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6:バロンとの再会?

私は殺伐世界に戦慄を覚え、先行きに不安を抱えながらホームへと戻る。

すると、部屋にINした途端に何かがドシンとぶつかって来た。


「かふっ」


「ヴォン!」


とっさの事で一瞬息が出来なくなったのですが、何とか転倒は免れました。で、ぶつかって来たのは、予想通りバロンでした。


「バロン~~、うわぁ、あっちとぜんぜん変わんない姿じゃない!」


キュートな黒くて大きなお団子の様なお鼻、長いふわふわな毛に隠れたちょっと危なそうな目、ずんぐりむっくりな足、そして、まさにヌイグルミの様なお姿!もう、変わらず可愛いバロンです。


「うわ~~~、うわ~~~」


頭や背中を撫でまくりです。

うん、動物ライフでのバロンと姿形はまったくと言って良いほど変わりません。

バロンも尻尾ブンブンさせていますし、鼻息がすっごい荒いです・・・ちょっと怖いですよ?


「美雪、漸く来たか」


「遅かったわね」


視線を上げると、奥の椅子にお父さん達がなんかぐったりした感じで座ってました。


「時間差があるんだから当たり前でしょ!それに、あの後バロンのご機嫌直すの大変だったんだから!」


「ああ~~、まぁ、その、すまん」


お父さんが頭を下げます。お母さんは、当初の事は解っていなかったので無罪です。すべてはお父さんが悪いのです。でも、まぁバロンと遊ぶのは嫌ではないので、そこまで怒っている訳では無いのですが、心理的なもの?ですね。これを出汁にあとで何か買ってもらいましょう。


「でも、なんか心配してた程、バロンに違和感ないね」


バロンをゴロンってさせて、お腹をワシワシ撫でながら尋ねるのです。この恰好、バロンはあんまり好きでは無いんですよね、目がギョロギョロして、何するの!って感じで首だけを起こしてこっちを見るんです。

でも、それが可愛いのです!


「そうだなぁ、まぁバロンの姿形は問題なさそうだな。ただ、遊び方というか、飼い方?が問題になりそうだな」


「お父さんと一緒に、ちょっとバロンで討伐クエスト試して来たの。で、まぁ流石は15歳以上対象って感じで血は出ないし、魔物が死ねば光になってドロップアイテムを落すだけ。死体も残らないし、殺伐とした感じは少なかったわね」


「そうだな、バロンも喜び勇んで魔物を追いかけてたからなぁ。魔物から攻撃されても、一見してどこも怪我したように見えないし、血も出ないから予想してたような忌避感はなかった」


むぅ、この愛らしいバロンを連れて戦闘など、なんと野蛮な!

そう思って二人を睨み付けると、お父さんはサッと目を逸らせるのですが、誤魔化されませんよ!


「美雪?それにね、ここでバロンを自由に走らせる事が出来るのは、街の外しかないの。だから、まずはバロンのレベルを上げて、自由に遊べるようにした方が良いってお父さんと話し合ったの」


「え?公園とか無いんですか?」


「無いわねぇ」


「無いらしいな」


「え~~~~、なんで!」


バロンだけの事じゃないのです、子供を遊ばせる為の公園や、ちょっとした広場など普通に必須じゃないですか!ドッグランとは言いませんから、せめて公園くらいあっても・・・


「いや、そもそも動物ライフそのものは運営も持って来ないだろうしな、遊んでいるユーザーが減って寂れてしまったシステムだからなぁ、ある意味」


お父さんの言葉が、ぐっさりと私のハートを傷つけます。

た、たしかに、動物ライフで遊ぶ人は減っていたみたいですが、それは1倍速なのが原因のはずです。

だから、4倍速や8倍速のエリアを造ればいいだけの気がするのです。


「いや、それって多分お金が結構かかるんだと思うぞ?それに比べ、こっちはペットデーターを組み込むだけだろうしなぁ。まぁそれも手間ではあるんだろうが、根本のプログラム変えるよりは安いだろう」


「嫌にお父さんはアナザーの肩を持ちますね」


「別に、肩を持っている訳じゃないぞ?!」


ともかく、そんなお父さんは放置して、こっちでのバロンの事を確認です。


両前足を持って、状態を確認です。足先は・・・うん、フカフカで、モコモコしてて異常はないですね、違和感もないです。


「バロン、お口を開けてね~」


ググッと力を入れて、口の付け根に指を入れると、バロンはパクッと口を開けます。


「歯並びも、歯自体も特に鋭くなったりはしてないんだね」


いつの間にか、私と一緒になってお母さんがバロンを触診中?


