夜の移動は最強の護衛たちと
本日は3話更新します
夜の更新で本編は完結です
最後までお付き合いよろしくお願いします
(o_ _)o
父の執務室には兄ダイサス、母ミナリーゼ、そしてセリナまで集まっていた。
三人はソファに座ってアルシェリーナを待っていた。
父のラクサスは机に向かっていた。
何かを必死で書き付けていたが、アルシェリーナが部屋に入ってきたのに気付いたら手を止めてソファに座るように促した。
「ダイサス、話を進めてくれ、こっちがまだ終わってないからな」
父はそう言って皆を集めた理由を兄に話すように言ってまた必死に何かを書き付けていた。
「一週間後に決着を付けることになった」
何を?とアルシェリーナは兄に聞きたかったが話の腰を折るのは良くないと思いその質問はグッと堪えた。
「だからアルシェリーナとセリナはラガン伯爵邸に行くようにと殿下方からの伝言を預かった」
何がだからなのか全く話の見えないアルシェリーナは到頭兄に質問した。
「お兄様、セリナとトゥール様の問題って避難までしなければいけない程に、そんなに切羽詰まるような物なのですか?それにラガン伯爵家ならここに居ても同じなのでは?」
ダイサスはうっかりしていたが、セリナとトゥールの問題にかこつけて王妃を廃妃にする計画はアルシェリーナ達には伝わっていなかったのだと質問によって気付いた。
そして、この件をルーカスがアルシェリーナに伝えていないのは話すつもりが無いことにも気付いた。
「ええい!五月蝿い!言われた通りにしてくれ、直ぐに出発するんだ!」
「「えええー!!」」
今度はアルシェリーナだけでなくセリナも驚いた。
何故こんな夜中に慌てて出発する必要があるのだろうと不思議で仕方がない。
「ねぇダイサス、あんまりにも乱暴じゃないかしら?」
「母上は黙っていて下さい」
ダイサスは母であるミナリーゼの怖さを忘れてしまっていた、任務を遂行する事に邁進しすぎていた。
「は?」
その一言でダイサスは自分の発言でミナリーゼに火がついたと感じてぶるりと震える。
(しまった!母上を怒らせたら面倒臭い)
「奥様、お坊っちゃまはちょっと調子に乗っただけですので、広いお心でのご対応を」
ダイサスに救いの手を差し伸べたのは執事のトーマスだったが、トーマスからのお坊っちゃま呼びは久しぶりの事で、その庇い方はダイサスには屈辱だった。
「旦那様、私もラガン伯爵邸に行かせて頂きますね、娘達がお世話になるのですからご挨拶しなければ」
ミナリーゼがラクサスを貴方ではなく旦那様と言うときはとても機嫌がよろしくないので、止めるのは難しい。
やっと書き物を終えたラクサスは息子の失態に呆れてしまい溜息を一つ吐いた。
「リーゼの好きなように。これを伯爵に渡してほしい」
ラクサスが必死に書いていたのはラガン伯爵への手紙だったようだ。
手紙を受け取ったミナリーゼは二人に出発の準備をするように促した。
アルシェリーナとセリナは戸惑いながらも母が付いてきてくれるなら心強いし、雰囲気的にこの場は言う事を聞くほうが良いと思い部屋へと急いだ。
後に残されたダイサスがラクサスとトーマスに叱られたのは言うまでもない。
夜の闇の中ドュバン侯爵家の馬車はラガン伯爵邸を目指しひた走る。
馬車の中はミナリーゼ、アルシェリーナ、セリナの三人に加え侍女のエリナも同乗していた。
護衛は一人も付いていないが、ルーカスが手配した最強の護衛が馬車を守っている。
誰にも見えない妖精達だったが、彼等はドュバン侯爵家の馬車も誰にも見えないように妖精の粉を撒いてくれていた。




