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蒼い恋。淡い恋。  作者: NM28
一章 -今日一日-
3/12

意地悪チーフ

『おはようございます!!』

「おっ君たち来たか。今日は川野さん遅刻しなかったんだね。」

言葉を交わしてきたのは小倉社長である。一級建築士資格がないと業界への就職さえも厳しいこのご時世で一級建築士の資格はおろか二級建築士の資格さえも持っていない私を入社させてくれたまるで神様のような人だ。

「うっ...」

「まあいいじゃないですか、今日は定時に来たんですし。」

原先輩のフォローが入る。

「まあ、遅刻しないようにしてくれよ~」

そういい、社長は外にコーヒーを買いに行ってしまった。

自分の机に向かうと、野口チーフにものすごい冷ややかな目で見られた。理由はよくわからないが、野口チーフは私が社長に贔屓(ひいき)にされているのが気に入らないらしい。

さて...デスクワークを始めますか。

一級建築士資格を持っていない夏葉が行う仕事は新規の受注をいただいた企業にデザインのご希望をお聞きしたり、郵便物の処理をしたり、メールの確認などなど...やってることは事務のお仕事と変わりないのだが、一応チームの中に入れてくれている。

ちなみにチームはAチームとBチームの二つがあり、それぞれで案件を並列して進められるようになっている。チームメンバーはチーフを筆頭とした5人で構成されている。原先輩はAチーム、夏葉はBチームなので別れてしまっているが、判断を仰ぐときにはチームの枠を超えて原先輩に聞くこともある。


「夏葉ちゃんおはよっ!」

「おはよっ綾香!」

デスクワークを始めるとすぐ、隣に夏葉が唯一チーム内で信頼できる後輩の綾香ちゃんが座った。彼女もとても頭が切れて、名門大学在籍中に一級建築士資格を取得して、現在はチーム内随一の働き者となっている。

「夏葉ちゃん、帝国総合デパートさんからのメールって入ってる?」

帝国総合デパートとは都内山手線沿線地域や横浜・大宮駅前などに7店舗を所有するデパートで、この度初めての関西進出となる梅田店の設計を依頼されている。この案件は夏葉が入社して以降最も大きな案件だ。

「あっうん、入ってたよ。綾香のパソコンにそのまま転送しといたから読んどいて~」

「ありがとう!そういうところ夏葉ちゃん気が利くよね!」

「そこ!仕事を始めなさい。」

野口チーフからお叱りの言葉が飛んできた。

『はい、すいません...』

嫌な感じだなと思いながら仕事を始めた。


◇◇◇


ピピッ!

夏葉の着けている時計の時報が鳴った。12時だ。

「綾香!ご飯食べに行かない?」

「行く行く!原先輩も誘おうよ!」

「そうしよう!」

「先輩!ご飯食べに行きましょうよ!」

「あら、ちょうどよかった。私いいお店見つけたの!ランドマークタワーの中だから...20分くらい歩くけどいい?」

『全然大丈夫です!!』


先輩に連れて行ってもらったのはランドマークタワー内の創作お茶漬けのお店である。この店の評判は前々から知っていたが、なかなか行く機会が無かった気になるお店だった。

料理が到着すると、夏葉は気になることを先輩に聞いてみた。

「先輩、なんで野口チーフは私や綾香に対してあんなにきつい態度をとるんですかね?」

「そうなんですよ。今日は私宛のメールを転送してくれて「夏葉ちゃんは気が利くね」っていう話をしてたら「早く仕事をやれ」って怒られちゃったんです。アットホームな雰囲気の職場を目指すって社長言ってるのに、なんでそんな雑談くらいで怒るんでしょうかね?」

綾香も夏美の話に乗る。

「そうだね。なんか前に吉沢部長から聞いた話なんだけどさ、二人は【ロストジェネレーション】って単語知ってる?」

吉沢部長は、二つのチームを束ねる会社ナンバー2の人。社長と同じで優しい人で、私にも良い顔で接してくれている。

「ああ、なんか私の読んだ本にそういうのありました。確か就職氷河期に入社した世代がバブル世代の人と戦うっていうお話だったかなぁ」

綾香は何かの本の話をしているらしいが、読書なんてほとんどしない上にニュースもほとんど見ない私はその単語がちんぷんかんぷんだった。

「たぶんそんな感じ。ちなみに本当の意味としては、第一次世界大戦後のアメリカ人作家さんたちの世代のことらしい。で、夕陽新聞が2007年に就職氷河期に入社した世代を「ロスジェネ」って呼んだことから世間に定着したらしい」

「へぇ~」

綾香は先輩の話に夢中になっているが、私には何のことかさっぱりわからないのでとてもつまらない。

「で、そのロスト何とかが野口チーフとどう関係するんですか?」つい夏葉は尋ねてしまった。

「まあそう焦るなって。で、野口チーフは2004年入社だからその「ロスジェネ世代」らしい。つまりは、チーフが就職するときはとても大変だったのに、夏葉ちゃんや綾香ちゃんは気楽に入社して社長にもちやほやされてることが気に入らないらしいよ。」

「なるほどね~」夏美はやっと納得できた。「でもつまりは私たちが悪いわけじゃないじゃないですか。」

すかさず綾香が首を突っ込む。「しかも私だってそんなに気楽に入社したわけじゃないんですよ?このご時世、なかなかこの業界で資格持ってない私が入社するのは難しかったんですから。」

『それは資格を取ってない夏葉が悪い。』

「むうぅ~...」

原先輩と綾香にピシャリと言われてしまった。

ということで夏葉パートでした~

たまにはソロパートもいいかな~って思ったので、今回はソロパートにしてみました。

次回は涼介のソロパートを書いてみようかと思います!

えっ、再会はまだかって?まだですが何か?

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