許婚(仮)
明和5年1月1日夜 相良城下 有坂邸
不承不承ながら、周囲の説得という名の下に私邸へ強制送還された。勿論、あいつ、結奈も一緒だ・・・。なんでこんなことに・・・。
「結奈、なんで、こんなとこに居るんだ?」
「なんで、って、知らないわよ。それにどっちの意味よ。この時代にって意味?それともココ有坂邸にって意味?」
「両方だ。」
なんなのだ、なんなのだ、なんなのだ。
「いい加減、落ち着いたら?」
「落ち着くって・・・、源ちゃんから転生者が居るとは聞いていたけれど、なんで結奈、君が転生者なんだ?どうして君が嫁になってるんだ?あーもー。そもそも、結奈は私と結婚だなんてどう考えてるんだ?それすらわからん。」
そう、結奈を伴侶にだなんて考えたこともない。当然だが、前世というか現代でも、そういう関係ですら無かった。それが、だ、嫁だぞ?嫁。意味わかんない。意次様って呼ぶのも忌々しい、あのオッサンが寄越した書状で、それらしいことは書いてあったさ。あぁ、そうさ。知っていたさ、娶れってな。だがな、いくらそこそこ美人な部類に入る彼女であるとは言えど、ハイそうですかっていくか?普通・・・。
「総一郎さぁ、あなたこそ、どうしたいの?」
「どうしたいって・・・。」
「不満?」
「不満はないよ?恐らく、結奈は今も料理の腕は大丈夫なんだろうし、家事もこなせるだろうしね。さすがに家電がないから苦戦するだろうけど。」
「じゃあ、いいじゃん。」
「いや、待てよ。良いのかよ?不満くらいあるだろう?」
「あるよ?時代劇オタクの嫁になれとか、どんなプレイよ?」
「今、それ関係あるのか?」
「んー、ないね。でも、知ってるの、あなたくらいだし、なんでも相談出来る相手がそばにいるのとそうじゃないのじゃ、ぜんぜん違うでしょ?」
「そらぁなぁ・・・。」
「ほら、以前の私達となんにも変わってない、ただ、関係が親友?悪友?から夫婦になるだけだよ。」
「なるだけって、だいぶ違うだろう?」
「四の五のうるさい。」
「あぁ、わかったよ。私にとってデメリットはないからなぁ。メリットは結構あるし、結奈の作る飯はうまいからね。」
「私は家政婦なのかしら?」
「頼んだ覚えはないけれど、いつの間にか合鍵造ってるし、飯作りに結構な頻度で入り浸っていたのはどちらさまで?」
「・・・、さぁ?誰かしらね?」
ぅおい・・・。
こんな感じのやり取りがあって・・・、うん、いつの間にか丸め込まれていた・・・、なんでこんなことになったのかわからない・・・、だが、気付いたら、結奈は許婚=正妻というポジションを確立していた・・・。一体どこで選択肢を誤ったのだろう・・・。




