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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
薩摩藩の企みと偽神託計画

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222/266

風林火山……な人生?

安永2年5月23日 江戸 新橋 有坂民部邸


「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山……」


「何をおっしゃてますの?」


「いや、武田信玄が死んでから今年って丁度200年なんだな……って思ってな……」


「武田信玄ですか?」


「あぁ、1573年5月13日……あぁ、これは太陽暦での没日だけどね……太陰暦だと4月12日だっけかな、今日は1773年5月23日……」


「全然命日でも何でもないですわね」


「いや、ふと思い出したんだ。そこは突っ込まないで欲しい」


 本当にたまたま思い出して、風林火山の一節を唱えただけなのだ。


「それで、風林火山がどうしたのです?」


「いや、この時代に転移してからの人生を考えると、風林火山の様だなと……」


「どこがですの?常に疾如風と侵掠如火ばかりじゃありませんこと?」


「徐如林もあっただろう?」


 まったく、この嫁は旦那に甘いくせして妙なところで厳しいらしい。


「旦那様が大人しくしていた時期などこの5年間一度もなかったと記憶していますけれど?ええ、そうですとも。遠州相良に明治村を作り上げたのを手始めに、江戸はいつの間にか明治時代に突入しているし、今年中に戦艦三笠が横須賀沖に浮いていても私は驚かないと断言できますわ……まさに疾如風そのものですわね」


「いや、まさか、そこまでは考えてイナイヨ……」


 すみません、出来るかどうかあまり自信はないけれど、旋回砲塔の軍艦を検討していました……。バレていたんでしょうかね?


「その上、いつの間にか種子島銃の先を行く現代銃を量産配備していて、その初陣に旦那様自ら最前線に出るという所業、日本の海運を蒸気船とクリッパー船で牛耳る所業も侵掠如火そのもの……少しは徐如林、不動如山を覚えていただきたいものですわ」


「具体的にはどうしたら良い?」


「そうですわね……たまには日本全国の情勢を把握するために手を止めて情報収拾をすること、ざわめきに耳を傾けるべきよ……そして、部下に仕事を任せて総大将らしくどんと構えているべきよ」


「それ、今でもしていない?」


「出来ていないわね……旦那さまは何でもかんでも自分で何もかもやろうとするから突っ走り過ぎるのよ……それでも周りが付いてきてくれるからいいけれど、ただでさえ敵を作りやすいのに……というか、敵を作りに歩いている様なものよね……あぁ、もうどうしたらいいのかしら……」


 なんか匙を投げた……。


「折角だから200回忌でなんかやるか……ついでに勝頼200回忌の顕彰もやって甲信地域の懐柔を進めよう」


「また突っ走るのね……本当に徐如林、不動如山を学んでくださいまし!」

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