂城代である関宿藩主久世大和守広明殿から書状が届いた。


 本来、大坂城代は職務上、西国で変事が起きれば独断専行が許されている。故に、何かあれば江戸へ伺候することもなく問題解決を図れるシステムであるのだが一体何ごとであろうか……。


「なぁ、結奈?」


「なんですか?またお出掛けですか?」


「そんな気がするんだよねぇ……。なんとか回避できないかな?」


 開封する前から夫婦揃って面倒臭いソレを感じている……。恐らくは婉曲に上方に出頭せよという内容だろう……。


「無理でしょうね。お断りしても、老中方から正式な辞令が出て出張を命じられるでしょうし」


「仕方ない……開封して読むだけ読むか……」


 諦めて開封すると長州の地図が入っていた。その地図に示される朱で引かれた線とその位置を見ると驚くべきことが記されていることに気付いた。


「旦那様?……おかしいですね、地図しか入っていませんね」


「いや、久世大和守殿は情報漏洩を最低限に抑えるためこれしか送ってこなかったんだろう……しかし、これは……うーむ……」


「ここは秋吉台の当たりね?」


 秋吉台……恐らくは多少の誤差がある……その誤差が示すところ……そして朱引の始点と終点から考えられるに……大嶺炭田と積出港である仙崎……つまり、炭鉱鉄道ということだろう……。


「先の長州潜入で鉄道情報が手に入らなかったのはこういうカラクリだったのか……」


「どういうこと?」


「長州藩は実験線を確かに都市交通として造ろうとしたんだろう……でも、あの長州征伐未遂の一件で都市間交通に用いるのを取りやめて資源輸送を優先することにしたんだよ……恐らくは……」


「……じゃあ、当初の情報は当時の時勢でダミー化したわけね……」


「そういうことなんだろうね……で、大坂城代は職務上、西国鎮護を任されているからあれからも諜報活動を継続していたんだろう……幕府……江戸とは違うやり方で……」


 結果として今頃ではあるが、ばらばらであった情報が一つに繋がった。そして、長州藩が大嶺炭田を開発し始めていることも判明した。


 砂鉄を事前集積していながら表立った製鉄事業を始めなかったのは準備不足と幕府の察知が早すぎたせいであった……それも今となっては石炭開発が軌道に乗ったか目論見に目処が付いたか……。


「近いうちに長州藩は本格的な製鉄事業を開始するだろうな……製鉄事業が軌道に乗れば……大砲の製造や新型銃の開発なども始めるだろう……仮に幕府の禁令に沿っていたとしても戦力比で考えれば数倍の増強となる……うーむ……」


「旦那様は今まで封印していた鉄製鋳造砲を解禁するの?」


「今はまだその時ではないと思うけれど……だがなぁ……遅くなると不味いし……早まると今度こそ長州征伐になる……」


 困ったことになった……。

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