頼りになる副官募集中
明和6年3月15日 江戸 新橋 有坂民部邸
長州隠密行における基本方針と調査期間を厄介ごとの元凶に報告し、新橋の自邸に戻って艦隊の出航準備を命じ、自身の出立準備を進め、在府している小倉藩主小笠原伊予守忠総殿に艦隊の洞海湾碇泊の許可申請を行い、暫くの間の領内における行動の自由の許可を合わせて願い出てた。
小笠原伊予守殿は先年からの経済的付き合いで懇意にしていることもあり、一切の自由を認めてくれたことで、長州隠密行が非常にやりやすくなった。
だが、まぁ、当然、ただでくれるほどお人好しじゃない。領内の鉄道事業の指揮とアドバイザーを条件にされた。もっとも、これはこちらとしては非常に好都合・・・なにせ筑豊炭田からトロッコで運搬させれば効率が跳ね上がるからね・・・なので応諾した。路線は門司港~小倉~折尾~直方~田川後藤寺~行橋~小倉の現代と変わらない環状線を構築すればよいだろう。メタ情報万歳。
小笠原家上屋敷から帰宅後、源ちゃんを呼び出した。出張中における事業の指揮を執ってもらわないと色々と困ることになるからだ。
「民部様、お呼びにより罷り越しました。」
源ちゃんが来た・・・のは良いのだが、最近は畏まった感じで非常に好ましくない。
「源ちゃん、それ、やめない?源ちゃんは家臣ではないんだしさぁ。」
「オレっちもそう思うが、そうは言うが示しは付けねぇとな。」
無駄だからやめてくれと言うに。
「二人でいるから気にしない。無礼講。OK?」
「桶桶。わかった。で、オレっちを呼び出してなんでぇい?この間の長崎遊学で色々と思いついたものがあってよ、発明で忙しいだぜ?」
今更思い出したけど、本当の歴史では今頃エレキテルで遊んでる頃だもんな。歴史の修正力は一応働いているんだな・・・その割には他のところの修正が追いついていないのはなんでだよ・・・。
「一ヶ月程、江戸を留守にするから、大江戸鉄道の社長代行をして欲しい。いつもやってるから大丈夫でしょう?それと、川越藩との折衝も夜露死苦。」
「総さん、一ヶ月もどこに行くんでぇい?鉄道事業で忙しいって時に・・・。」
「長州・・・行きたくないけど、御城に居るどこぞのオッサンどもに嵌められた。」
「それはご愁傷様。えらく気に入られたもんだ。」
要らねぇよ。代わってくれ。
「そういうわけで、一ヶ月、小倉を拠点に長州の動きと情勢を調べるから頼むわぁ。」
「頼まれるの構いやしねぇが、オレっちは奉公構で大名家は元より旗本にも仕えることは出来ないぜ?」
「だから、大江戸鉄道の社長代行だよ。これは私企業。でも、実体のない鉄道奉行の謂わば本体。だから、グレーゾーン。鉄道奉行の業務請負だから大丈夫。」
「わかった。オレっちに任せな。後は上手くやっておこう。」
「宜しく。引き継ぎの資料は執務室にあるから・・・って言ってもだいたい把握しているから必要ないか。」
「おうよ。じゃあ、オレっちは執務室に行くよ。総さんも気をつけてな。」
そう言って源ちゃんは出ていった。面倒事を押し付ける役が彼しか居ないというのもやっぱり問題だなぁ。
誰か適当な副官とかどこか落ちていないものかねぇ・・・。




