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閑話:クリスマスもバロンは元気ですよ

 街ではクリスマスソングが溢れ、イルミネーションが華やかに街を彩るクリスマス・・・・・・なんてものは都会の繁華街の極一部。花の女子大生になればクリスマスなどは友人達と街へと繰り出し、それこそコンパだ、もしかしたら恋人なんかも出来ちゃったりしてと夢を見たこともあったのですが。

 で、その花の女子大生真盛りである私は、なぜかいつもとさして変わらない日々ですね。大学を出て地下鉄に乗ってアパートのある駅を目指す。その間クリスマスっぽいものは極々僅かだよ!


 最寄り駅を出たすぐ前にあるコンビニくらい? そのコンビニで寂し~くお一人様ケーキとフライドチキンを買うのが今年のクリスマスイブです。


「ううう、これなら去年までの方がまだクリスマスしてたよ」


 去年は何といっても祝日と土日が合わさり3連休、たまには家に帰ろうかと今年と変わらず寂しい独り者のクリスマスとはいえ、お母さんの手料理と家族からのプレゼント、そしてちゃんとホールケーキでクリスマスをお祝いしてました。


「どっかのサークルでも入れば違ったかなあ。ていうか、クリスマスだからってアルバイト休まないでよ」


 恋人持ちのリア充の人達は当たり前にそれこそ忙しかろうと、そこで休むと人手が足りなくなりそうであっても、さも当然の権利のようにクリスマスには休みをとってくれます。


 もっとも、自分がもし同じ立場であれば、きっと同じように休んでいたと思うけど。


「所詮仮定でしかないですけどね、ふん!独り者で悪かったわね!」


 誰にと言うわけではなく、そんな言葉が口から自然と零れるのもきっとクリスマスが悪いんだ。

 そんな責任転嫁をしながらも、漸くアパートへとたどり着いて鍵を開け部屋へと入った。


 買ってきたケーキなどを机に並べながら、アルバイトまでの時間を確認して、一応ネット上にある私宛のメールで、臨時の家庭教師先への変更が無いかも確認。


「クリスマスイブまでお勉強ってこの子達も可哀想よね、高校受験間近で強化合宿とかあった時代に比べれば、もしかすると幸せなのかもしれないけどね」


 とにかく、私はさっさとネットへと接続し、普段担当していない子の苦手分野などの情報を再確認する事にした。


 その後、無事に臨時の家庭教師のアルバイトをやり遂げた私は、ほぼ燃えつきというか、やさぐれ状態でバロン達に癒しを求めていた。


「う~~~、バロン~~~お姉ちゃんは今日は大変だったんだよ。慰めて~~~」


 寝そべっているバロンのふわモコなボディーに顔を埋め、大きなお腹に顔を埋める。

 すると、バロン以外の子達が寝そべっている私が遊んでいると勘違いしてドスドスと伸し掛かってくる。


「ううう、皆さん、流石に重いのですけど」


 夜のお散歩はすでにお母さんがやってくれていた。私はただバロン達とのんびりしていれば良い状況ではある。ただ、オールド達の体力はちょっとお散歩したくらいでは尽きていないので、こっからは私との体力勝負になるのだけど4対1では非常に分が悪いのです。


「ヴォフヴォフ!」


 ついでに寝ころんでいたバロンまで参戦!

 もちろん私の味方であろうはずがないのですよね、こんなところで世の中の無常を感じる今日この頃。


「うみゃ~~~!こうなったら戦争だ~~~」


 伸し掛かろうとして来るバロン達を逆に押し倒します。

 私とて自分のスペックの低さを放置して日々過ごしていた訳ではないのです。打倒バロンに引き摺られる日々を目指し、少ない時間をやりくりして自分のレベルアップに励んできたのです。もちろんゲーム内のですよ? レベル差で力負けしてましたからね。


