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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
それぞれの思惑

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Another View 平賀源内

明和5年2月1日 夕刻 盃会 平賀源内執務室


総さんが盃会本部に相良財界を招集した。1週間前に田沼様から届いた書状、越後屋と一緒に福山に出張れという内容のそれが関係しているのは間違いない。今回の財界再編による財閥化は、以前の相良4社設立の一件の延長線であるのは関わっただけに理解できるが、些か急なことだっただけに少々困惑した。


年末辺りから頭を抱えて悩んでいた総さんがあれだけ吹っ切れたのは結奈殿のおかげだろう。同じ時代に生きた者同士の方がオレっちよりも遥かに理解し合えて適切な相談者なのだろう。それはそれで寂しい気もしないでもない。半年の間、総さんと二人三脚で相良の発展に取り組んできた相棒だからなぁ。


盃会での会議に先立って、総さんから今後の展望を説明されたが、その時の提案に驚かざるを得なかった。そう、総さんはオレっちに讃岐高松藩に協力するように説得しろと言ってきた。オレっちは高松藩から奉公構いで事実上の絶縁されてるって忘れてねぇか?田沼様経由で書状を持たせると言ってきたが、上手くいくもんかねぇ?


その提案ってのが曲者だ。越後屋は、総さんが唆した福山藩の半官半民の製鉄所みたいなものを全国に展開するだろうと総さんは言う。その可能性は非常に高いだろう。越後屋も大名貸で焦げ付いている資金を回収できるとともに運用益を得ることが出来るだろうという説明も納得できた。それへの対抗策として、越後屋に先んじて有力親藩と田沼派雄藩を固め、そこに相良同様の殖産興業をさせ、基礎国力を増強する。その一環として瀬戸内で西国大名に睨みを効かせる讃岐高松藩を口説けということだそうだ。


確かに北九州との航路の途中にある高松は途中寄港するのに最適だ。また、供給過剰な石炭の販路として塩田も活用できる。越後屋や大坂商人への牽制にもなる。だが、これには別の意図があるようだ。


オレっちが説得すべき相手として明示された讃岐高松藩、美作津山藩、出雲松江藩、いずれも親藩の中でも大藩である。恐らく、松江藩には反射炉でも造らせるつもりだろう。あそこには砂鉄が豊富にある。しかし、津山藩ってのがよくわからない。海路連絡できないんじゃ、我々にはあまり利益がないのではないだろうか?だが、津山から吉井川を下れば瀬戸内海、高松へ至る・・・。まさか、津山藩領には何らかの鉱物が眠っているのではないだろうか?なるほど、そう考えれば、津山藩には利用価値が生まれる・・・。


面白い。相良藩2万石が海運と鉱物資源の統制で瀬戸内経済を牛耳るという寸法らしい。これは随分と思い切ったことを考えたもんだ。だが、これには蒸気船の就航が前提条件になりそうだ。特に津山藩の件には川船の蒸気化は必須だろう。そうでなければ、陸路を搬送しないといけない。その場合、鉄道を建設する必要がある。いずれにしても、蒸気機関が鍵だ。


まったく、人使いが荒い。んじゃ、オレっちも蒸気船の建造に発破をかけるか。

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