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生贄令嬢の幸せ  作者: maruko
本編
43/48

自宅待機中にて

ルーカスに自宅待機を命じられたアルシェリーナはドュバン侯爵家の一室で、絡まる糸と格闘していた。

側には母であるミナリーゼと、心配してくれてご機嫌伺いに訪っていたラガン夫人が、その手元を心配そうに見守っている。

そしてもう一人、アルシェリーナがタイオール伯爵を説き伏せてセリナを《《あの日》》から強引にドュバン侯爵家で預かっている。


ルーカスがいつドュバン侯爵家(此処)に来るかわからないからだ。

早くセリナに可愛いルーカスを見せびらかしたいというアルシェリーナの思惑だった。


では今何故刺繍糸と格闘しているのかというと二人が《《暇だから》》だった。


面倒事は全て男性陣が引き受けてくれていて、彼女達は自宅待機を命ぜられている、あの日から一週間経過していて、本を読むのも飽きてきたアルシェリーナがセリナに声をかけられて「一つルーカスのハンカチに刺繍でも」と意気込んだのだが、目指した図案が思いの外難しくて糸が絡まってしまったのだ。


隣ではセリナがスッスッと軽やかに刺している。


「難しすぎたのでは?」


図案の件を持ち出してセリナに言われたアルシェリーナは、自分でも段々とそんな気がしてきていたから図星を指されてしまって罰が悪かった。


「ふぅー出来ると思ったの」


到頭諦めて糸切鋏でバチバチと糸を破壊しながらアルシェリーナは悔しそうに言った。


「もう少しこの辺を丸く描いてみては如何でしょうか?」


ラガン夫人が助け舟を出してくれて先ずは図案と格闘する事に切り替えた。


「刺繍は苦手では無いのですけどね、一息入れたら?」


ミナリーゼが言いながらお茶の仕度をメイドに指示していた。

アルシェリーナとセリナは二人揃って肩をコキコキとしながら刺繍道具を揃えていった。

それをアルシェリーナの侍女であるエリナが片付けていく。


メイドがお茶を並べて行き、テーブルの真ん中に置かれたケーキタワーには色とりどりのお菓子やケーキが用意された。


「ルーカス様はお元気かしら?」


アルシェリーナは、あの日の眠りについた後からルーカスには会えていない。

兄を通じて伝言のみだった。

兄がルーカスの推薦でライアンの側近になったと夕食の時に聞かされた時は、吃驚しすぎて丁度口に入れたお肉を喉に詰まらせるところだった。

(お兄様に務まるのかしら?)とアルシェリーナは思ったものだ。


「忙しそうよね、ダイサスを見てたら思うわ」


「トゥール様はお元気でいらっしゃいますでしょうか?」


ミナリーゼもダイサスが慣れない側近の仕事でアタフタと走り回っているのを目の当たりにして不安に思っていたし、セリナもあの日の朝からトゥールに会えていないから不安が口に出てしまったのだろう。

そんな中でもラガン夫人は気丈だった。


「皆様、一丸となって問題に取り組んで居られることでしょう。婦女子は静観するのが一番の仕事ですわ。面倒な事は殿方にお任せして私共は左団扇で涼しく待っていれば宜しいのですよ」


そんなに強気な発言をするけれど、夫人は心の中ではきっと心配しているのだとアルシェリーナは思っていた。

そしてアルシェリーナとセリナが不安にならないようにとドュバン侯爵家に赴いてくれたのだと、夫人の優しさに感謝していた。

王子妃教育ではビシバシと厳しい夫人だがその裏の優しさをアルシェリーナは知っている。


それほどに密な時間を二人は過ごしてきていたのだから、あの本だらけの密室の部屋で。





その日の夕食時にダイサスは帰ってこなかった、だが夜遅くにエリナがアルシェリーナを起しに来た。


「アルシェリーナ様、アルシェリーナ様起きてください」


「ん、ん、んーん」


熟睡中のアルシェリーナを起こすのに必死のエリナは何度か挑戦した結果、やっと彼女が目覚めて安堵した。


「ダイサス様がお帰りになられまして、急ぎアルシェリーナ様を呼んでくるようにと。旦那様の執務室にもう皆様お集まりかと⋯⋯」


「ええっ!?早く起こしてよ!」


とっても理不尽に思うエリナだった。



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