表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

悪堕ちましたけど何か?

 エディ、三歳です。

 今、村の資料……はないので村長から口伝で村の状況を聞いています。



「まずこの村は麦を売って生計を立てている。もちろん税収分を抜いたら少ししか残らないしそれで手に入れられる金はたかが知れている。その上、村のみんなを食わす分も手に入れなければならない。麦だけではいつか死んでしまうのでほかのモノを買ったりな……。だが最近麦がめっきり取れなくなってな……それの対応策を考えるために明日にでも会議をすることになったのだよ。移民はまだないがこの状況が続くようなら出ていく者もいるだろうし、ガシェル領のよその村も餓えているだろうから入村するものもいるかもしれんから今のところは何とも言えんな。そして赤ちゃんの生存率はそんなに高くないが低くもない。今のところ薬屋のおばあさんがなんとかしているが、いなければ多分生存率は落ちるな」



 村長から先の問に対する答えを戴いたけれどほとんどが僕の予想通りだった。

 まずは麦だけれど連作障害だろう。

 これは同じ、もしくは近い作物を育てた場合に起こる現象だ。

 これは土を30センチほど掘り裏に返す『天地返し』というモノをするか、土地を休めるか、消毒をしなければ解決しないのだ。

 このうちできるのは30センチ掘り返す『天地返し』、もしくは土地を休めるかだな。

 もちろん堆肥なども必要となるだろう。

 そこらへんのこともどうやって村長に伝えるかを考えているが自分で試したものをみんなに実践してもらうしかないと思ってそれを伝えてみた。



「作物の取れなくなった畑の使用を許可してほしい?」

「うん、そこで僕が試した方法で実りがよかったらみんなを納得させることができるでしょう?」

「確かにそうだが……農作業はできないんだろう? さっきクワも持てないって言っていたじゃないか」

「そこは僕の方でなんとかするよ。何も全部とは言わないよ、一部だけでいいんだ」

「まぁ、取れなくなってから少し余り気味になっていたからいいんだが、本当に手伝いはいらないのか?」

「うん、みんなも忙しいだろうから僕のために働いてなんて言えないよ」

「ふむ、わかった。では集会でもその旨を言っておこう。……そうだな、森に近いから誰も使っていない畑をやろう。しかし、二年だ、二年以内に成果を出さなければ畑は没収するぞ」

「ありがとう村長」

「村の若いのはワシが抑えるか……はぁ、またゴートあたりがうるさくなるが今は藁をもすがる思いだからな……言い出したのだからそれなりに責任は発生するからな」

「それでも、僕は村の、強いて言えば母様のためにできることをしたいんだ」



 僕は村長の言われた通りの場所に行った。

 本当にありがたい。

 子供の戯言だと思わないでいてくれていることに感謝する。

 それだけ、切羽つまっているのかとも思うけれどそれは仕方ないだろう。

 僕は早速SPを操作して【土魔法(10)】を取得する。

 【土魔法】を使えば畑の作業は簡単になるだろうとの見解からだ。



「やっぱり栄養が少ないな……」



 この村の周囲は森なので元々は肥沃な大地だったのだろう。

 周りには腐葉土がたくさんある森があるのでそれも運搬して使おうと思っている。

 本当は家畜の糞を使った堆肥を作りたいが、手探りで比率や時間を計らないといけないので二年で使えるようにはならないだろう。

 となれば【天地返し】を【土魔法】で実現させて石は一つにまとめてポイ、さらに【風魔法】で雑草を細かく切り刻んで土の栄養にしてから腐葉土を土に混ぜ、森で見つけたクローバーを農地に植える。

 クローバーは土地の地力を高めるとかなんとか本に書いてあったはずなので植えた。

 さらにそのクローバーのある土地を四分の一としてほかの四分の三は新規に耕し、それぞれ小麦、カブ、大麦と学校でも習ったことのあるノーフォーク農法と呼ばれるのを採用する。

 大麦と小麦、カブの種がなぜか村長宅にあるのでそれを譲り受けて、作った薄い食塩水に入れ、浮いた種は除き、点蒔きという一つの場所に二~三つ種を植える方法をする。

 もちろん無作為に種をまくのではなく、一定の間隔をあけて植える。

 ただ、問題なのは一度当たりに取れる収穫量が減るのだけれど、問題はないだろう。

 ほかの痩せて連作障害に陥っている畑よりも収穫量があるはずだ。

 それらの作業を五時間程度で終わらして後は水と害虫と獣に気を付けるようにしたらいいかな。

 水は定期的にあげることにして、害虫は見つけ次第プッチで、獣についてはどうしようか迷っている。

 柵を作りたいけれど気を切り倒してもいいのかどうかわからない。



「う~ん、どうしよう?」

 


 使えそうなスキルとかないか見てみると【結界魔法(20)】が目に入った。

 ポイントは高いがそれと同じくらいに有用なスキルなのだろう。

 仕方なくそれを取得して自分以外は入れないようにした。

 疑うわけではないが村人が盗む可能性もわずかながらもあると判断して自分だけにした。

 あれ? もしかして【結界魔法】って自分以外も設定できる?