「そうねぇ、手触りとか、フカフカ具合はなんとなくこっちの方が雑な様な気はするけど、そこまで大きな差は無いわね」


「え?あ、言われてみるとそうかも。ブラッシングしてみたらどうかな?」


「町中のブラシとかのペットアイテムが、今売り切れちゃってるみたいなのよ」


「今、このゲーム内空前のペットブームみたいなんだ。今、動物ライフとの統合を記念して、街中で即売会が開かれてる」


成程、あのギルド前の広場で行われていたのは、即売会だったんですね。確かに、ペットアイテムが一気に無くなっちゃいそうです。


「ちなみに、基本的なペットフードとか以外はNPC売りしていない。まぁ飲み皿とかなら底が平らな椀とかで十分対応出来るしな」


「でも、プレーヤーメイドのブラシがもう売りに出てるんだけど、普通に5万Gくらいするのよね」


「が~~~ん!」


ここでも、やはりお金の壁が立ちふさがるのですね!貧乏者はハンカチを齧りながら泣くしかないのです。


「ちょっとした可愛いクッションとかは20万くらいしてたな」


「が~~~ん、が~~~ん」


それは、もうお犬様自体の価格と差が無いではないですか!有り得ないのです!

あまりの衝撃に、私が絶句していると、お父さんが止めを刺してくれました。


「いやぁ、なんかショック受けてるお前に言うのもなんだが、20万くらいなら数時間で稼げるぞ?このゲーム」


「がび~~~~ん」


「「いや、がび~~んは止めよう(なさい)」」


なぜでしょう、二人からよく解らない忠告を受けてしまいました。


「そしてら、早くお金を稼ごうよ!そうしないと、うちのバロンがこの貧乏者め!って見られちゃうよ!」


「「いや、ないから!」」


またもや、二人は声を揃えて目の前で手を振ります。

でも、そんな事は解らないじゃないですか!


二人の手を引っ張って外へと向おうとした時、私にとって最大の壁が出現してしまったのです。


「クゥン?」


「みぎゃ!」


「クゥン」バシッ


可愛く、首を傾げてのお手です。

なんと、これは動物ライフ内で、ログアウトしようとした私に、よくバロンがしたおねだりポーズなのです!ですが、ですが!当たり前に、今の私がクッキーを持っている訳がないじゃないですか!


ピンチです!ここ最近にないピンチです!

お父さんを見ると・・・普通に目を逸らしましたね。あとでお仕置き確定ですね。

お母さんを見ると・・・なんでしょう、頬に手を当ててあらあら状態です。助ける気ゼロですね。


「くっ・・・、ば、バロン?あのね、お姉ちゃんまだ帰る訳じゃないのよ?」


「クゥン?」バシッ、バシッ


駄目です。バシバシが2回に増えました。

貰えないなど欠片も思っていない、純粋無垢?食欲満点?の瞳で私を見ます。


「ば、バ~~ロ~~ン?、ほら、遊ぼうか」


こうなれば、長く禁じていた手を打つしかありません。

四つん這いになって、片手をバロンの前でクンクンと動かし、前屈みになってバロンを誘います。


「ヴォン!」


バロンも一緒になって、前屈みでお尻ふりふり、尻尾ふりふりです。

ふ、簡単に誘われたのです・・・が、この後には持久戦が待ち構えているので、わたしは心で泣いています。


バロンと、取っ組み合いの消耗戦を繰り広げ、バロンが満足してくれたのはそれから1時間近く経っていました。わたしは、体力、精神力などをがっつり削られてぐったり倒れています・・・板間に。


「ウヴォン?」


「ば、バロンどうしたの?」


バロンは部屋の中を行ったり来たりとウロウロしています。


「ウヴォン?」


「あら?もしかして、お気に入りの座布団を探しているんじゃないかしら?」


「ヴォン!」


こっちが苦労してバロンのご機嫌をとっている最中も、テーブルでのんびりお茶を飲んでいたお母さんが、そんな恐ろしい事をいいます。そして、バロンはお座布団の単語に大きく反応しました。


「ば、バロン?なんでお姉ちゃんを見るのかな?別に、お姉ちゃんはお座布団盗ってないよ?」


なぜかじ~~~~っとこっちを見てくるバロンを見て、必死に自己弁護するのですが、今まで遊んでもらってご機嫌のバロンが、だんだん不機嫌になっていく様子を感じます。


「お、お母さ~~~ん」


「う~~ん、困ったわねぇ、ちょっと街中で、何か代わりになる物探してくるから、それまで頑張ってね」


そう言って、ウインク一つ飛ばして、お母さんは出ていきました。


「あぅぅ、早く帰って来て~~~」「バルルル」


私の叫びと、バロンの叫び声が部屋の中に木霊するのでした。

ちなみに、お父さんは私がバロンのご機嫌をとっている時に、さっさと自分だけ街中に出かけています。

許すまじですね!

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