4:お試し期間が来ちゃいました
まだ朝の8時です。一応土曜日なので、普通ならまだ寝ている時間なのですが、家族総出で動物ライフへINしています。なぜかというと、移行お試し期間なのでお父さんの引率で、バロンとあちらへ遊びに行くのです。
移行に際して、結局アカウントを作る事がなかったので、昨日の夜にアカウント作成でてんやわんやでした。
お試し期間はすでに2日前から始まっているので、サーバーが落ちるや、アクセス出来ずになどという不具合にも遭遇しませんでしたけど、公式掲示板には色々な情報が溢れだしていますね。
「美雪は昨日アカウントを作ったんだな?」
「うん、アカウント作って、チュートリアルまでは終わらせといたよ」
「お母さんもチュートリアルまで終わらせてるから一緒ね」
INしてからの段取り打合せです。
もっとも、今回の目的は移行したらバロンがどんな感じになるかの確認です。
既にお試しをした人たちの情報では、CG自体は問題ないみたいです。ただ、動作や鳴き声など、違和感を感じる部分が多々あるそうです。
もっとも、ゲーム自体が動物ライフの方が古いですし、扱うデーター量も少ないはずなので、予想以上にスムーズで違和感がないっていう意見も多数あります。
あとはそれぞれの感覚しだいという所でしょうか?
「さて、ペットはあちらのホームに関連ずくそうだから、ここでデーター移行を・・・あ、ホームコマンドに追加されてるな」
ホーム内での共有コマンド一覧に新たに追加されているようです。
ただ、そっちより今足元でフンフンと頭を擦り付けてくるバロンの方が気になりますね。
尻尾がブンブンと振られているのは、こんなに朝早くから家族総出でINする事があんまり無いせいですね。っていうか、総出でINするときはお出かけフラグなのを覚えているのでしょう。
「ヴォン!」
バロンの足元にはしっかりボールが置かれています。うん、お出かけ&ボール遊びする気満々ですね。
「お父さん、このボールとかってあっちに持って行けるの?」
「そうねぇ、お出かけセットもどうなのかしら?」
あ、そうです。
お出かけセット(クッキー、ジャーキー、お水を飲むときのお皿、タオル2枚、何かあった時用のピニール袋、ペットボトルの水、ブラシ)にお遊びグッズを持って行けるのでしょうか?
「あ~~、見た限り無理っぽいな。一応、あちらのホームに転移だからそちらで如何にかするしかないか?」
「このテンションで遊べないとなった時のバロン・・・考えたくないわぁ」
「お父さん、その時はお願いね」
私の言葉に頷いて、お母さんは満面の笑顔でお父さんに頼むのです。
若干、顔を引き攣らせてお父さんが頷きますけど、期待を裏切られた時のバロンは怖いですからね。飛び跳ねてぶつかって来るわ、梃子でも動かなくなるわ、もう大変です。
「よし、とにかく移動してみないと判断はつかないな、どうする、誰か先にあっちで受け入れするか?」
「う~~ん、どうなんだろ?」
「突然知らない場所になって、バロンが不安になるかな?」
「どうかな?」
尻尾ブンブンのバロンはこっちの心配を他所に、お出かけまだなの?まだなの?といった様子でワンワンバウバウ言ってます。
みんな貴方の心配をしていると言うのに、まったく。
「わかった、とにかくお母さんが先に行っているわ」
「よし、そしてら5分後にデーター転送するから」
「はいはい、じゃぁ先に行くわね」
そう言うとお母さんはあっさりログアウトしました。
ただ、ここで問題になるのは、みんなで遊びに行く気満々だったバロンです。
え?お母さん何処行ったの?どこどこ?
と言った様子で部屋中をクンクンとウロウロし始めます。
うん、何と言ってもお母さん大好きですからね。一番構ってくれて、お散歩も、ご飯を作ってくれる頻度も高いですからね。お出かけモードで、そんなお母さんが突然いなくなったらまぁこうなりますよね?
「ヴォン!」ガリガリガリ
扉をガリガリして、扉の向こうにお母さんが居ないか確認したいみたいです。
「バロン、こっちおいで、ほら、お出かけ前にキレイキレイしましょう」
ブラシを手に、こっちおいでをすると、お出かけの単語に反応したのかドテドテとバロンが歩いてきます。
「良い子にしてたら、お母さんとすぐに会えるからね~」
そう語りかけながら、ブラシでバロンの長い毛を梳かします。
うん、これほっとくと直ぐに絡まっちゃうからね。丁寧にやらないと根元の方がフエルトみたいになっちゃうし。
そうやって、バロンにブラシを掛けていると、お母さんからあっちの家に到着した旨のメールが届きました。
「よし、バロンを転送するぞ」
お父さんが転送ボタンを押したのですが・・・あれ?バロンはまだここにいますよ?
