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明日も葵の風が吹く  作者: 有坂総一郎
タイクーンエクスプレス

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将軍専用列車『タイクーンエクスプレス』<6> 日光&鬼怒川温泉

明和9年1月9日 日光&鬼怒川温泉


 東照宮参拝の家治公御一行と日光駅にて別れる。


 日光駅は終着駅であるため、機関車を切り離し、引き上げ線を通り転車台にて方向転換、その後列車の先頭に連結する必要がある。


 家治公の宿泊先は現代で言うところの鬼怒川温泉である。当時、つまり、この時代では滝温泉という。もっとも、この滝温泉も史実同様、宝暦2年(1752年)に発見されたばかりの温泉である。


 この時代、滝温泉は一般に開放されておらず、日光参詣する諸大名や僧侶神官などのみに利用を許された御用温泉である。


 だが、私はそんな勿体無い真似をするわけがなく、鉄道奉行の権限で日光線の建設と同時に温泉街の開発を進めていた。江戸から3時間で到着出来る立地条件を活かさない手はないのである。


 現代では江戸時代村やゴルフ場、世界建造物博物館などがある鬼怒川温泉であるが、目指すところはそれである。もっとも、この時代にゴルフ場を造っても儲からないこと請け合いなので、鷹狩場にして余暇を過ごす大名相手に大金をせしめようと考えている。世界建造物博物館はそのコンセプトをそのまま採用して江戸市中の民相手にするというのも良いと考えているわけだ。江戸時代村は……造っても意味ないからドイッチュラント村にでもしてみようか?


 日光線と鬼怒川線の正式開業と同時に鬼怒川温泉の一般営業を開始し、上野駅から直通列車を毎日1往復させ季節運行という形で臨時便をさらに1往復させる計画である。


 これは鉄道省時代からの伝統を引き継ぐと同時に、現代のJR&東武の日光向け観光輸送を踏襲したものだ。それだけに外れるはずがないと踏んでいる。


 もっとも、日光方面の開発を他の路線開発よりも優先した理由が別にある。そう、電源開発である。


 源ちゃんに依頼している発電機の開発であるが、これが上手く成功すれば水力発電を始めることが出来るのだ。そして、その水力発電に適した土地、それが鬼怒川水系であり、鬼怒川温泉上流の川治温泉付近であるのだ。もっとも、現代においてここにダムが2つあることから選んだわけだが、それだけに地質調査とかある程度省くことが出来る。1ヶ所に2つのダムがあるという事実はそれだけ強固な地盤である証明であり、同時に建設資材の供給が分散しなくて済むということを意味している。


 よって、観光という利益に直結する要求、電源開発という未来への投資という要求の2点から宇都宮から仙台への路線建設よりも優先したわけだ。


 また、電源開発が進むことで内燃機関ではなく、電気推進を実用化することが出来、それによって電車への進化も可能になる。蒸気機関車牽引から電車および電気機関車牽引への進化によるメリットはとても大きい。純粋に速度向上が用意になると同時に(電車の場合)勾配に強くなるし、煙が出ない。山岳線などには重宝する。


 特に今後、関東という平野地帯からそれ以外の地域へ鉄道が延びれば延びるほどトンネルや勾配が多くなる。そうなると蒸気機関車では非力になる場面が出てくる。


 そういう先々のことを考えると先行投資をするのは悪い話ではない。また、鬼怒川水系の水量をコントロールするという水利&治水メリットもある。


 ということを話せる内容と話せない内容をうまく混ぜて鉄道建設会議に提出し、日光線と鬼怒川線は建設されたのである。



「義兄上、お待ちしておりました。思ったよりも早い到着ですね」


「上様が思ったよりも鉄道に夢中になってくれなかったからね……」


 幸太郎が「うわぁ~コイツ、またやりやがった」という顔をしている。


「義兄上についていける水準の鉄道キチガイはそうは居ませんよ……今や社長をやらされている私ですら理解できないコトだらけなのに……」


「上野駅の連中はいい奴らだったぞ?」


 そう、上野駅は駅長以下、助役など幹部クラスは揃って鉄オタ……いや鉄オタになった……いや洗脳した……のに……この義弟は……なんと嘆かわしい。


「あの方々は、義兄上のせいでまともな生き方が出来なくなった犠牲者です……」


「失礼なやつだ……鉄道に線路の上を走る人生をなんと心得る……」


「とてつもなく迷惑な人生だと……お答えしましょう……」


 畜生め……。


「それで、義兄上、態々こんな山奥まで来たのには現場視察のためでしょう?さぁ、物資搬入用軽便鉄道で川治温泉まで向かいましょう」


「しかし、狭いな……」


 大江戸鉄道、幕府直営鉄道は明治の失敗を繰り返さないため最初から標準軌を採用している。同時に鉄道関連に限ってだが、メートル法を採用している。なぜかと言われたら、尺貫法面倒臭いから。


「狭いと言われても、軽便鉄道はこういうものです。そもそも、この軽便鉄道という規格を造らせたのは義兄上ですよ?」


「必要だからな……軌間半分、工期半分、輸送力半分、寿命は……という『走ルンです』規格はこれからどんどん必要になる」


「でも、ここは改軌して標準軌を通すのでしょう?態々二度手間なことをしなくても……」


 わかってないな~とため息をつく。当然、鉄オタではない幸太郎はムッとする。


 標準軌は1435mm、軽便鉄道は762mm(一部600mmなどがある)。つまり、標準軌の単線軌道で軽便鉄道なら複線軌道が敷設できるのだ。単純に輸送力は落ちるが、輸送効率は段違いである。


 工事の為に大量に物資を運ぶためには列車本数か列車の輸送トン数を増やす必要がある、だが、制約がある線区で同じ量の物資を輸送するならば、単線の標準軌よりも複線の軽便鉄道の方が列車本数を増やせることから圧倒的に有利となる。そして、工事が終われば標準軌の単線へ改軌すれば線路の需給バランスを適正化することが出来るし、隣に標準軌の単線を別に敷設して完成後に軽便鉄道を標準軌に改軌すれば一夜城的に標準軌の複線化も出来る。


「ここの線区の重要なものはダムの建設であって、それへの物資輸送、そして完成後には標準軌の単線へ改軌して旅客輸送に対応するけれど輸送密度から考えるとその必要もないかもしれない。だから、現状は軽便鉄道で十分なんだよ」


「利益優先の路線建設をしてきたのに赤字路線を許容するのですか?」


「赤字ってのは赤字になるようなことするから赤字になるんだよ。それに、ここには川治温泉という資源がある。資源があるなら赤字にならないように運営すれば問題ない。廃線なんてさせない」

将軍専用列車『タイクーンエクスプレス』<7>へ続きます。

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