 たとえば……害虫とか?

 …………結果できました。

 ミミズとかは益虫なので除外せずに害虫だけを排除することができた。

 規模の大きさは消費MPにかかわってくるので45あるうちの30も使ってやっとすべての畑を覆えるようにしてあとは定期的に様子を見て水をあげるだけだ。

 これですべての問題は片付いたし結界は一度かけたら三日は持続するので三日後にかけ直す。



 そこまでしてガチャをしていないことに気付き、引く。

 カラーンカラン。

 という音とともに何かが僕の掌に落ちてくる。



「種?」



 そう、種だった。

 すぐさま【鑑定(アナライズ)】で見てみると……。



【豊穣の恵みたる樹の種】SSR



 ま、まぶしい!!

 SSRと書いてあるところが金色になっていてとてもまぶしい!!

 そんな演出いらないから! と心で思っているとそれは普通の黒字に戻った。

 しかし長ったらしい名前だな……、でも【豊穣の恵みたる樹の種】ね……。

 はっきり言ってこれだけで村の問題は解決しそうだけれど、ていうかご都合主義にもほどがあるけれど、使わない。

 どう説明すればいいかわからないし下手したらどこで手に入れたのかと勘繰られることもある。

 できるだけ自分の力でやった方がいいし、目立つこともない。

 これはもし将来必要になったならその時使おう。

 罪悪感があるけどこれは今必要としていないとアイテムボックスに入れた。



 村長に母様には何も言わないでくれとお願いしたので母様は何も言わずに俺の手を握りながら家に帰って夕餉を食べて母様が寝付いたと確信してから家を【隠行】を使い家を出る。

 森を歩いていくと昨日よりも疲れていないなと思いながら命を奪う相手を探していた。

 あぁ、今日も殺すのかと、命を摘んでしまうのかと憂鬱になる心を押し殺して、探して、見つけた。

 豚の顔に毛深い身体、そして二本足で立っていることからオークであることがわかった。



 ドクン。



 心臓の音がやけに大きく聞こえる。



 ドクン、ドクン、ドクン。



 うるさい、いつも通りいけば大丈夫だ。

 だから緊張することなんてない。

 オークを一つの命と思うからいけないんだ、あれは人間に害をもたらし、殺すものとして認識をするように何度も心の中でつぶやく。

 あれは、殺さなくちゃいけない存在。

 だから殺す。

 なんだ単純じゃないか。



 僕は昨日の反省点をしっかりと押さえて【土魔法】で尖らせた石を使い【風魔法】で浮かせ、回転。

 高速回転した石は音もなく次の瞬間その場から姿を消した。

 その一瞬後にオークの頭は後頭部から破裂した。

 一応後頭部は見えていないしそれ以外は普通に見えるので殺した反動は少なかった。

 そして土魔法でオークの身体は地面に埋めて血の匂いも上空へとやってから離れた。



 ズキン。

 どこかでなにかの痛む音がした。

 でも僕はその何かがわからなかった。

 だんだん自分が心ない機械になっていくようで、少し怖い。

 それでも僕は人間だと暗示のように繰り返し、繰り返し……殺しまくった。

 殺したら何かが痛む、がその場所がどんどんあやふやになり、痛みにも鈍くなり、殺すべきモノと認識するようになっていった。

 単純だ、実に単純だ。

 僕に害をなす存在は敵だ。

 敵は殺す。

 殺す。

 殺す度に何かが壊れていくような剥がれていくような感覚がずっとしている。

 何かが痛みで叫んでいるようなそんな気がする。

 でも関係ない。

 殺さなきゃ、

 ころさなきゃ、

 コロサナキャ――



「っ!!??」



 何だ今のは?

 いつ僕は寝た?

 オークを殺して、ほかのも殺していったのは覚えているが途中から記憶があやふやになっている。

 でも僕は帰ってきて寝ていたようだ。

 そうだ、ステータスは?



 名前:エディ

 年齢:3歳

 class:村民Lv.15 勇者Lv.8

 HP:25/25

 MP:55/55

 STR:110

 VIT:110

 DEX:115

 AGI:110

 LUK:130

 ユニークスキル:【遊戯設定ゲームシステム

 スキル:【SP増加】P.S.【鑑定アナライズ】【気配察知】【隠行】【風魔法】【雷魔法】【精神耐性】【土魔法】NEW!!【結界魔法】NEW!!

