幕府軍、上方へ
安永２年２月５日
京都守護職、京都所司代に任ぜられた会津公、掃部殿はともに有坂海運の船団に乗船。品川より大坂へ向かった。
会津の手勢１５００、彦根の手勢１０００の軍勢と歩兵銃及び大量の弾薬を満載した船団が大坂に入港、彦根勢を先頭に堂々と上陸、会津勢の上陸後、会津公、掃部殿両名の観閲を受け、大坂城へ入城した。
幕府軍の大坂上陸の報を受けた朝廷はすぐさま大坂城へ使者を派遣し、幕府軍の上方派遣の理由を尋ねてきたのである。
会津公は禁裏警護と洛中の秩序維持、公家の統制、西国雄藩の監視が目的であると明確に回答した。しかし、これが朝廷からの使者を激怒させることになった。
たかだか２５００の兵とは言えども、完全武装で近代戦を行った会津と彦根の兵が洛中に目を光らせることは彼ら朝廷、公家にとっては今でも十分に窮屈な状態であるのに、息苦しさを通り越してしまうものにしか見えないからだ。
また、朝廷だけでなく、公家に至っても西国諸侯の援助によってなんとか体面を保っているものが多い中で、このような形で公家と諸侯の交際を事実上認めないと言わんばかりの幕府側の態度に激怒したのは致し方ないと思う。
だが、会津公はそこでこう言ったそうだ。
「朝廷が不穏な動きを取るのであれば、帝より大政を任されている我ら幕府が兵を用いてでも君側の奸を取り除く」
「諸侯が公家と交際し、朝廷へ影響力を望むならば、それは大政を委任された幕府への謀反であると断ずる。ゆえに、先の御謀反が如く、直ちに殲滅あるのみ」
「公家が諸侯を唆し、幕政に異を唱えるならば、それもまた帝への叛意と認識し、これを誅する」
この発言に使者は仰天し、我に返ってこう言い返したそうだ。
「公の言、今余の平氏なり、驕る平家は久しからず」
しかし、会津公は切り返したという。
「我ら源氏の末裔にして平氏にあらず、また、驕りにあらず、法と力によって国を治めるものなり」
それを聞いた使者は顔を真っ赤にして立ち去ったという。
会津公は朝廷の使者が帰った後、兵を再編し、彦根勢５００を京へ先行させることとした。無論、掃部殿が指揮を執る。屯所は二条城。空地である本丸に兵舎を建てることで対応することになる。
二条城の受け入れ態勢が整った時点で会津勢１５００と彦根勢５００を移動させることとなっている。また、これによって大坂城に駐屯する兵が払底することになるが、江戸から旗本や御家人で構成される幕府陸軍２０００を移駐させ大坂軍管区の指揮下に置くことになっている。
また、大坂総督の久世大和守殿は上方において募兵することで指揮下の兵を増やす計画を立てているそうだ。