「うりゃ!とりゃ!」


 側面から逆にこちらから伸し掛かってバロンを押し倒します。


「ガゥゥ、ガゥ」


 伸し掛かっている私から脱出できず、バロンは頭だけ起こして唸ってます。


「ふふふ、どうよ!」


 思わず膝立ちになって胸を張ると、その隙に他の子達によって仰向けに押し倒されちゃいました。


「や、やばい!仰向けはやばい!」


 焦る私を他所に、これぞ犬の本能なのか私の両肩を押さえつけるようにしてマウントをとったプリンが顔をべろんべろん攻撃を繰り出しました。


「あう、ちょ、プリン、まった、おうぅ」


 思わず乙女らしくない声が洩れちゃいました。私がプリンに抑えられたその隙に、起き上がったバロンがこれまた私のお腹を無情にも踏みしめました。多分プリンがマウントを取っている為どうしようか考えているんだと思うのですが、お腹が押されて何かが出そう・・・・・・。

 幸いなことに他の二頭はお互いに頭フリフリ、お尻フリフリでじゃれあってるので、四頭で連携される前に脱出したい。


「うぅ、はふ、よっと、えい!」


 プリンのベロンベロン攻撃の猛攻を凌ぎ、どてっと人の上で寝そべるバロンを体を横にすることで動かす。そして俯せになりながら顔を下にしてプリンの攻撃を防いで一気に立ち上がった。


「ふふふ、どうよ!」


「バゥ!」


 お返事してくれたのはバロンだけ、プリンは倒してやるもんねと言わんばかりに飛び掛かってくる。

 問題はそのプリンの動きと言うか、行動に触発された他の二頭が参戦しそうな気配、真面目にやばいですね。


 紅白の三角帽を被って、サンタさんの衣装を身に纏ったバロンを連れてお散歩中です。

 街中にはクリスマスのイルミネーションがキラキラと光って、そこかしこでクリスマスソングが流れてきます。うん、あの動物ライフ閉鎖事件から早くも一年が過ぎてしまいました。


「う~ん、色々とあったなぁ」


何といってもデーター移行後に対する不安、その後のLv制導入によるお散歩困難事件。

何度街中をバロンに引き回された事か、うん、あれは色んな意味で辛かった。


「バロン、今日はクリスマスなんだよ。夜にはお父さんもお母さんも集まるから楽しみだね」


「ヴォン!」


一年を振り返りながら、何気なくバロンに話しかけたらバロンから予想以上に強いお返事が。

さっきまで周りの喧騒にキョロキョロとしていたバロンですが、今は思いっきり周りで何かを探し始めていますね。


「え、え~っと、バロンどうしたの?」


「ヴォフヴォフ!」


バロンの様子が気になって、私は屈みこんでバロンのモフモフした頭を撫でながら尋ねると、私の顔をじっとバロンが見つめ返してきます。


「え?え?な、何かな?」


相変わらず三白眼のバロンです。うん、モフモフで可愛いのですが、ちょっと目力がですね・・・。


「う~んと、クリスマスがどうかしたの?」


「クォン?」


「う、う、うわ~~~ん、可愛いよ!こてんってもう、可愛すぎだよ!」


私が首を傾げると、バロンも一緒に首を傾げます。

思わず両手でバロンをモフモフしてしまいます!クリスマスに備えて美容院へ行ったばかりのバロンはふわふわモコモコです。

で、そのバロンなのですが、モフリ倒している私をよそに相変わらず周囲を気にしているようですが、そこでその理由に気が付きました。


「バロン?もしかしてお父さんとお母さんを探しているのかな?」


「ヴォン!」


先ほどのお父さんとお母さんという単語にどうやら反応したようです。

でも、お父さんとお母さんは夜にならないと来ないのですよ?私と違って学校がお休みになっている訳ではないのです。


「夜にならないと二人はまだ来ないよ?夜ね夜」


夜を強調すれば、賢いバロンはちゃんと判ってくれます。うん、判ってくれ・・・るといいなぁ。

バロンの表情を見て、だんだんと自信が無くなってくるのは何故でしょう?


