そろそろ⋯作戦会議
─おいおいおい!ここまでしますか─
トゥールはセリナの窃盗疑惑を聞いて自分なりに調べてみようと、親戚の中で騎士団に所属している者がいる家をピックアップして、その中から王都にタウンハウスがある家を一軒ずつ探ろうと思っていた。
ただそれを一人で熟すには些か心許ないし、時間もない。
だから義父に相談して協力者を募る事にした。
その協力者に会いに行く途中、馬車道に佇む幼女を発見した、聞くと迷子だというので辺りを馭者に捜索させていたら不覚にも攫われてしまった。
子供騙しの罠に嵌り捕まってしまったのだが、連れて来られたのが騎士団の牢で「あぁやってしまった」と自身の油断に頭を抱えていた。
結局その日トゥールは牢で一晩を越す事になるのだが、食事も出ず何故か煤だらけの牢の中に囚われていたのにトゥールの目覚めは頗る宜しかった。
入れられた時に壁に手を付いたので掌は煤で汚れていた筈なのに寝たら綺麗になっていた、何なら爪も輝いて見える。
昨日の昼から食事をしていないのに腹の虫も鳴かない、鳴かないどころか空いてない。
─ひょっとして殿下の妖精が見守ってくれているのでは?─
今一番可能性のある答えを考えていた。
そうしていたら牢番が来て「出ろ!」とふてぶてしく言われてムッとしたが、黙って従う事にした。
連れて行かれたのはおそらく取調室、中に入ると騎士団長が誰かに傅いていた。
こちらからは背を向けてソファに座っているので顔は見えないが、髪型からルーカスだと気付いた。
─殿下、妖精に頼んでしまったのだな─
一日の内2時間しか本来の姿には戻れないのに無理をさせてしまった事をトゥールは申し訳なく思った。
妖精の力を借りるとルーカスの寿命が縮まるのだ。
トゥールはルーカスに走り寄って土下座の勢いで跪いた。
「殿下!お手を煩わせて申し訳ありません!」
「トゥール!元気そうで何より、では帰ろう」
「ちょっ」
「何だ!まだ不服か!」
「⋯⋯いえ、」
ルーカスがトゥールを連れて帰ろうとすると騎士団長が止めようと口を挟んだがルーカスの声に怯んでその後が続かなかった。
そのままトゥールを連れてルーカスは馬車止まりまで向かう。
「殿下⋯⋯」
「ややこしい事になっているらしいな」
「何かわかりましたか?」
「いや、おそらくいつもの事だろう。手が込んでいるのは相手が伯爵家と侮ったのだろうが⋯⋯トゥール作戦会議だ、ラガン夫人が待ってる、そろそろ反撃しようかな」
いつになくルーカスがイキイキしている気がしたが、トゥールは母の名を聞いて母にも心配かけたのだろうと胸を痛めていた。