 SP:297.5(レベルが10の倍数でSPが100もらえます)

 称号:【世界のkrjgs***】



 なんだこれは?

 村民はレベルが10も上がっているし勇者も5上がっている。

 やはり昨日のは夢ではなかったのか?

 殺して殺して殺したのは僕だったのか?

 どす黒い何かが胸からあふれてくる。

 嫌だ嫌だ嫌だ!!

 あれが自分だなんて思いたくない!!

 殺しに何も思わないなんて僕じゃない!!

 僕は殺戮者なんかじゃない!!



 そう、何度も心で訴えかけて心の中の罪の意識が薄まるのをずっと待っている。

 でも、それでも罪の意識が僕の心を侵食していく。

 心ではわかっているんだ、僕は殺すことに慣れてきているって。

 でも理性が、最後の砦さえも僕のどす黒い部分は壊してしまう。



「くひっ」



 ダメだ、ダメだ笑うな、僕は、違う、嫌だ、違う、俺は――

 ――殺戮者だ。



「くひっ、くひひひひ」



 心が歓喜しているのがわかる。

 重圧として罪の意識が変わっていくのがわかる。

 ああ、ダメだ。

 僕は殺戮者だ。

 認めよう、認めよう、認めよう。

 だけど、僕は英雄という名の殺戮者のなろう。

 殺しが正当化される殺戮者となろう。

 ああ、夜が楽しみだ。

 すべてを壊すのが楽しみだ。

 積み上げたものを壊す楽しみ。

 それだけが僕の心を支配している。



「くひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」



 ――僕にもし罪の意識が薄かったらこうはならなかっただろう。

 ――僕にもし罪の意識が濃かったら僕は狂っていただろう。

 ――そのどれでもない僕の魂が決めた采配。

 ――真っ黒に染まれとばかりに僕は黒く塗りつぶされた。

 ――もう賽は投げられた。

 ――僕はあなたの理解者となろう。

 ――僕はあなたの殺戮者となろう。

 ――僕はあなたの死を肯定しよう。

 ――僕はあなたの生を否定しよう。

 ――だから、僕はあなたを壊すのに何の躊躇もなく、路傍の蟻をつぶすように何のためらいもなく、切り刻んで、潰して、解体して、喰らって、消そう。

 ――だからあなたは僕の理解者であり、殺される者であり、肯定者であり、否定者である。

 ――だからあなたは僕に壊されるのに何の疑いもなく、潰されるのに疑念すらなく、切り刻まれ、潰され、解体され、食べられ、消されるだろう。



 透明な魂が黒く浸食され【僕】は【俺】にそう、語りかけた。

 まるで死を肯定するように【俺】を食べ、生を否定するかのように咀嚼する。

 透明の魂の【俺】はもう欠片ほどもなく、真っ黒な【僕】が誕生した。

 【俺】は殺され、咀嚼された。

 【僕】は殺し、咀嚼した。

 悔いも反省も過去を省みることもたくさんあるけれど、死は絶対だ。

 だから【俺】は消えた。

 だから【僕】は生まれた。

 生きていくことは不平等だけれど、死ぬことは皆に平等だ。

 崇めよ、祟れよ、

 畏怖せよ、恐怖せよ、

 肯定せよ、否定せよ、

 満たせよ、空けよ、

 拾えよ、捨てよ、

 歩けよ、停めよ、

【僕】はすべからく等しく救い殺すだろう。



 憐れな心に幸福を。

 祝福せし魂に死を。

 それが僕の信条であり免罪符。

 罪の意識に囚われた【俺】を救い出すために、殺した【僕】という存在。

 産声を上げた世界にとって害悪たる悪徳なる意思(アンラ・マンユ)に祝福と呪いを。

 


 名前:エディ

 年齢:3歳

 class:村民Lv.15 勇者Lv.8

 HP:25/25

 MP:55/55

 STR:110

 VIT:110

 DEX:115

 AGI:110

 LUK:130

 ユニークスキル:【遊戯設定ゲームシステム】【魔の種子】NEW!!

 スキル:【SP増加】P.S.【鑑定アナライズ】【気配察知】【隠行】【風魔法】【雷魔法】【精神耐性】【土魔法】【結界魔法】【悪魔法】NEW!!

 SP:297.5(レベルが10の倍数でSPが100もらえます)

 称号:【世界の敵(ワールドエネミー)悪徳なる意思(アンラ・マンユ)

感想や評価お願いします!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