第11話 遠くなる距離
海から帰った日から、三日が過ぎた。
圭太はスマホの写真を見ていた。
海で撮った写真。
二人で笑っている。
美月のショートヘアが風で少し乱れている。
圭太は小さく笑った。
「いい写真だな」
そのとき。
スマホが震えた。
美月
LINEだった。
圭太はすぐ開く。
―今日、ちょっと会える?
圭太はすぐ返信した。
―会えるよ
すぐ既読がつく。
―ごめん
―やっぱり今日はやめとく
圭太は少し首をかしげた。
―どうした?
少し間が空く。
それから返事。
―なんでもないよ
圭太はスマホを見つめた。
何かおかしい。
最近、美月は少し変だった。
返信が遅い。
会う約束をしても、急にキャンセルする。
「……体調?」
圭太はつぶやく。
その夜。
圭太は思い切って電話をかけた。
コール音。
一回。
二回。
三回。
そして。
「……もしもし」
美月の声だった。
でも少し弱い。
「大丈夫?」
圭太はすぐ聞いた。
「うん」
「声元気ないけど」
「そんなことないよ」
美月は笑おうとしている。
でも圭太には分かった。
無理してる。
「会おう」
圭太が言う。
「明日」
少し沈黙。
そして。
「……ごめん」
美月の声が小さくなった。
「しばらく」
「え?」
「会うの、やめよう」
圭太の思考が止まる。
「なんで?」
「ちょっと忙しくて」
「嘘だろ」
圭太は思わず言っていた。
「美月」
沈黙。
電話の向こうで、風の音がした。
「俺」
圭太は言う。
「何かした?」
「してないよ」
「じゃあなんで——」
「圭太」
美月が言った。
その声は、いつもより静かだった。
「私たち」
少し間が空く。
圭太の胸が強く鳴る。
そして。
美月は言った。
「やっぱり」
その言葉は、とても軽く聞こえた。
でも。
圭太の世界は止まった。
「友達でいよう」
沈黙。
圭太は何も言えない。
頭が真っ白だった。
「……なんで」
やっと出た言葉。
美月は答えない。
代わりに言った。
「圭太」
声が震えている。
「ごめん」
電話が切れた。
ツー……ツー……
圭太はスマホを見つめたまま動けない。
頭の中で、海の景色がよみがえる。
「ずっと一緒にいる」
自分が言った言葉。
そして。
泣いていた美月。
「……なんだよ」
圭太はつぶやいた。
「急に」
そのとき。
スマホの画面が光る。
LINE。
美月からだった。
圭太は急いで開いた。
そこに書かれていたのは
たった一行。
―圭太、私のこと忘れて
圭太の呼吸が止まる。
その瞬間。
頭の奥に、あのボイスメモの声がよみがえった。
「私のこと、忘れたままでいい」
圭太の手が震える。
そして。
スマホの画面に映るフォルダ。
まだ残っているボイスメモ。
0512
消された記録。
圭太はつぶやいた。
「……美月」
胸が強く痛む。
「何隠してるんだ」
そして。
圭太は決めた。
全部知る。
美月のことを。




