交点
明和4年12月25日 盃会総裁執務室
今朝突然相良陣屋から呼び出された。こちとら正月休みに入っとるんじゃ呼び出すな・・・と言うわけにもいかないので陣屋に向かった。
呼び出したのは城代家老三好殿。もっとも、彼はあくまでメッセンジャーでしかないらしい。つまり、江戸からの用件だそうだ。その内容は三好殿も知らないらしく、書状を渡すなり帰って良しということだ。だったら最初から呼ぶな。書状くらい使番に渡してしまえば良いだろうに・・・と文句を垂れながら執務室・・・まぁ、隣室は私室なんだが・・・に戻ってきた。
「なんなのだ、なんなのだ。」
どこぞのツインテールのちびっこの口癖が出てしまった。そういう気分なんだから仕方がない。
そうそう、書状の開封、未開封を一発でわかる封蝋を田沼家では採用させた。コレのお陰で誰が発行したかも特定できるし、偽造なんてしたら一発でバレるから非常に重宝している。
というわけで、封蝋を剥がして書状を開いてみた。以下要約である。
「宛:有坂総一郎、発:田沼意次」
「今度、養女を迎える。そいつをお前にやる。娶れ。以上。」
「追伸、苦情や異議申し立ては認めぬ。」
ということらしい。
あのオッサン、何考えてるんだ?なんかの嫌がらせか?この間の詰問の仕返しか?というか、こんな内容なら態々陣屋に、三好殿を通す意味が無いだろうが。何考えてるんだ、畜生め。
嫁?今、このクソ忙しい時期にそんな暇ないだろう?アンタが要らん真似したせいでただでさえ三井だの住友だのが史実にない動きを見せてるのに、何企んでるんだか。
知らん知らん。無視しよう。無視だ。
「総裁?お客様が・・・。」
なんか来た・・・。
「只今、留守にしております。御用のある方は、一昨日来やがれ、畜生め!」
「荒れてるねぇ、総さん、どうしたい?」
「田沼様が寝言を抜かしてる。あの親父、何企んでるんだか。畜生め。」
「寝言?あぁ、縁談の話か。」
なんで源ちゃんが知ってるんだ?封蝋して陣屋経由で来た書状だってのに・・・。
「この間、ここの豪農のところに顔出したら、面白い娘が居てねぇ、それを田沼様にお知らせしたんだよ。」
「面白いって、どんな?」
「どんなって、総さんと同じ知識を持ってる娘ってことさ。」
なんだって・・・。




