ちらし寿司はお疲れ気味
ボクは家族の中で一番小さい。
ネズミじゃないよ。
これはある夜の話。ボクは眠り病だった。小さい小さいカゴの中で、ずっと前からそれが当たり前だった。
聴こえたのは鳴き声。
たぶん虫。だって小さいから…。誰もいない家の中で聴こえた。
鳴き声はやがて小さな声となる。
「倒れるよ。崩れるよ。」
「きゃはは。」
誰かがボクの背中を触る。
「チコみたいだな。」
ボクは振り返る事ができない。昔からそうだ。大事な所で失敗ばっかりだった。
そうか、眠っているからだ!
こんなに静かな部屋で、あんな声が聴こえる筈がない!そうとわかれば何も心配することはない。こんなに小さなボクでも大丈夫だ!
さあ胸を張って堂々と眠るぞ(???)
ん…?
…
違和感。
ボクが少し大きくなったような気がした。
多分、声が聴こえなくなったから。それだけの違和感。
大きく息を吸う。
ナミダが出た。
やっぱりボクは小さい。
もう何も聴こえない。
助けて!助けて!助けて!助けて!助けて!
よかった。逃げる理由が出来た!
逃げなきゃいけない。ボクは明日から逃げる。どこまでも、どこまでも逃げる。
早く走る。遠くまで逃げる。ボクの憧れ。
大きく息を吸う。
ナミダが出た。
これはある夜の話。ボクは眠り病だった。小さい小さいカゴの中で、ずっと前からそれが当たり前だった。