国王グラサージュの伝説
国王グラサージュは、よき王であった。
我が臣民、我が祖国のことをよく考える王であった。
あるとき、忠実なる大臣が、王のもとへ、ひとりの若者を連れてきた。
「王よ、これなるは、異世界から訪れし勇者にございます。神々より与えられし力によって、魔物などネズミのごとく退治てくれましょう」
王は答えた。
「それはよい。頼むぞ勇者どの」
王からすべてを託された勇者の働きは目覚ましく、魔王は程なくして討たれた。
異世界の仕組みを取り入れた国は、他国の追随を許さぬほどに栄え、大国家となった。
勇者は、王が溺愛する姫の心を射止め、王の国は、ますます磐石となった。
王は、天を突く摩天楼の群れに、王国の輝かしい未来を見た。
公明正大なる法に、正しい明日を見た。
そして、新しい世の幕開けだと歓声を上げる臣民たちに背を押され、十三階段をのぼった。
貴族や王に支配される、保守的な時代は終わったのだ。