Dream6 幻影
雪がより一層激しくなり、周りの景色が見えにくくなってきた。
俺は富士山の八合目まで舞空術で飛んでいき、小屋で休息をとる事にした。
天気が悪く、舞い上がる雪はとても綺麗とは言えず、俺に降りかかって来た。
近くに登山祈願を祝うお地蔵さんがあると聞いたが、どこを探してもなかった。
不運が舞い込む中、小屋を開けると五、六人の男女が談笑していた。
「雨ならぬ雪やどりですか?」と中年の男が尋ねてきたので、「そうだ」と無愛想に言った。
「いや~残念ですよ」と男は気さくな感じで話してくる。
「富士山へ登ったと思ったら、違う山だったんですよ~。えーとどこだっけな、足和田山? どうりですぐ登れたわけですよ。こうして今仲間とお笑い話をしているわけですよ」
少し酒を飲んでいるのか、男は鼻をズズっと鳴らせ、仲間の方を向き直りながら言った。
俺は扉を開けたまま固まった。外から冷気が入りこむ。男女らは早く扉を閉めろと言った顔で睨めつけてきた。
俺は扉を閉め、よろけた腰で中年の男の横に座った。窓からは雪が少しマシになったか、富士山が見える。
「富士山へ登りたかったですね」ある男が言い、みな悲しい顔をして下を向いた。
俺はどうすればいいか思案した。全員を舞空術で連れて行っても良かったが、途中で人を落としてしまう危険性もあり、やめた。
何かないかと考えた時、突然ひらめいた。
またおばちゃんの報恩である。