法螺吹きの領内検分<法螺吹きの誤算>
元々相良油田の高品質原油をメタ情報で知っていたことにしていましたが、知らなかったことに設定を変更しています。そのため、前話も一部を改変しました。
明和4年8月10日 相良油田(予定地)
前日の城代家老三好殿との会見は上手く話がまとまったように思えるが、実際のところは「油田を発見してからもう一度聞いてやる」といったところだ。だが、彼も商人の出、期待するところ大であるのはなんとなく感じられた。あぁ、やっぱり山師扱いなんだな・・・。源ちゃん連れてきたの失敗だったかな・・・。
というわけで、私は源ちゃんと連れ立って、三好殿の紹介で領内の名主の元へ向かい、地区住人の話を聞き、現場へ。
「有坂様、平賀様、このあたりが草水の湧き出ている場所でごぜえます。」
あれ?おかしい。石油ってのはもっと黒いものの筈・・・。こんな透き通った赤褐色だっけ?待てよ・・・。これってガソリンとか灯油とか軽油・・・軽質油なんじゃ・・・。
「源内さん、ちょっと予定外の事態が発生しました。」
「どうなすった?」
「いえ、元々の話では、蒸気機関の燃料に重油を用いるつもりでしたが、これは重油ではない別のものなのです。」
「違うものを見つけたってことかい?だが、コイツは草水、石油なんだろう?」
「ええ、石油です。なのですが、普通の石油はもっと黒い、粘度の高いものなんですよ。源内さんが知っている草水もそれなんです。」
「確かに草水って言や黒いと聞くねぇ。」
「長岡藩領や久保田藩領などに眠る石油はそういう黒いものですが、ここの石油は・・・どうやらもっと燃えやすい灯油、軽油、ガソリンという種類であるようです。」
「燃えやすいといけねぇのか?」
「燃えやすいだけあって扱いが難しいです。気化と言って、最悪、油に火をつけなくても、燃え上がることもあります。例えば、ここでキセルに火をつければ火だるまになるかもしれないと・・・そう思ってくださればご理解いただけるかと・・・。」
困った・・・。
蒸気機関には扱いやすい、要するに比較的燃えにくい重油を用いるつもりだったのだが、見つかったのはガソリンって・・・。いくらなんでも内燃機関なんて構造知らんぞ。蒸気機関に使うことは出来るだろうけど、取扱が難しくなる軽質油じゃ火達磨を生み出すだけだ・・・。最低でもドラム缶と一斗缶の実用化をしないと軽質油は危険だ。
方針転換して焼玉機関の実用化を・・・いや、200年先の技術はいくらなんでもマズい。そもそも、シリンダーの密閉とクランクケースの造形という問題がある・・・。当然、その強度も・・・。やはり、蒸気機関が・・・。
「・・・さん、有坂さん、おーい。」
「源内さん、これは、一度、意知様と相談しないと不味い事態です。」