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9:バロンと遊ぶ?

「美雪!躱せ!」


ドシン!ゴロゴロゴロ、ズデン


「ふぎゃ~~!痛い!痛いって!」


ドシドシドシ、ガブッ


「ヴォン!」


「駄目よ?もっとギリギリで躱さないと魔物だって方向を修正してくるわよ?」


ドドドドドド、ブスリ!


「いっ痛い!刺さってるよ!刺さってるから!」


ドテドテドテ、ガブッ!


「ガルルルル!」


「一応、バロンが攻撃する隙を作っていると言えなくもないな」


「そんなの望んでない~~」


「ウヴォン!」


その後もみんなで更に魔物の討伐を行うのですが、ハッキリ言って上手くいきません!

イメージでは、魔物をひらりと躱して擦れ違いざまにチクチクと魔物の体力を削るはずが、さっきから魔物に思いっきり攻撃されてます。


ベテラン?なお父さんはともかくとして、お母さんも、バロンですら上手に攻撃を躱して、魔物にダメージを与えているというのに、私だけがさっきから死にそうに・・・まぁリアルでも運動神経は良くないですけど、少しは夢を持たせてくれても良いのでは?


「いや、身体能力や反射神経は良くなってるはずなんだが、まだ感覚が掴めてないだけだと思うぞ?」


「そうねぇ、どうしても怖がって腰が引けてるし、早く動いちゃうのよね」


お父さん達が、冷静に評価をしてくれるのですが、なんの解決にもなりません!


「慣れるしかないな」


「そうねぇ、美雪、女は度胸よ?」


「お、おんなは、愛嬌です~~~!」


地面をゴロゴロ転がり、魔物の攻撃を避けながら叫びます。


「まぁ、愛嬌といえば愛嬌はあるな、まぁ滑稽と紙一重だが」


「お父さんったら」


「和んでないで助けてよ~~」


「ウヴォン!」ガブガブ


バロンだけがマイペースに魔物に飛び掛って行きます。予想以上に好戦的です!

こんな世界に慣れてしまったら、他人様を攻撃するようにならないかすっごく心配です。


「まぁあれは甘噛みだな。確か、ペットの攻撃数値は補正が掛かっているらしいぞ。だから、バロンは遊び感覚だろうな」


「声に出していない私の疑問に答えないで!」


魔物をバロンが倒してくれたおかげで、漸く立ち上がる事が出来た私は、泥だらけの姿になっていました。


「うぅぅ、泥だらけだ、なんか口の中もジャリジャリするよ?こんな所まで再現しなくていいのに」


「はいはい、愚痴はいいから次が来たわよ?」


お母さんの視線を辿ると、バロンが喜び勇んで野犬達と戯れています。そして、なぜかこっちへと!


「ば、バロン~~休ませて~~~」


「ウォ~~~~ン」ピキ~~ン、ガルルルル


「ぎゃぁ~~バロン、遠吠えは駄目!魔物呼んじゃうから!」


「ウォン?」


その後、幾度かの戦闘を終え、ようやく、本当にようやくバロンは満足したみたいです。


お家へ帰ろ?帰ろ?と私達の周りをくるくる回り始めます。


「ううう・・・ようやく帰れる・・・」


疲れ果て、泥だらけで、装備もよれよれになった私は、ホームに戻れることに思わず涙しました。

こんなに疲れるお散歩は初めてです。もうやりたくありません。


そして、家に戻って私はお父さん達に宣言します。


「無理!育成士なんか無理!武器がスコップって何?!キャラ作り直す!」


「そうね、バロンと遊ぶにはちょっと不向きよね」


「まぁあれはベテラン向けだからなぁ、美雪にはちょっと厳しかったな。まあ、職だけの問題では無かった気もするが。で、何の職にするんだ?」


「色々調べて考える!」


私の言葉にお父さんは溜息を吐きます。失礼ですね!


「そうだなぁ、美雪向きなのは、壁ヒーラーなんかどうだ?耐久あって、自分で治癒も出来て、しかもあまり動かなくて良い」


「おおお!」


「ただ、一般のパーティー募集には参加しずらい。治癒特化には回復量で負けるし、耐久も盾職に負ける。まぁサブ治癒士的な位置づけで考えれば悪くは無いのだが、今人気のPT構成からは外れるな」


駄目ですね、お父さんが何を言っているのかよく解りません。

とりあえず、ネットで調べて見ましょう。


「今日、上げたレベルも作り直しで無くなるが、まぁまだ一日目だしな」


「そうねぇ」


「クゥオン?」バシッ!バシッ!


