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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
関東周旋

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江戸の改造

明和5年8月15日夕刻 江戸城神田橋門内 田沼邸


いい加減、本社機能をどうにかしないと面倒なことこの上ないと思っているが、そんな適当な物件を簡単に見つけられるわけでもない。


江戸城に近い場所は基本的に各藩の上屋敷が所狭しと並んでいる。現代で言えば、東京駅前の辺りなんかはほぼ全部大名屋敷。で、八重洲口の辺りには元々堀があって、そこを境に町人地、商業地区になるのだけれど、ぶっちゃけ、この暑い時期に徒歩で日本橋界隈や築地、芝、品川なんて行きたくない。


そりゃ、神田橋門から汐留・築地までなら一里だから一時間で着くけれど・・・。


相良のコンパクトな街が意外と便利だったと思ったよ。それに馬車鉄道で高頻度定時運行させてるという理由もあるけれどね。


この時代の江戸って世界最大の人口を誇る巨大都市でこの時点でも150万近くだったはずだ。町人その他120万、武家30万という内訳らしい。国内主要都市の総人口は大坂が同時期に41万、京都が37万と。1801年の初の国勢調査での欧州のそれによるとロンドンが86万、パリが55万であるというのだから、どれだけ巨大人口、巨大市場であるかよく分かる。


だってのに、交通インフラが弱いもんで兎に角無駄が多い。


私が登城できるならばさっさと交通インフラなんとかしろと要求できるんだがなぁ・・・。


と、頭を抱えているそんなところに訃報が入った。意次公から指示されている川越藩であるが、藩主松平朝矩殿が逝去されたそうだ。


まぁ、これも予定通りだな。予想される代替わりの多忙な時期に話を持っていく必要はないから、敢えて放置していたが、これで条件は整った。年末あたりを目処に川越藩へのテコ入れをやるとしよう。


取り敢えず、意次公に面会して今後の方針を話さねばなるまいと意次公の部屋へ出向く。


「意次公。有坂、火急の用件にて罷り越しました。」


「なんじゃ?」


「相良に比べまして江戸の交通が些か遅れを取っておりますれば、江戸に馬車鉄道、ゆくゆくは蒸気鉄道を走らせとうございます。その取次をお願いいたしたく。」


「国元の井上からの書状で聞いておるが、便利であるそうじゃのう?」


「城下の主要地に駅を設けまして、駅間を短時間で行き来できまする。例えば、ここ神田橋から築地までならば、徒歩で半時程度掛かりますが、馬車鉄道ならば四半時も掛からぬと思われます。勿論、路線設定でこの時間も変わってまいりますが、幸い江戸は碁盤状に街路が設定されておりますので非常に効率的な運用が可能かと。」


本当は道路の拡幅も一緒にやれると良いのだが・・・。


「ふむ。」


「なにも最初からあらゆる場所にとは申しませぬ。大手門と日本橋、日本橋と新橋、新橋と品川までの三本で構いませぬ。これだけあれば、当面事足りまする。」


新橋と品川は蒸気鉄道への移管を検討しておけば良い。江戸市中よりも簡単に操業できるだろう。


「相分かった。上奏してみよう。所管は老中配下の普請奉行であるが、上手くいけば新設の鉄道奉行にでもして独立させても良いだろう。」


幕府版の鉄道大臣とか浪漫すぎるだろう。ぜひとも設置してもらえるようにしないとな。


「ありがたき仰せ。問題は、籠引きと全面対決となりますが、籠引きには別の仕事が増えると説得すれば良かろうかと存じます。鉄道は線路の上しか走れませぬが、籠は何処でもいけます。言い換えれば、鉄道を降りた客を任意の場所へ運べばよいのです。」


「良かろう、老中連には左様に伝えておこう。」


「では、これにて失礼仕る。」


これで、品川から歩かなくて済むようになるし、籠に乗らなくて良くなる。あれ、狭いし、揺れるし、乗り心地が悪すぎだ。あんなもんより、高頻度運転する鉄道が拡充されれば便利になるのだから、商売敵にすらならんさ。一度に運べる人数も増えるし、その分運賃も安く出来る。


まぁ、ぶっちゃけた話、歩きたくないという私的願望による公私混同だがね・・・。

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