愛子(めでご)の真実①
本日も三話更新します
ライアンは兄に言われるがままラガン伯爵家へと訪っていた。
兄の指示は「お前は全てを知る王になるのだ、その為にラガン伯爵家へと赴け」と言われたのだ。
今のラガン家当主は本来の当主トゥールの従弟叔父であると聞いている。
トゥールの父は彼に家督を譲って行方不明だとここへ着くまでに何故か同行しているドュバン侯爵家の嫡男ダイサスから説明を受けた。
「ダイサス、遅ればせながら隣国の姫君との婚約おめでとう、それで⋯君は全てを知っているのか?」
「ルーカス殿下によりますと全てではないそうです。迂闊に全てを話すのは無理なのでしょう。ただそこそこは知っていると思っています、それと⋯ライアン様ルーカス様よりのご伝言宜しいですか?」
「⋯伝言?解った、申せ」
「今後はドュバン侯爵家嫡男である私がライアン殿下の側近を勤めさせて頂きます。これは決定事項だそうです」
「なっ!兄上がそう申したのか?」
「はい、今朝叩き起こされまして申しつかりました。過ちは繰り返せないそうです」
「それは⋯解った、よろしく頼む」
「御意に」
ライアンはショタルーカスがダイサスを叩き起こしている様子を想像して思わず笑いそうになり、次に大層気の毒に思った。
過ちとはおそらく自分の両親である国王夫妻の事だろうと推察された、だから兄ルーカスはちゃんと側近が《《出来る者》》をライアンに付けてくれたのだろう。その心をライアンは有り難く思った。
そして二人でラガン伯爵家に訪い案内された応接室で対峙したのは、ラガン伯爵だったのだがどうも様子がおかしい。
妙に上から物を言うのだ、普段だったら不敬として捉えたい位の居丈高な態度だ。
そう思って伯爵を見ていたら不意に彼が人払いを始めた。
その場には伯爵とライアンの二人だけダイサスも外されてしまった。
「まぁそう固くなるな」
「⋯先程から随分と砕けていますね」
嫌味たっぷりに“俺は王子だぞ”と示す様に胸を張って言うと「ふん!」と鼻で嘲笑われてしまった。
「私が謙るのは愛子にのみだ、彼がお前には真実を話せと言うから話すが、他言無用だぞ破ると死ぬぞ」
恐ろしい事を言ってのける伯爵にライアンは背筋が凍る程の寒さを感じた。
ライアンは黙って頷いた。
すると不意に彼の顔が変わりその背には羽が見えている。
思わず目を擦ると伯爵がニヤリと笑った。
「次代の王というのは本当らしいな、羽が見えたのだろう」
ライアンが頷くと彼が本来の身分を名乗った。
「私は妖精王だ」
「⋯⋯⋯ヒュッ」
ライアンは息を呑んでそして乾いた声を自然に発していた。




