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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
新線建設と江戸の大改造

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東海道本線延伸計画

38度の高熱がやっと下がりました……。

更新がいつもの時間よりも遅れましたが、お付き合いください。

明和9年5月3日 大江戸鉄道本社


 明和の大火から2ヶ月、江戸市中の再建も一段落したこの日、東海道本線延伸の測量結果が出てきた。


「次の報告ですが、東海道本線の延伸について……国府津から藤枝までの測量結果が出ておりますが……これは非常に難儀する路線になりそうだとのことです……詳しくは書面にて確認いただきますが、簡単に申しますと総裁の示されました路線計画では、大崩海岸と薩埵峠が大きな障害となりそうです……」


 元々、丹那トンネルは諦めていたので国府津から分岐して御殿場を経由して沼津に至るルート設定をしている。これに関しては勾配が最大の問題であるが、逆に言えば勾配だけをなんとかすれば良いので難易度は低いと言える。


 沼津~由比までの路線は平坦線区で建設は容易。富士川を遡上する形で甲府までの路線建設は勾配が気になるものの建設は比較的容易との報告。


 そして、薩埵峠である。現代でも土砂崩れで東海道本線が不通になっているが、急な崖の下に通っている線区である。国道1号線や東名高速道路などは海に飛び出て建設されている難所中の難所。元々、東海道本線が敷設されている部分は地震の隆起で出来た陸地である。


 ここを越えれば駿府までの障害はほぼない。平坦地をそのまま進み、駿府の外港である清水、そして東海道と並走し駿府に至る。


 静岡から焼津までは2つのルートを想定した。現代の東海道本線、東海道新幹線が通る大崩海岸・日本坂、そして国道1号線が通る宇津ノ谷峠である。どちらも難工事の想定される区間だ。ここは薩埵峠とは同様にいかない……。


「薩埵峠ですが、海岸に護岸を構築し、その内側を埋め立てる形で鉄道用地を確保するということですが、かなりの難工事となりますが、秩父・青梅からのセメント・コンクリートの輸送の目処が経ちました故、可能と判断されます。軽便鉄道による資材輸送を用いれば工期圧縮も可能かと……」


 実際、この区間は海食を防ぐためテトラポットで護岸されている。ならば、予めテトラポットを大量に沈めて、近くから切り出した石材を用いて土台を作り、その上に土砂を流し込んで埋め立てることで必要な鉄道用地を確保する方法を採れば工期が些か掛かってもこの時代の技術水準でも可能だろう。


「なお、相良より藤枝を経由し焼津までは既に相良鉄道が路線を延伸しております。これを用いて焼津側から駿府へ延伸するべきかと存じます。しかし、日本坂を越えるのは容易ではなく長大隧道の建設は現時点では不可能と考えられます。その為、宇津ノ谷峠を切り崩して大築堤の構築により峠前後の勾配を緩和するのが適当かと……」


「ならば、清水港から駿府まで軽便鉄道を建設し、宇津ノ谷峠の切り崩した土砂を薩埵峠の埋め立て地区に輸送させてはどうか?軽便鉄道ならば一月あれば宇津ノ谷峠と薩埵峠の間に建設できるだろう?」


「焼津側も相良鉄道を用いて土砂搬出を行い、藤枝以西の工事に用いるべきではないか?」


 議事進行役の説明に横槍で意見が述べられる。確かに、それなら工期短縮が図れる。


「だが、宇津ノ谷峠を通るとなると、焼津を経由するのは寄り道となるのではないのか?田中城下を経由して直接藤枝を通り、掛川城下へ至るべきだと考えるが如何?」


 確かに宇津ノ谷峠を通って焼津に至ろうとする場合、カーブによる無駄が多い。線路はできるだけ直線で造るのが一番良い。それに焼津までは相良鉄道が走っているのだから無理に焼津に乗り入れる必要もない。


「相分かった。薩埵峠については現行計画で……清水港から駿府、宇津ノ谷峠方面へ軽便鉄道を建設、宇津ノ谷峠の掘削を行い、同時に薩埵峠工区へ土砂をピストン輸送。テトラポットは品川からホッパー船を用いて輸送と設置を行う。宇津ノ谷峠から焼津は経由せず藤枝へ直結させる。それで行こう」


 私の決断に居並ぶ幹部は揃って頷く。


「難工事の連続であるが、この駿府前後の難所さえ乗り切れば他の地区の工事は必ず乗り切れると信じている。諸君の知恵と工夫に期待する」

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