第1幕 『物語の幕開け』
どこにでもあるような部活の合宿になるはずだった。
それなのに、あんな些細な出来事がきっかけですべてが崩壊してしまった……。
ただ、笑いあってた。それだけでよかったのに。
楽しかったあの頃に……。
……もう戻ることはできないのか。
第1幕『物語の幕開け』
――203x年8月某日――
――――ピーポー、ピーポー……。
近くで救急車のサイレンが聞こえる。
でも、もう遅い。誰も、もう助からないだろう。
どうしてこうなったの?
こんな事になるのならあの時起きなければ……。
あの時引き留めていれば……。
何もかも忘れてしまいたい。
……こうなる前に戻したい。
――5月某日――
――事の発端は3か月前に遡る。
――――ピピピピピッ、ピピピ、カチッ
「……ん、もう朝……?」
ふわぁと欠伸をしながら起きたこの少女。名前は如月璃奈。16歳。ごく普通の高校2年生だ。
コンコンッ ガチャッ
「お姉ちゃんもう起きた?今日から合宿でしょ?演劇部の」
この扉をあけながら入ってきたこの少女の名前は如月瑠奈。16歳。璃奈の双子の妹だ。
「瑠奈こそもう起きてたんだね。準備はできてるの?」
「バッチリだよ~!今年はどんなとこだろうね」
「まったく、あんたはエキストラだってこと忘れないでよ。
人数が足りなくなって、それで偶然あんたが時間空いてたってだけなんだから」
今日は演劇部のメンバーでPV動画を撮る合宿に行くことになっていた。
――――ピンポーン
「ん、誰だろう。もしかして、部長かな」
――パタパタッ ガチャッ
「おはようございます。璃奈さん。瑠奈さん」
この人が演劇部の部長、京極麗香。かなり良いとこのお嬢様らしい。
「きっとぎりぎりの時間に起きるだろうと思って早めに来たつもりでしたのに……。
もう、起きてらしたのね。まあいいですわ。すぐそこに車を待たせてありますの」
「え、もしかして憧れだった部長の車に乗せてもらえるんですか!?ありがとうございます」
「すぐに行きますから。少しだけ待っててもらえますか?」
「ええ、大丈夫よ。戸締りはちゃんとしないといけませんものね」
――ガチャン カチャリ
「……よし、鍵は掛けたっと。お待たせしました!」
どうぞと言いながら運転手がドアを開けてくれた。
「この人は京極家お抱えの運転手の笹塚よ。私の小さい時からいるの。執事も兼任しているわ。それに笹塚は何をさせても完ぺきなのよ」
「「よろしくお願いします」」
「笹塚です。お褒め頂き大変恐縮にございます。なんでもお聞きください。」
「先輩ってどういう子だったんですか?昔から可愛かったんだろうな~」
「……そうですね、お嬢様は子供の頃から聡明で使用人にも優しくしてくれるような方です。私はどんな時でもお嬢様のご命令があればすぐに駆けつける所存ですよ」
「なんだか恥ずかしいわね……。立ち話はこれくらいにしてそろそろ行きましょうか」
「そうですね」
――バンッ とドアを閉める。
「それでは出発いたします」
――ブロロロロ……
「部長、今回の合宿の場所ってどんなところですか?」
「ほかのみんなは前日の準備もあってもう合宿の場所に居るんだけど……。
聞いて驚かないでね?……な・ん・と、私の家が管理している軽井沢の別荘よ」
「軽井沢!?そんな凄いとこに泊まっちゃっていいんですか?」
「いいのよ、他にもいくつかは別荘はあるんだけどあまり使う気ないからってお父様が許可してくださったのよ。演劇部のメンバーだけで住めるほど設備を良くしてもらってるから。気にしないで自由にしてくれていいわ。」
「……いやいや、めっちゃ気にしますって!!」
「そうかしら……?」
「だって……、ねぇ?」
「うん、今の経済状況ってあまり良くないってニュースや新聞で見てるから。
別荘が持てるなんて私たちには縁がなさすぎる話ですよ。」
そう、よっぽどの大企業でもなければ今の時代、一般市民が別荘なんて夢のまた夢。
それぐらいに京極グループは幅広い分野に手を広げ、繁栄していた。
京極麗香はそれを笠に着ない姿勢で学校の中で大変に人気が良く、誰からも慕われていた。困っている人を見かければ、すぐに手を差し伸べるくらいに。優しかった。
今のところは主人公の如月璃奈、その妹の如月瑠奈。
そして、演劇部部長の京極麗香の3人だけです。
次の話あたりから何人か出てくるかもしれませんが。
まだこの小説に何人出すのか、またどのような人物にするのかなど決まっていません。
主人公たちの性格もまだ確定していない状況です。
プロフィールなどは確定してから書こうと思っています。
長い文章を読んでくださってありがとうございます。
これから頑張っていきますので末長くお付き合いいただければと思います。
それでは、西宮寺夏美でした。