Another View 田沼意次3
明和6年11月1日 江戸城
老中格、侍従へ昇任し、いよいよ幕政に影響力を行使する立場となった。民部や源内などの活躍もあり、今や老中連は事実上田沼派で固められ、幕政改革の土台は固まりつつある。
民部の示した歴史によると当面の課題は3つであるらしい。
1、明和の大火
2、通貨統一
3、株仲間の設立
民部が言うには明和の大火を利用して、江戸市中の区画整理と災害に強い街造りを行うということである。現在の街路では狭すぎて火災の延焼を防ぐに役に立たないということ、今後の物流や鉄道建設を考慮した幅広道路と鉄道用地確保をするべきとのことだ。
通貨統一は、長年の懸案であるからこれはすぐに取り組むべきだろう。西日本の銀貨と東日本の金貨という通貨制度の違いと変動為替相場というのは国内経済の発展には非常に都合が悪い。これから商業発展を促進させるというのに通貨制度が違ったり、相場が不安定ではどんなに良い経済政策であっても効果が期待できなくなる。
株仲間は、幕府の現金収入確保の手段として、豪商に販売特権を与え冥加金上納をさせ、同時に豪商の統制を図るものだ。既に相良の盃会や越後屋が冥加金上納と引き換えに石炭流通の特権を得ている。今後もこのような形で株仲間からの上納を増やし、年貢米による現物納付を徐々に減らしていき、幕府財政の現金主義化を推進すべきということである。
民部は既に品川に貸倉庫株仲間を組織し、加盟した大店から利用料を徴収し、それを元に冥加金として巨額の上納をしている。これにより、幕府財政は大きく立て直され、今年だけで5万両の冥加金収入を得ている。
そう言えば、民部が言うには幕府は財政計画がずさんであり、どんぶり勘定過ぎるという。歳入計画、実歳入、歳出計画、実歳出、決算を出し、財政改革をすべきだと進言があった。確かに、今のままでは場当たり的に幕政改革をしているだけで、財政の長期計画だけでなく、各種事業の予算規模や予算配分なども明確でない。これでは赤字が増えても仕方がない。
やるべきことは山積みである。だが、田沼派で固められた老中連であっても、民部の言うことが理解できているものは居るまい。余が後ろ盾となって、民部の示した財政制度改革をしなければならぬ。