「おや?」
「あれ?」
「ヴォン!」
バロンまで一緒に首を傾げています。
でも、なぜでしょうか?バロンは目の前でもっとブラシしてっと頭を擦り付けてきますが、一向にあちらへ移動する気配がありません。
「あ、お母さんからメール来たぞ、バロンがあっちに着いたって」
「え?!じゃぁこのバロンは?」
「・・・・もしかしたらだが、別にこっちのバロンがあちらに移動するわけではないのかもしれん。データさえあっちに移動すれば問題ないのだから」
それって、こっちのバロンは消されちゃうって事でしょうか?
確かに、バロンはデーターでの存在です。だから、あちらにコピーして、こちらを消す作業をするのでしょうけど、何となく、本当に何となく、嫌だなっていう感情が芽生えます。
「なんか、それって嫌だね。こっちのバロンを消しちゃうっていうの」
「ああ、そうだな」
お父さんも複雑そうな顔をします。
気が付いてしまっても、引っ越しって結局そういう事なんだと理屈ではわかるのですが、それでもですよね。
「まぁうだうだ言ってても仕方がない、とりあえずあっちへ行くぞ」
「え~~~、っていうかこのバロンをどうするの?」
もう、遊ぶ気満々、お手入れバッチリ、お出かけまだ?っと私達を見るバロン。
「だ、駄目だわ~~これ、このままあっち行っちゃうと、後で大変な事になりそう」
「・・・・まかせた」
「え~~~~」
結局、仕方がないのでドッグラン広場へ私がバロンを連れていく事に。
何か当初の予定がグダグダになってませんか?
「ウヴォン!」
家を出て、ドッグラン広場に来たのは良いのですが、バロンはちょっとご機嫌斜めです。
お父さんも、お母さんもいなくなっちゃいましたからね。
「よし、バロン、ボール投げるからね!」
バロンの目の前で、ボールを持った手を右へ左へ揺らします。
尻尾をブンブン振って、バロンはお尻を上げ、前足を屈めていつでも飛び出せる格好です。
「それ!」
「ヴォンヴォン!」
ボールを追いかけてドテドテ走るバロンの後ろ姿・・・うん、なんか愛嬌しかありませんよ?
見てると、なんかハシハシ!っていうか、ヴォフヴォフっていうか、何かそんな感じで走ってます。
え?解りにくいですか?う~~んと、なんというか、その、まぁそんな感じです。
「よ~~し、ほら、バロン、ボールちょうだい」
私が声を掛けるのですが、私の近くまでボールを咥えて来るのですが、そばまで来ると両手でボールを隠して、咥えて、放して、チラッと私を見て、また咥えてっを繰り返します。
「バロン、ちょうだい。ボールちょうだい」
うぅぅ、いくら言ってもボールをくれる気配はありません。
「ふふん、いいもんね~、わたしはこのボールで遊んじゃうもんね~」
ふふふ、ここで、必殺の、サッカーボールを取り出します。
途端に、バロンは今までの小さなゴムボールなどそっちのけで、サッカーボールを注視するのです。
「ほ~~らほら」
かる~~くドリブルすれば、もうバロンはサッカーボールに夢中なのです。
「ヴォフヴォフ」
サッカーボールにまっしぐらですね。ちょっとボールを蹴りだしてやれば、もう後はボールとの追っかけっこ。上から伸し掛かるようにボールを押さえようとするので、逆にボールを前に押し出しちゃうのですよね、おかげでわたしとのボールの奪い合いが成立するのです。
かれこれ30分くらいサッカーボールで遊んだら、ようやくバロンもご満足な様子です。
「はい、お水飲んでね」
お出かけセットから、お水のお皿とペットボトルを取り出して、バロンにお水を与えます。
この後は、軽く周辺をランニングして家に帰ればお散歩終了です。
しかし、これだけ運動してもリアルではまったく恩恵がないのは理不尽だと思います。
普通なら、500gくらいは痩せてて良いのではないでしょうか?
そして、漸くハウスへと戻ってきて、時間を見ればもう10時です。あっという間に2時間が過ぎちゃいました。まぁこれはいつもの事ではあるのですが。
ハウスに帰って、バロンの足をタオルでキレイキレイにして、ついでにお口もゴシゴシ。
その後、綺麗にブラッシングをして一通り終了です。
バロンもご満足で、自分の座布団で丸くなっています。
「よし、じゃぁバロン、また後で来るからね~」
これで漸くログアウトします。
「はぁ、何か疲れました。あっちにINする前に一休憩しましょうか」
ヘッドギアを外して、ぐぐっと伸びをしてから、冷蔵庫へ直行です。
そういえば、お父さん達からは、特になんにも連絡がありませんね。