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君を忘れたふりをした―記憶を失った僕に、彼女は友達だと嘘をついた―  作者: ズッキー


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第16話 初めての告白

海は思ったよりも静かだった。


平日の昼間だからか、人も少ない。

風がやわらかく吹いている。


圭太は砂浜をゆっくり歩いていた。

その隣を、美月が歩く。


ショートヘアが風に揺れる。

白いスニーカーが砂に少し沈む。


「なんかさ」


圭太が言った。


「変な感じ」


「何が?」


美月が聞く。

圭太は少し笑った。


「初めて来た気がするのに」


海を見ながら言う。


「懐かしい」


美月は何も言えなかった。


それはきっと―

本当に来たことがあるから。


でも圭太は覚えていない。

それでも心は覚えている。

そんな気がした。


「座ろうか」


圭太が言った。

二人は砂浜に座った。


波の音。

遠くでカモメが鳴いている。


しばらく二人とも黙っていた。

その沈黙は、嫌なものじゃなかった。

むしろ、落ち着く。


圭太はポケットからスマホを出した。


「ボイスメモ、聞く?」


美月は少しだけ驚いた。


「ここで?」


「うん」


圭太は笑う。


「なんかさ」


海を見ながら言った。


「ここで聞いた方がいい気がする」


美月は小さくうなずいた。


「いいよ」


圭太は画面を見た。

並んでいる録音。


0501

0505


0518


その間にある

空白。


でも今日は、そこではない。


圭太は


0505


を押した。


ノイズ。

そして。

明るい声。


『今日の一言〜!』


美月の声。

少しだけ若く感じる。


『今日はね』


楽しそうな声。


『圭太が告白してきました!』


美月が息を止めた。

圭太は目を丸くした。


「え?」


録音は続く。


『しかもね』


少し笑う声。


『海で告白とか、ベタすぎない?』


圭太は思わず笑った。


「ひどい言われようだな」


美月も小さく笑う。

でも録音は続く。


『でも』


声が少し静かになる。


『嬉しかった』


少し間。

波の音が録音に混ざっている。


『圭太、めちゃくちゃ緊張してて』


笑う声。


『手震えてた』


圭太は思わず自分の手を見た。

美月はくすっと笑った。


『でもね』


録音の最後。

少しだけ真剣な声。


『この人となら』

『きっと幸せになれるって思った』


録音が止まる。

波の音だけが残る。


圭太はスマホを見つめていた。


「……へぇ」


小さくつぶやく。


「俺、ここで告白したんだ」


美月は何も言えなかった。

圭太は海を見た。


しばらく考えていた。

それから言った。


「なあ、美月」


「ん?」


圭太は少し笑った。


「もう一回やっていい?」


「え?」


「告白」


美月の心臓が強く鳴った。


「ちょ、ちょっと待って」


美月は慌てた。


「それは違うよ」


「何が?」


圭太は首をかしげる。


「だって」


美月は視線を落とした。


「今は……友達だし」


圭太は少し黙った。

それから笑った。


「そっか」


その笑顔が、少し寂しかった。

美月の胸が痛む。


圭太は砂を少し触った。

そして言った。


「でもさ」


美月を見る。


「俺、決めてる」


「?」


圭太は笑った。


「もう一回好きになるって」


美月の心臓が跳ねた。

圭太は続ける。


「だから」


少し照れながら言う。


「そのときは、ちゃんと告白する」


風が吹いた。

美月のショートヘアが揺れる。


美月は海を見た。

涙が出そうだった。

でも笑った。


「……うん」


小さくうなずく。


「待ってる」


圭太は笑った。

二人はしばらく海を見ていた。


そのときだった。

圭太の頭の奥に―

一瞬だけ映像が走った。


夕焼けの海。

泣いている美月。


そして。

自分の声。


『なんで言わないんだよ』


圭太は突然立ち上がった。


「……え?」


美月が驚く。

圭太は額を押さえた。


「圭太?」


「……今」


圭太は混乱していた。


「なんか……」


頭の奥が痛む。 


「思い出した?」


美月の声が震える。

圭太はゆっくり首を振った。


「いや……」


海を見る。 


「でも」


少しだけ怖い顔をして言った。


「俺たち」


圭太はつぶやいた。


「ここで……喧嘩した?」


美月の顔から、血の気が引いた。

波の音だけが響いていた。


二人の間に―

知らない過去が―

静かに浮かび始めていた。

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