「ウウウウ、ヴォフ」


「え~っと、バロン? べ、別に嘘言った訳じゃないのよ?夜にはちゃんと二人とも来るよ?」


「ヴウヴォン!」


「うおふ」


 相変わらずのバロンのお腹への頭突き攻撃に、思わず腰を屈めてしまう。

 そして、バロンと私の手を繋いでいるリードが撓んだ瞬間、計算していたかのようにバロンが私の躰を躱して私にとっての後方に走り出してしまう。


「うわ、あ、ちょっと」


 咄嗟にリードを両手で持って体制を維持しようとするも、振り返ろうとしたのが思いっきり仇となってしまった。


ドテッ、ズルズルズル、シャシャシャシャシャ


「あ、また、駄目だって、熱! 真面目に熱い! バロン、バロン止まって~~~~」


 明らかに、街の前の草原に向かって疾走するバロン。クリスマスのネオンがキラキラ光って、至る所に雪だるまなんかのオブジェ。シャンシャンという鈴の音と、クリスマスソングが街に流れている・・・けど。


「ああ、何かお嬢ちゃんの悲鳴を聞くと、ほっとするよ」


「がんばってね~バロンちゃん」


「え? バロンなの? そこは私じゃないの!」


 周囲からの声に思わず突っ込みを入れながら、街の入口に立つ門番さんに笑顔で手を振られながら、私はバロンに引き摺られながら草原に辿り着いた。


「ヴォンヴォン!」

「ワンワン!」

「キャンキャンキャン!」


「ほっほっほ」


 いつもの犬達の声に交じって、何かお爺さんの声が聞こえる。


「おや、バロンちゃんのお嬢ちゃん、大丈夫かい?」


「まあまあ、体力は大丈夫?」


「あ、はい、ちょっちょ、バロン待って、今放してあげるから」


「ヴォン!」


 這いずりながらバロンに近づき、首輪からリードを外してあげる。すると、まっしぐらにバロンは集まりの中へと走って行った。


「・・・・・・あ、サンタさんだ」


 視線の先には、サンタクロースの恰好をした人が犬達に犬用のお菓子を配っているのが見えた。


「あ、太郎君のお父さん、こんな犬限定のイベントってありました?」


 柴犬の太郎君の飼い主さんがいたので、思わず尋ねてしまいます。


「ああ、あのサンタをよく見てごらん」


 言われてじっと見ると、何かどこかでお見かけしたような気がします。 


「御髭と服装で判りにくいのですけど、ブラボーのおじさん?」


 ラブラドールのブラボー君を飼っているおじさんです。サンタさんの足元には、ブラボー君もいる事から間違いは無いと思います。


「うん、ブラボー君の飼い主さんが、せっかくのクリスマスだからってワンちゃん達にプレゼントを配ってるんだよ」


 おお、ただうちのバロンは御菓子そっちのけで、他の子に遊んで貰おうと必死に秋波を送ってます。ただ、ぜんぜん相手に通じていません。他の子達は御菓子にまっしぐらですね。


「うちのバロンは御外では、不思議と家族からしか食べ物貰わないんですよね。でも、不憫だわぁ」


「レベル差があるとね」


「でも、あの姿がまた可愛いのですけどね」


 犬の集団に突っ込みながら、コロコロ転がされている我が家のバロン。見た目の体格差なんて関係ないですからね。


「ところで、バロン君のHPは大丈夫かい? ここは外だよ?」


「え? あ! ちょ、ちょっとバロン!」


 今更ながらにバロンのHPは既に半分を切って、レッドゾーンへまっしぐらです。


「ポーション、ポーションはどこ!」


「ヴォンヴォン!」

「キャンキャン!」

「ワンワンワン!」


「きゃ~~~~~!」


「まあ、こうなるだろうねぇ」


「そうね、でも、安心するわ」


「バロンちゃん大丈夫? 間に合うかしら?」


 犬の集団にバロンともども蹂躙される私は、HPポーションを片手に這うようにしてバロンへ向かいながら願うのです。


「だ、誰か、たすけて~~~」


「ヴォン!」

クリスマスなのでバロンを書きたくなって

相変わらず内容は無いのです><


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