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生贄令嬢の幸せ  作者: maruko
本編
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【本編完結】生贄令嬢の幸せ

アルシェリーナの卒業式にルーカスは来賓として参列していた。

在籍していただけで学園に通っていなかったルーカスだったがその事実に気付いている者は少ない。彼の噂は悪評だらけでそれを皆が信じていた、そして未だに信じられている。彼の姿は見目麗しい王子にも関わらずこの事はあまり話題には登らない。 

例え見目が良くても悪い噂の方がそれを凌駕していたからだ。

そして今日の彼の話題はもう一つ。

その手には可憐な花達で作られた花束が用意されていた。

卒業式を終えて一週間後にはアルシェリーナとルーカスの結婚式が執り行われると数ヶ月前に発表されている。


─ドュバン侯爵令嬢は逃げられなかったのだな─


と周りの皆はそう思い密やかな話題はその事に尽きる。

昔から他人の不幸は蜜の味。

自分に関係ない不幸は人間の大好物なのだ。

当の本人であるアルシェリーナは、ルーカスから花束を渡される自分を想像して、淑女に有るまじくニンマリしてしまい顔の筋肉が零れ落ちそうだ。



一年前にこの国には激震が走った。


王家を支えていたはずの侯爵家が国家簒奪を計画していたとの告発があり、それに伴い王妃(アネトス)が廃妃になったのだ。

その侯爵家が王妃の生家だという事実と、彼女が議会に度々私情で意見を挟んでいた事も明らかになったからだった。


王妃の父である侯爵と兄の次期侯爵二人はその罪により処刑と流刑が処された。

そのまま侯爵家は取り潰しで連なる傘下の貴族家も軒並み没落。

廃妃は王家の罪人が入れられる、生きては出られぬ離宮へと幽閉された。


その後議会は一新されて新たに側妃マリアが王妃に推薦されたが、これはマリア(彼女)が辞退した。

マリアは「自分は王妃の器ではない、国よりもダートンを支える為だけに王家(ここ)にいるだけだ」と議会で発言した。


その言葉を聞いたルーカスは初めて母を尊敬した。

頭も尻も軽い軽薄な女だと決めつけていたが、マリアにはマリア(母には母)の矜持があった事をその時知ったからだった。


そして彼女の真意をルーカスはラガン夫人から伝えられた。


母マリアは自分の生きる道はダートン()の癒やしであるとその為に側にいるのだと、そのせいで憂いを持つ王妃の捌け口になる事も厭わないと考えていたのだと聞いた。

マリアは自分の宮を“魔窟”にされてもそれで王妃の気が済むならと敢えてそこに居たのだと知った。


廃妃の決定に一番心を痛めたのはマリアでもあった。

だからその後釜に座ろうなどとは考えられないと彼女は固辞したのだ。


ダートンも自身の愚かな思い込みと行いのせいで、結果的に王妃を国家簒奪の旗頭にされてしまった事に責任を感じていたから、マリアの答えに否は唱えなかった。


その後の王妃の役割は表ではセリーヌが裏ではルーカスが担っていた。


ライアンが学園を卒業したら速やかに王位継承の儀が執り行われる事が決定している。

その前にルーカスとアルシェリーナの結婚式を行う事もその時に決定した。


ダートンは王を退いた後はマリアと別れる事も決めていた。

子等に治世を渡したあとは廃妃の幽閉された離宮に一緒に幽閉される事を望んだ。

それがダートンにできる王妃への精一杯の罪滅ぼしだと思ったようだ。

残りの人生を廃妃(アネトス)に捧げるのだと言った。


一連の詳しい出来事をアルシェリーナが知ったのはライアンが王になってからだった。


表向きに発表されたのは侯爵家と廃妃の事だけでその時のマリアやダートンの気持ち、その後の彼等の行く末等は皆と同じように当時はアルシェリーナも知ることは無かった。


ルーカスはそれで良いのだと思っている。


愛子(めでご)の時にはアルシェリーナがルーカスをとことん甘やかす、目の中に入れても痛くないと彼女は言う。

“可愛いは正義”を掲げてルーカスを溺愛しているのだが実際はルーカスの方がアルシェリーナを甘やかしていた。


(アルシェリーナに憂いは無用!)


そう言ってルーカスは全ての面倒事を彼女には知らせずに処理していく。

それが国家の事でも、社交界のことでも同じだった。


婚姻後(その後)のアルシェリーナは毎日楽しく王城に在るルーカスの離宮で供に幸せに暮らしている。


嘗て愛子(祖父)と供に生きた祖母と同じように。


アルシェリーナの日記も九割は惚気だ。

日々のルーカスの可愛いところを余すことなく書きまくっている。


不思議な体のルーカスとの間には二人の男子を儲けた。

ルーカスにそっくりな黒髪で金目の皮肉屋な彼等の存在でアルシェリーナの幸せは増し増しだ。


アルシェリーナが生贄のように結ばれた婚約だったはずが今ではそんな事は微塵も感じない。


アルシェリーナの幸せにルーカスは必要不可欠なのだから。




end




✎ ------------------------



『生贄令嬢の幸せ』これにて本編は完結です

今回もブックマークやイイね、沢山頂戴してmarukoは幸せ者でございます!


読者の皆様に深く深く感謝致します

(,,ᴗ ̫ᴗ,,)ꕤ*.゜


このお話は人外の話を幾つか読んだ時に色々と妄想を巡らせた結果、妖精という不思議な生き物をピックアップして作りました。

妖精に愛される子って本当に本人はそれを望んでいるのだろうか?

そんな事を考えた時に思いついたお話です。


明日番外編を2話更新します

そちらで完結とさせて頂きます

良かったら其方もお楽しみください!



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