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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
邂逅

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第二の転生者<1>

明和4年12月25日 盃会総裁執務室


時は約2ヶ月遡る明和4年10月30日、相良領内。丁度、私、有坂総一郎が江戸で福岡藩と小倉藩に周旋活動をしていた頃である。


相良藩領内でも有数の豪農・・・まぁ、庄屋・名主だね・・・である神庭家に平賀源内、源ちゃんが領内の地質調査の途中に立ち寄ったそうだ。


縁側で休憩することにした源ちゃんがたまたま近くに放り投げてあった書籍をめくってみると最近特に目にすることが多い楷書で書かれたものだったそうだ。この時代の書籍にしても書状にしても基本草書体だから、楷書は極めて珍しい。


源ちゃんの周囲で楷書でものを書くのはぶっちゃけ私だけだ。もっとも、私宛の書状や報告書は皆楷書で書かれているけれど。


というわけで、源ちゃんは非常に興味を持ったそうだ。楷書でものを書く人物に会わせて欲しいと神庭家の家人に言ったそうな。


まぁ、源ちゃんは、楷書だけに注目したわけじゃない。その書籍は農業技術に関するものであった。たまたま目にしたところが丁度稲作のページだったそうだが、源ちゃんの話を真に受けるならば、それは現代の保温折衷苗代そのものだった。これ、戦後の技術なんだわ。驚いた。


源ちゃんはその真の価値をその場では理解していなかったようだ。まぁ、彼は山師・技師の類だから、農業に詳しいわけじゃない。わからなくて当然だろう。だが、価値を理解していなくても、その時代の技術ではないのは源ちゃんでもわかることだし、そもそも楷書なんて使う人間は現代人くらいなものだから、真っ先に私の「お仲間」、つまり、「未来人」を疑ったそうだ。


そんで、源ちゃんはその書籍を夢中になって読んでいたそうだが、半分くらい読んだ頃に呼びつけた相手がやってきたそうな。二度目の驚きは、それが女だったこと。しかも、着ていた服は彼の話から想像するにジャージだった・・・。


そう、彼の推測は当たっていた。


源ちゃんはいくつか現代の話題を出し、彼女の反応を伺ったそうだ。尽く彼女はそれに適切な反応を示したらしい。そして、彼は彼女に核心を突く質問を二つしたそうだ。


「貴女はいつの時代、西暦で言えば何年までの記憶があるのか?」

「貴女は有坂総一郎という人物を知っているか?」


答えは、私と同じ2017年時点の記憶があり、有坂総一郎という人物は同一人物かは分からないが、知っている人物と似ている。というものだったそうだ。


なるほど、私のけっして広いとは言えない交友関係の中にいた人物の可能性があると・・・。一体誰だよ・・・こんなトンデモ世界に飛ばされるような奴は・・・。


彼女の名までは聞かなかった。現代にいた彼女と今の彼女では名が同一ではないだろうから、どうせ、聞いたところで意味がない。


問題はそんな瑣末な事じゃない。この世界には転生者が他にも複数いる可能性があるということだ。特に雄藩と結びつくと危険だ。薩長みたいなテロリスト集団に転生者が居たりしたら、それこそ、倒幕決起しかねん。


この世界、思った以上に現代とリンクしていない可能性が高いと考えた方が良いかもしれない。褌を締め直して掛からないとこっちが殺られる。

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