運命の故障
ピロリロ~ン♪
携帯のアラームが鳴って、彼女はすぐに起きた。
彼女は天沢望海。涼介と同じ、京里電鉄の運転士である。
彼女は4年制大学を卒業してから運転士になった涼介と違い、専門短大を卒業してから運転士になっていて、年は涼介の二つ下だが、運転士としてのキャリアは同期という人だった。ただ、専門短大卒とはいえかなりの博識で、高校の先生に名門大学への進学を進められたほどである。
さて、彼女の一日は風呂から始まる。彼女は朝風呂のスタンスを専門短大のために地元である三島から東京に出てきた7年前から守り続けている。そして歯磨き・洗顔・朝食をこなし、仕上げに目覚まし代わりのコーヒーを嗜みながら今日のニュースを見て情報補給をする。
ここまでやっても時刻は7時。出勤予定の8時まで時間があるとき、望海は近くの弘明寺公園を制服のまま散歩する。中には南図書館があるが、まだ扉は締まっている。
弘明寺駅から徒歩8分というなかなか良い立地に望海は一人で暮らしている。
暇つぶしが終わり、8時に弘明寺駅に向かう。
彼女の出勤先は新町検車区である。もともと文庫検車区に配属されることを望んでいたが、こちらは定員らしい。そこまで距離的には変わらないのでどちらでもよかったが。
ちなみに今日の運用は専ら普通列車の運用である。
それにしても最近、「一人暮らしは寂しい」と思うばかりである。
というものの、一人暮らしをしているとしゃべる相手がいないのだ。いつでも自分ははっきり言ってモテていた方だったし、大学時代はいろんな人と仲良くして、自分の容姿を生かして彼氏を作って、家に泊めてあげたこともあった。ただ、「一線を越えた事」まで行くことはない。「そのことをやる人は、この人ではないのではないか」という疑問がわくからである。もちろんそれに興味が無いわけではないのだが、理性なのだろうか、なんだかしっくりこない気がする。
しかも大人になって思うのが、この業界には女性が少ないのだ。やはり異性と話すより同性と話した方が100倍落ち着くものだ。これは皆当てはまるであろうことだが。
◇◇◇
彼と出会ったのはその日だった。
品川まで運転してほっとしていた時、彼は乗務員室のドアをノックしてきた。
「すみません。乗務してた車両が故障してしまって...乗らせていただきませんか...?」
彼を乗せての運転は運転士として教育されているときに乗せていた教育主任を思い出して緊張した。
それに彼も顔を俯かせている。僅かに彼の耳が染まっていることだけは見えた。
珍しく緊張していた私はこの先を断片的にしか覚えていない。
望海は何とか運転に支障が出ずに列車を止めた。
「あっ...ありがとうございました...」
「いえいえ、大丈夫ですよ。」
「おっ、お名前は?」
「私ですか...?天沢望海です。所属は違いますけどまた会う機会があれば宜しくね」
爽やかな感じでやり過ごして立ち去ったのだが、望海の体はまだ硬かった。
彼を好きになった理由はいまだによくわからない。なぜか彼を意識していた。個人的には久し振りに「異性として」意識してくれる人と出会ったこと、孤独だったことが重なった結果だと思っている。思い込んでいるだけなのかもしれないのだが。
◇◇◇
以来、望海は彼を探し続けるようになった。検車区が違う上に、運転士と一概に言っても数が多いので会える機会は中々少ない。
一回だけ彼と乗務員交代で会ったことがあったが、その時も彼は俯いていた。
「お疲れ様です」と声をかけてあげると「そちらこそ、運転頑張ってくださいね」と、いつもの形式的な挨拶とは違う気遣いのある挨拶を俯きながらも返してくれた。
そんな姿に望海はさらに惹かれた。
変な話だといわれても仕方がないかもしれない。ガチガチに凍った二人で、会話もほとんどしない仲なのだから。
まずは投稿が1か月近く空いてしまったことをお詫び申し上げます。実は1か月の間にテストやら新しいことに挑戦したりやらいろいろやっておりまして全然執筆時間が取れませんでした...
あと前半900字強は原稿を作り置いていたものを使用しております。もし文のテイストが途中で変わっていたらそのせいです。
さて今回は急に出てきた謎の女になってしまっていた望海のお話です。
あとなんか読み返してみたけどあんまよくわからない文になってしまってるのでどうにか無理矢理まとめて軌道修正できるようにします()