バロンは首を傾げています。でも、これは私達の会話に対して首を傾げている訳じゃありません。バシバシ出す手と、ブンブン振られる尻尾がご飯まだ?と主張しています。


「お母さん、バロンがご飯頂戴だと思う」


一応、3人揃った時はお母さんがバロンのご飯当番になってます。


「あらあら、お母さんはバロンのご飯を用意しますね」


「ヴォン!」ハッハッハッ


バロンの息遣いがすごいですね。ご飯という言葉にすっごい反応しています。もう心はご飯に飛んで行っているのがすっごく解ります。

母さんの後ろにひっついて、バロンがご飯を食べに行っている間に、お父さんと作戦会議です。


「あのね、痛感したんだけど、こっちだと私一人でバロンの散歩は無理だよ?」


「う~~ん、そうだなぁ、まぁレベルが上がればいけるんだろうが」


「レベル上がって問題なくなるイメージが沸かない・・・」


私の落込み具合に苦笑を浮かべるお父さん。

でも、VRでの戦闘ってこんなに難しかったんだって思いました。動物を殺すの嫌だな、血が出なくても生き物に斬りつけるのって、などとある意味上から目線だったのですね。そもそも、生き物に襲われる、攻撃される事自体がこれ程までに怖いとは思わなかったです。牙を剥く表情などもそうなのですが、なんといってもあの目が、これからお前を殺すぞ!っていう目が怖かったです。こんな所までリアルにしなくてもって思います。


「う~~、ポコポコ動く魔物を、ピコピコハンマーで叩くくらいの戦闘であってほしかったよ~」


「何か、想像すると良いなそのゲーム。ほのぼのするぞ?」


「だよね!こんなリアルな戦闘なんかいらないよね?」


デフォルメされた小さな魔物達を、ピコピコハンマーで叩く、当たるたんびに星がピコピコ出る、勿論、気絶したらピヨピヨと頭の上をヒヨコが飛ぶのです。そんなゲーム良くないですか?

わたしが、そんな想像を巡らせてる間にも、ご飯を食べ終えたバロンが、ブラシを咥えてドテドテとやって来ました。


「ワッフ!」


私の足元にブラシを置いて、一哭き。はいはいってブラシを取ろうとしたら、なぜか再度ブラシを咥えてお父さんの方へ歩いて行って、再度一哭き!


「え?え?何今の?」


混乱する私を他所に、バロンはお父さんにブラシを掛けて貰い始めます。その際、なぜか私をチラッっと見ます。


「バロンも新しい技を身に着けたのねぇ」


「ふぇ?」


「うむ、もしかしたらレベルアップしてINTが上がったからか?」


「えええ!レベルアップのステータスってそんな所にも影響するの?!」


驚きの事実です。ここでは、確かにステータスが影響を与えてもおかしくない?


「レベルアップを続ければ、頭のよくなったバロンが言葉をしゃべったりも?」


「いや、それは無いだろう」


「どうかしら?そうなったら楽しいわねぇ」


楽しい・・・でしょうか?むぅ、言葉をしゃべるバロン・・・なんでしょうか、バロンがバロンで無いような?現実味が一気に薄れるような?何かバロンをバロンたらしめている、すべての根底が崩れる気がします。


「でも、まだリアルで1時間も経ってないんだよね?その方がやっぱり怖いかも」


「美雪は塾で慣れているだろ?」


「机にずっと座って勉強してるのと、運動しているのだと感覚がぜんぜん違うよ?勉強って時間経過の感覚が麻痺するから、何って言うか、ゲームの方が情報量が圧倒的に多い?勉強は基本的に記憶とか計算とかに限られるから」


「何が言いたいか何となくだが解るが、そうだな、最近では会社でも会議やセミナーはVRで行う所が出始めてるからな」


「逆に今まで無かった方が驚き?」


「VRへダイブしている間は体は無防備だからな、事故や犯罪が起きた時の責任問題が絡むから会社も導入には慎重になる」


「ほむ」


確かに、私も公共施設や会社でVRをやりたくないです。いくら安全だと言われてもですよね。だからと言って自宅がそんなに安全と言えばそんな事は無いんですけどね。毎年、何件かはネット接続中の事件や事故も起きていますから。


「バロン、綺麗になったぞ」


「ヴォン!」


ブラッシングを終えたバロンが、お父さんにお尻を叩かれて起き上がります。

うん、しっかりフワフワモコモコが復活しています。


「家の中が狭いのが痛いよね、これって大きくしていけるのかな?」


動物ライフでは、家も大きく、庭やドッグランもしっかりあったので良いのですが、こっちでは部屋の中で遊ぶことが難しそうです。


「一応だが、クランハウスなどを所持すれば広くはなるな。ただ、クランハウスを維持し続ける条件が結構厳しいぞ?クランハウスのランクによって違うが、毎月結構なゲーム内通貨が必要らしい」


「うわぁ~~」


家族だけでは何ともなりそうにありませんね。

ともかく、まずはキャラクター作成を再度してきましょう。


「お父さん、とりあえずキャラクター作り直してくる」


「おう、行って来い」


「ヴォン!」バシッ!


私がログアウトしそうな気配を感じたバロンが、ドテドテと側に来てお手をします。


バロン?あなた本当に頭良くなってない?

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